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提督はBarにいる。

作者:ごません
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冬の味覚・2

 さて、『オペレーター』を早々に飲み干した2人は早速お代わりをご所望だ。んじゃあ、ちょっと変わった一杯をご馳走しましょうかね。

 まずはディタ・スターリーというリキュールを30ml。コイツは珍しいスターフルーツのリキュール。ディタと言えばライチリキュールの方が有名だが、コイツも中々美味い。更に白ワインを45ml、クランベリージュースを15ml、仕上げにレモンジュースをティースプーン1杯。全てをシェイカーに入れてシェイクして、フルート型のシャンパングラスに注いで完成。

「ホラよ。コイツは西新宿の裏路地にある居酒屋『バガボンド』って店でマスターに即興で作って貰った一杯でな。その名も『やぶれかぶれ』!中々面白いだろう?」

 その珍妙なネーミングを聞いて、2人もプッと噴き出した。

「な、なんだよそれ~!適当過ぎんだろ!」

「あ、でも美味しいわよコレ。ベリーとスターフルーツの酸味がイイ感じ。」

 さてさて、お楽しみ頂いてる間に更に調理をしましょうかね。お次は変わったぶり大根を振る舞うとしよう。

 使うのはブリの切り身。スーパーで売ってる加熱調理用の切り身でOKだ。臭み取りの為に酒を少々振り、10分程置いておく。それに合わせるのは大根。一切れに2cm位が目安かな。皮を剥いたら5~7mm位の厚さで銀杏切りにする。

 フライパンに大さじ1のオリーブオイルを熱し、にんにくを1かけ分みじん切りにして入れ、香りが出るまで熱する。フライパンの中央にブリを置き、その周りに大根を並べて中火で焼く。大根に少し焼き目が付いたら、大根は全てひっくり返す。大根をひっくり返し終わった所で、ブリもひっくり返す。大根が透き通って来た所で醤油を小さじ1杯回しかけ、火を止めて盛りつけ。

 そして味の決め手、ゆず胡椒マヨを作る。マヨネーズ大さじ1に対してゆず胡椒を小さじ1/2加えてよく混ぜ、ブリにかけて完成。ゆず胡椒よりもサッパリさせたいなら、俺もこの間買っていた『ゆずすこ』もオススメ。これは液体化されたゆず胡椒で、チューブの物よりも使える幅が広い。

「『ゆず胡椒マヨの焼きぶり大根』だ。煮ないぶり大根は中々珍しいだろ?」

「ん~、これも酒に合うなぁ♪」

「……にしても、ブリって濃い目の強い味付けが合うのねぇ。まさか、マヨネーズが合うなんて思わなかった。」

 確かにな。刺し身とかしゃぶしゃぶなんて素材の味を活かした食べ方をする食材に、味の濃い味付けが合うなんて思わねぇよな、普通はさ。でも、加熱してやると淡泊な味に近くなるから味噌やマヨネーズ、チーズ、トマトやにんにくなんかも合うんだよな~これが。



 さて、そんなワケで濃い目の味付けのブリ料理をもう一品。今度も使うのはブリの切り身。1人一切れが目安だけど、食べたい分入れても大丈夫だ。これを3~4等分しておろしにんにく(チューブでOK)を塗って臭み取り、下味に塩・胡椒を振る。合わせる野菜はミニトマトにブロッコリー、シメジ等のキノコ類がオススメかな。ミニトマトは半分に切り、ブロッコリーは下茹でして食べやすい大きさにカット。キノコ類も石附を落として食べやすい大きさにカットしよう。

 オリーブオイルをフライパンに敷いて熱し、ブリが色を変える程度に火を通す。ここで火を通しすぎてしまうと、仕上がりが固くなってしまうから気を付けよう。

 グラタン皿に焼いたブリ、ミニトマト、ブロッコリー、キノコを盛り付け、その上にピザ用チーズを山盛りに散らし、更に香り付けにバジルをたっぷり。オーブントースターで8~10分焼き、チーズに焦げ目が付いたら完成だ。

「熱つつつつ……、ホイさ。『ブリと野菜のチーズ焼き』だ。熱いから気を付けろよ?」

 二人は同じ皿から野菜とブリをフォークに突き刺し、上に掛かったチーズを絡めとる。それを口に放り込む。

「「あふ、あふ、あふあふ……。」」

 口から熱気を逃がしつつ、『やぶれかぶれ』に流し込んで口の熱を冷ます。

「かぁ~!やっぱ美味いなぁマスターの料理は。」

「ホントよねぇ。金剛さんが羨ましいわよ。」

「あん?何でそこでアイツの名前が出るんだよ。」

 俺がそう言うと、2人は目をパチクリさせている。

「え?だって2人暮らしなら毎日マスターの料理食えるじゃんよ。」

「そうよ、ある意味天国であり、(カロリー的には)地獄だわ。」

 何を勘違いしてんですかねこいつらは。

「んな事出来るワケねぇだろ。ウチの店は朝6時まで開けてんだ。その時間は何の時間だ?」

「……あ!総員起こし!」

「そう言う事。俺とアイツの生活時間は見事に食い違ってんだよ。執務が終わり次第、店は開けるしな。」

 そう。俺と金剛は新婚でありながら新婚らしからぬすれ違い生活を続けていた。普通の夫婦の感覚からすると、こんな新婚生活は最悪だろう。だがアイツは……金剛は、俺のそんな我が儘を受け入れて耐えてくれている。全く、良くできた嫁だよ。

「そっかぁ~…ちょっと残念だなぁ。」

「? 何がだよ。」

「私達も提督とケッコンしたら、毎日美味しいもの食べ放題!って事にはならなそうだからね。」

 そうか、お前らもそろそろ……。

「まぁ、指輪は準備しておくよ。」

「へへへ、その前に長門に渡さないと、また追いかけ回されるぞ?五航戦の時には痛い目見ただろ?提督ぅ。」

「思い出させるなよ、折角忘れかけてたのによぉ……。」

 そう、長門はとうに錬度が99に達している。これ以上高みを目指すならばケッコンしかない。しかし俺は、改ニ甲への換装を果たし、補給や修理に掛かる物資が増えた翔鶴と瑞鶴を優先した。お陰で艤装を着けた長門に半日近く追いかけ回された。

「何故私が後回しなのだ~!」

 と叫びながら。今度はそうならん事を祈るばかりだ。 
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