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提督はBarにいる。

作者:ごません
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提督の休日・final

 
前書き
糖分吐き出しは終わり。通常営業に戻ります。 

 
「う……あぁ~…今何時だぁ?」

 ベッドの横のカーテンから差し込む陽の光で、強制的に目を覚まさせられる。枕元に置いておいたケータイを取ろうと、左腕を伸ばそうとしたら……動かない。見ると、人の腕をガッシリと掴んで抱き枕代わりにしてスヤスヤと寝息を立てている奴がいる。その安らかな寝顔と、昨夜の野獣のような乱れっぷりのギャップに少し可笑しくなってしまい、つい苦笑してしまった。

「…っと、ケータイ、ケータイ……。」

 時刻表示を見ると時刻は午後1時。とっくに昼の休憩も終わって午後の執務が始まっている時間だ。着信履歴には30件を超える着信が入っていた。その殆どが大淀から。

「あっちゃあ~…、こりゃ相当ご立腹だな。」

 上体を起こそうとした瞬間、腰にズキンと痛みが走った。

「あたたたたたた……、こ、腰が…。」

 昨夜は久々にハッスルし過ぎた。お互いが満足するまで貪り合うように回数を重ねて、半分気絶するような格好で眠りに就いた時には空が明るくなり始めていた。現役で柔道やってた頃よりも鈍っていないと自負していたが、どうやらそれは間違いだったらしい。

 無理をかけた腰を労るようにゆっくりと起き上がって着替えをする。

「ン~…今何時デスか~……?」

 ようやく眠り姫もお目覚めらしい。

「よぅ寝坊助、コーヒー飲むか?」

 俺もさっき起きたばかりだが、平静を装ってモーニングコーヒー(昼だけど)を啜っている。寝惚けた目を擦りながらゆっくりと起き上がろうとする金剛。どうやら一糸纏わぬ姿では恥ずかしいらしく、色んな液体が付いてガビガビになってしまったシーツにくるまったまま起き上がった。

「オゥ!?こ、腰が………!」

 お前もかよ。

「どうしたどうした~?鈍ってんじゃねぇのか~?」

「What!?元はといえばdarlingが昨日の夜あんなに激しく…!」

 と、全部言い終える前に気恥ずかしくなったのか、真っ赤になってゴニョゴニョとどもり始めた。

「なんだよ~、後半はお前もノリノリだったクセにぃ~。」

「そ、そんな事ありませんよ!」

「ウソつけお前、途中から馬乗りになって腰振ったり、舐め回したり、おっぱいで挟んだりは自分からしてたろうが。」

 ナニを、とは言わなくても伝わるよな?読者諸君。金剛は真っ赤になってプルプルと震えている。…ともかく、早いトコ鎮守府に戻らないとマズイ。



「あ~!買ったばかりのランジェリーがぁ~!」

 昨日の夜、昼間に立ち寄ったランジェリーショップで買った下着を早速着けてたんだっけ(黒のレースで半分スケスケの奴)。今それはクシャクシャのグチョグチョになってしまっている。…まぁ、そうなるな。

「お~い、とっとと着替えしろ~。」

「ううぅ……。」

 よほど新品のランジェリーがダメになったのがショックなのか、ノロノロと着替えする金剛。

「解った、今度また出掛けた時に買ってやるから。今は急げ、な?」

 瞬間、ぱぁっと笑顔になった金剛は鼻歌を鳴らしながら着替えしている。ふぅ、待ってる間に一服付けるか……ん?ポケットに触り慣れない感触の物が……あ。

「金剛!」

 ポケットに入っていたソレを、金剛に投げてパスする。

「だ、darlingコレって……!」

「開けてみな。」

 金剛が渡された小箱を開けるとそこには、ダイヤのプラチナリングが収まっていた。

「一応、な。艦娘の間はカッコカリの指輪付けとけよ?」

 それはただの宝飾品。艦娘の能力を高める力はない。

「渡し方適当過ぎマスよ!?もっとロマンチックに渡してくれても……!」

「あぁ!?文句言うなら返せよ!今からでも返品してくるわ!」

「誰が要らないって言いましたか!」

 まぁ、こんな感じで些細な事での喧嘩は絶えない間柄だ。でも俺達二人はこの位でちょうどいいのかも知れん。



「……で?無断外泊と大遅刻への釈明はございますか?提督に筆頭秘書艦殿?」

 玄関先で待ち構えていたのは、ひきつった笑みを浮かべた大淀だった。無理に笑っているのがみえみえで、こめかみには青筋が浮いている。

「「あ、ありません……。」」

 俺達に出来るのはただ、嵐が過ぎ去るのを小さくなって堪え忍ぶ。それだけだ。

「ハァ。もういいですよ、始末書は後で書いて頂きますからね?皆さんおまちかねですから、食堂に行って下さい。」

「「へっ?」」

 顔を見合わせる俺と金剛。とにかく、行けと言うなら行くしかない。食堂に入った瞬間、四方八方からクラッカーが飛んできた。

『提督、金剛さん、ご結婚おめでとう~‼』

 食堂に集まっていたのは、ウチの鎮守府所属の全ての艦娘。皆笑顔で拍手をくれている。

「な、なんで皆ソレを知ってるんだ……?」

「フッフッフ、それは青葉の功績ですっ!」

 予想はしていたが、やはりお前か。

「ばっちり司令のプロポーズシーンは抑えて、号外を刷らせて頂きました!いや~、いい絵でしたよ実際。」

 どや顔でウンウンと頷く青葉。サービスで引き伸ばした物を額縁に入れて執務室に飾って置きました!とも言っている。余計なマネを……。

「まぁまぁ、良いじゃないですか。今日はおめでたい日なんですから。」

 俺を宥めに来たのは霧島。

「お゛ねぇざばぁ~…!」

 泣きながら抱きつくなよ、比叡。鼻水と涎が付いたら流石の金剛でも怒るぞ?

「…そういや霧島、憲兵君とのデートはどうだった?」

「ふぇっ‼?し、司令!何故それを!?」

 流石は妹、姉そっくりのリアクションだこと。まぁいいや。

「ソレはおいおいゆっくりとな。今はそれより……ハイ注目!」

 俺が声を張り上げると、食堂内はしんと静まり返った。

「え~、正式に発表する前にどこぞのバカが報道してしまった通りだ!俺は金剛にプロポーズしてOKを貰った!」

『おお~…!』

 一気にどよめく観衆。

「ただし、この戦争が終わるまでは提督とその部下である事は変わらない!だから皆、これからもよろしく頼む!」

 わあっと歓声が再び上がる。そしてどこからともなくキース!キース!キース!キース!の大合唱。リクエストにはお応えしないとなぁ?

「ちょ、ちょっとテートク~…んん……ンー!」

 たっぷり30秒は口付けしたまんまだったぞ。どうだ、恐れ入ったか。皆ドン引きして黙り込んでるけど、お前らが煽った結果がコレだよ!

「あ、青葉は後で執務室な。」

「アイエエエエエエエエエエエエエ!?」

 この騒ぎの首謀者を除いて。 
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