提督はBarにいる。
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提督の休日・1
「う……今何時だ~…?」
寝惚け眼で枕元の目覚ましを眺める。時刻はおよそ午前11時。そろそろ起きないと執務に影響が出る頃だ。ゆっくりと上体を起こし、ん~…と背中を伸ばして、左右に捻る。背骨が伸ばされてコキコキと鳴る音がする。艦娘だけでなく俺自身のメンテナンスも考えないとな……等とボーッと考えていると、机の上のメモ書きが目に止まった。
『輸送作戦完遂お疲れ様でした。本日は新規着任の艦娘のオリエンテーリングとなっております。どうぞ、普段の疲れを癒してきて下さい。 大淀』
そうか。昨日は輸送作戦完遂記念で祝勝会やったんだったか。最終海域を突破した後も、新型の駆逐艦の船霊回収の為に出撃を繰り返していたが、どうにかそれも成功してそのままの流れで店の閉店時間の朝6時まで飲み明かしたんだっけか。そのせいもあってか、頭が重い。酒が残っていて二日酔い、とまではいかないが不調をきたしている。
「取り敢えず、風呂いくか……」
着替えを持ち、重い足取りで入渠ドック……もとい風呂へ向かう。『提督使用中』の札を提げて脱衣場に。中は衣類かごをみる限り誰も居ないようだ。
俺が着任したての頃、一番に手を付けたのが風呂の改装だった。味気ないシャワールームのようだったのを、温泉旅館の大浴場並みの施設に改造。疲労や傷を癒す事は、艦娘の士気の向上に繋がる、と考えての事だった。
「あ゛~…生き返るぅ~……♪」
湯を張ったばかりの浴槽にざぶん、と浸かるとザバ~っと浴槽から湯が溢れる。贅沢だが、たまにはいいだろう。しかし、寝不足と軽い過労もあったのか、また…眠く…なって……zZZ……。
……ん?誰だよ、ほっぺ突っつき回してんのは。それも両サイドから。折角人が気持ちよく寝てんのに…
「鬱陶しいわっ!……あれ?」
「あ、漸く起きましたよ加賀さん。」
「提督、おはようございます。…ですが、浴槽で寝るのは危険だと思いますが?」
見ると、俺の両サイドには一航戦の赤城と加賀が。どうやら、浴槽で寝ていた俺を突っつき回していたらしい。
「OKわかった、取り敢えずお前らに聞きたい事が3つある。」
「何でしょう?」「答えられる質問ならばお答えします。」
「まず1つ目。何でこんな朝っぱら(昼だけど)から風呂に?」
今日は大規模作戦の翌日。ほとんどの艦娘は非番のハズだ。
「新人のグラーフさんとの練習終わりです。」
「汗をかいたので、それを流しに。」
ドイツから派遣された大型空母・グラーフ・ツェッペリン。どうやらその実力が見たいと射撃場に誘ったらしい。その腕前は悪い物では無かったようだ。
「んじゃ2つ目。『提督使用中』の札、俺提げておいたよな?」
二人は?と首を傾げている。
「それがどうかしました?」
「別に私達、提督が入っていようと気にしないわ。見られて恥ずかしいような身体をしてはいませんので。」
いやいや加賀よ、そんなどや顔で言われても。確かに眼福な光景ですよ、否定しませんよ。けどね、少しは恥じらってくれ。仮にも乙女だろうに。
「それじゃあラスト。…何でお前らタオルすら巻いてないワケぇ!?」
そう。赤城も加賀も生まれたままの姿……要するにすっぽんぽん。しかも俺にしなだれかかっているワケですよ、現在進行形で。体のそこかしこにムチムチプニプニの感触があるんだよ。もうね、朝っぱら(だから昼だけど)から堪らなくなるでしょうが!何がとは言わないけどさ。
「あら、良いじゃないですか♪」
赤城が満面の笑みで答える。それに加賀も続く。
「カッコカリとは言え、私達は婚姻関係です。提督の嫁です。夫に裸体を見られる事に何か問題でも?」
いや、無いよ?無いんだけどさぁ……。
「あ、そうだ!もしもアレでしたらこれから3人で夜戦(意味深)しましょう!今日はお休みですし、時間もたっぷりありますよ♪」
オイ待てこら、何でいきなりそんな話になる。確かにケッコンカッコカリした艦娘となら、そういう関係になる事は認められてるし、俺も男だ。嫌いではない。
「私達も暫くお相手頂いてないので溜まってるんです。さぁ、そうと決まれば早速。」
いや決まってねぇよ!?やめろ加賀、手を離せ!このままだと鎮守府の 風紀が 乱れる!
「すまんがな。今日は外出の予定があるんだ。相手はまた今度な。」
そう言ってそそくさと風呂を後にした。浴槽の方からは、
「チッ、取り逃がしましたね……」
「でも、また今度な…という事は今度の相手は私達ですよ♪」
なんて、不穏な会話が聞こえてきた。勘弁してくれよ、全く……。
赤城も加賀も気立てはいいし、美人だし、良い身体をしている。申し分無いんだがいかんせん、食欲以外にアッチの方も旺盛なもんだから、2人いっぺんに相手となると限界まで絞り取られる。翌日足腰立たなくなる事を覚悟しなくてはいかん。それに今日は、久しぶりに街に出ようと考えていたのだ。
一旦部屋に戻り、車の鍵を持って建物の外に。ちょうど時刻は正午頃だ。街に出て昼飯がてらブラブラするか。
「テートク~っ!」
お、誰かと思えば。
「どうした金剛?今日は姉妹でお茶会じゃないのか?」
ウチの鎮守府嫁艦筆頭、金剛が愛車の影に隠れていた。しかも、いつもの巫女さんみたいな服装ではなく、動きやすそうなキャミソールにミニスカ。正直目のやり場に困るが、流石に私服のセンスはいいな。
「Uh~……そのつもりだったんですケド、比叡は溜まったアニメの消化、榛名は伊勢達とショッピング、霧島は朝から居なかったデース……。」
シュンとなって落ち込んだ金剛。心なしかアホ毛も萎れて見える。やっべ、可愛い。
「ケド、これはチャンスだと思ったのデース!テートク、私とデートしましょう!」
なるほど、いつも姉妹でいる事が多いし、最近構ってやれてなかったからな。それで俺が外出すると踏んで、車の横に待機してた、ってわけだ。
「あぁ、良いぞ。…さぁ乗った乗った。」
俺は愛車のR-35(黒)の助手席に金剛を座らせると、エンジンに火を入れた。
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