短編集
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Fate/Grand Order
戦い終わって
前書き
FGOの短編です
pixiv様にも投稿しております。
「先輩、ようやく戦いが終わりましたね」
「うん」
人理継続保障機関『カルデア』の一室、人理焼却の危機を防いだマスターは床に臥せっていた。
最後の特異点を攻略した後、突如倒れ、そのままベッドから起き上がれなくなっていた。
「先輩はこれからどうされます?」
ベッドの脇に控えている少女『マシュ・キリエライト』はマスターの手を握りながら、そう聞いた。
マスターは「一度実家に帰りたいな」と答えた。
「実家、ですか?」
マシュが首をかしげると、マスターは自分の家族構成を簡単に伝えた。
「じゃあ、早く身体を治さないとですね!」
そう言って、マシュは笑った。
「原因が分かったって本当ですか!?」
マスターが眠りについた後、ダヴィンチがいる工房にマシュはいた。
そこにはダヴィンチの他にドクターの『ロマニ・アーキマン』、“魔術師”のサーヴァント『メディア』がいた。
「うん。マシュには心して聞いてほしい。○○君は呪いに侵されている」
「呪い……ですか?」
「魔術王に止めを刺す瞬間、無防備だった○○君に呪いを放っていた。それが彼の魂を汚染している」
衝撃の事実にマシュは言葉を失う。
「え…」
マシュのその様子を見て、ロマニは悲痛な表情を浮かべる。
「私とメディア君で調べた結果、解呪は不可能と断定したよ。このカルデアに存在する魔術師のサーヴァントの中で特に魔術に優れている彼女ですら解呪できない。流石魔術王ソロモン…」
常に飄々とした表情を浮かべているダヴィンチが歯を食いしばって、言葉を振り絞る。
「言っておくけど、ゲオルギウス、ジャンヌ・ダルク達の力も借りて何度も試したけど、進行を遅らせる以外出来なかった。それにもう……彼の体力は限界だ…。もってあと数日だろう」
「それは先輩には…」
「伝えてあるさ。たぶんカルデア内では君が最後だ」
何となく変な雰囲気を感じてはいた。
いつも大騒ぎをするサーヴァントたちが静かにしている。
それにスカサハやクー・フーリンなどが何度もレイシフトを繰り返し、何かをしているのも見たことがある。
「な、なんで私が最後に…」
「それはだね…」
「今日はいい天気ですね」
「ああ…」
車いすを押しながら、冬木の街を歩くマシュ。
彼女は車いすに乗ったマスターを押して歩いていた。
「子供たちも楽しそうに遊んでいますね」
「そうだね」
マシュを最後にした理由、それはマスターをレイシフトさせ、自分たちが救った世界を少しの間見せると言う目的の為だった。
そして、現在、彼女がデミ・サーヴァントになった地“冬木”市にやってきていた。
「この営みを守れたんですね、私たちは」
自分たちが駆け抜けた場所を歩き、カルデアに戻る。
そして、オルレアン・セプテム・オケアノス・ロンドン・北米・キャメロット・ウルクすべて見て回った。
「俺たちは、本当に守れたんだな…。良かった」
「私、先輩に出会えていなかったらここにいませんでした。先輩に出会えて、本当に良かったと思います。先輩、私、マシュ・キリエライトは先輩の事をお慕い申し上げています」
そう言って、マシュはマスターの唇にそっと口づけを落とした。
マスターは目を見開いて、固まっていたがすぐにそれを受け入れ、力の入らなくなってきている腕でマシュを抱き寄せる。
「マシュ、俺もマシュの事が好きだ。ずっと一緒に居て、マシュに励まされてきたんだ。だから、どんなつらい時でも戦ってこられた。本当にありがとう」
「先輩!」
マシュは再びマスターにキスをした。
そして、その晩、マスターは静かに息を引き取った。
―数年後―
「先輩、お久しぶりです。そちらはどうですか?私は、ううん、カルデアはいつも通りです。ついこの間もエリザベートさんが騒ぎを起こして、みんなで解決しに行ったり、ノッブさんがはっちゃけて沖田さんとエミヤ先輩にしばかれたりしていました」
マスターの亡骸は彼の好きだったオルレアンの丘に埋葬された。
そこにはたくさんの花が飾られ、更には墓石の周りには邪悪なモノや人間たちが寄ってこないように人払いの結界がはられていた。
「でも、寂しいです。先輩…」
地面に涙がぽたぽたと垂れる。
ひとしきり泣いたマシュは涙をふくと、立ち上がり、墓に背を向けた。
「先輩、また来ますね。今度はカルデアの皆と一緒に」
そう言って、マシュは駆け出した。
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