その傭兵の名は、『吹雪』と呼ばれる
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プロローグ「ある傭兵の戦い」
前書き
街を捨てたレジスタンスは、あてのない放浪を決意する。
生きるものの失われた大地が、彼らの眼前にあった。
そしてなお、戦いは終わっていなかった。
「実験は失敗でした」
「貴方達は、この荒れ果てた大地に眠る幾多の者たちと同じ」
違う…
「自らを滅ぼすと知りながら、それでも争うことを止められない」
「卑小で、愚かな存在」
違う…違う
「オレは、そうは思わん」
「戦いこそが、人間の可能性なのかもしれん」
「興味深い」
「しかし、仮説にしか過ぎません」
私は戦うことに精神を集中させる。目の前のものを壊す、それだけが頭の中に回っていた。
「証明してみせよう」
「貴様になら、それが出来るはずだ」
方や広大な力を持つ、知られない兵器。
方や叶わないであろう願いを乗せたAC。
それらの2つは、激突する。
知られない兵器は、まるで見たことのないような動きを見せACを翻弄する。
しかし、そのACにはまるで「無駄」だった。
彼女が持つ2丁のライフルがその兵器を惨殺せんと無慈悲に当て続ける。
しかし、その兵器はいきなり突進する。
彼女のACに激突し、双方半壊状態へとなる。
その兵器はしっかりと戦える状況にはなっているが、彼女のACは片方のライフルを破壊される。
この状況ではACの方が圧倒的に不利だ。しかし、彼女は兵器の行動パターンをすべて「読み切った」。
兵器が再びACに突撃する。しかし、ACは回避し、その兵器は建物に激突した。
そして同時に、そのACはブーストチャージによる攻撃を行う。
その兵器は衝撃に耐えきれず、特殊な機械音を立て大きく爆発した。
彼女は焦りなどで耐えきれない圧力が脳に回っていた。
「ありえません。たかがACごときが」
たかが…じゃない
「愚かな存在…しかし」
「一考の価値は、あるかもしれません
「時間が必要です」
何の時間…?
彼女は虚像のように思う。
「完全なプログラムを作り上げる時間が」
よくわからない…なぜ、必要なの?
再び思う。
「今は去りましょう」
去れ…去るなら去れ…!
「いずれ、答えは出るはずです。
もしも貴方のような『例外』が存在するというのなら」
無線から、謎の女の声が消える。
彼女は何かを安心したように落ち着く。
「もう、潮時ね…」
今までたくさんの仲間と出会った。
ロザリィ、フラン、RD、レオン…これだけじゃないと思う。
でも、覚えきれない…
意識が薄くなっていく。
人はこうやって死ぬのかな…
機体は警告音を鳴らし続ける。しかし彼女はACのジェネレーターの稼働を停止させ、ACを止める。
止めたところで、もう動くことすらままならなくなってきた。
出血が激しいことがようやくわかっても、もう対処は出来ない。
彼女は最後にこんな言葉を残した。この言葉の記録は、後にあるコウノトリによって拾いだされる。
当初残された言葉の解析は不可能だったものの、かすかな言動から一部の内容だけは判明してた。
「…月…また、死…かぁ…早か…な…秋月姉のところに、行…。さようなら…」
そうやって彼女は息を静かに引き取った。
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