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真田十勇士

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巻ノ六十八 義父の病その九

「真田家の者として生きて死ぬのじゃ」
「ですか」
「わしはわし、御主は御主じゃ」
 あくまでとだ、大谷は幸村に強く話した。
「そうせよ、よいな」
「ではそれがしは父上に」
「つくのじゃ」
「父上か義父上となれば」
「真田殿に従うのじゃ」
 昌幸、彼にというのだ。
「そして戦の場では後腐れなく戦おうぞ」
「さすれば」
「それを言いに来た、何この病でもじゃ」
 頭巾の顔の目を綻ばせてだ、大谷は幸村にあらためて言った。
「暫く生きられる、命ある限りな」
「太閤様にですか」
「忠義を尽くす、佐吉にもじゃ」 
 石田、彼にもというのだ。
「共におる、そうする」
「そうされますか」
「わしも義に生きたい」
「武士として」
「そうしたい、だからな」
「そうされますか」
「死ぬまでな」
 そうすると言うのだった。
「わしは決めた」
「わかり申した、それでは」
「御主もじゃな」
「武士としてです」 
 畏まってだ、幸村は大谷に応えた。
「生きまする」
「そして死ぬな」
「そうします」
「その様にな」
「それでなのですが」
 大谷の病と誓いを聞いてからだった、幸村は大谷にあらためて言った。今度言ったことはどういったものかというと。
「こうして来られたので」
「酒か」
「飲まれますか」
 義父にこれを勧めるのだった。
「如何でしょうか」
「相変わらず酒が好きか」
「はい、これはです」
「どうしてもじゃな」
「飲まずにおれませぬ」
 こう答えるのだった。
「ですから」
「そうか、ではな」
「はい、焼酎で宜しいでしょうか」
「御主の好きな酒じゃな」
「それをです」
 まさにというのだ。
「如何でしょうか」
「ではな」
 大谷は幸村に笑顔で応えた、そしてだった。
 頭巾を被ったまま口のところだけをめくりつつ酒を飲み幸村と話したのだった、そこで話したことは何かというと。
「娘は任せた」
「では」
「これまで通り頼む」
「わかり申した」
「ではな」
 こう言ったのだった。
「任せた」
「それでは」
「今は寝ておるか」
「そうかと」
「そうか、ではな」
「明日会われますか」
「そうするか」
 父としてだ、大谷は応えた。 
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