正々堂々? 残念、虚々実々に行かせて貰うわ
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第01幕 天才
前書き
初めまして、淀水汰と申します。
今回からこの小説を投稿させて戴きます。
宜しくお願い致します。
仕事の都合上、更新が不定期になりますが、それでも宜しければ感想やご指摘の程を何卒お願い致します。
それでは、天才少年の物語、開幕で御座います。
「へえ、昔っから穀倉とかを潰すだの畑を焼くっていう策略は取られてたんだな」
感心したように呟く少年は、革張りのソファに腰掛けていた。
光沢ぶりから中々の高級品だと思しきソファだが、座っているのは十七、八歳かそこらの少年だ。
まだ学生といったところの容貌の少年だが、やや異質な雰囲気を帯びていた。
極めて特筆するところなどなさそうな少年だというのに、その身に纏う異様極まりない貫禄は、何なのであろうか。
「あー……、読み終えちまった」名残惜しそうに呟いて「これまた本屋行かなきゃじゃねえかよ」
唯々本の虫、というわけではない。
この一週間で少年の読んだ本の数は、百を飛び越え、百八冊。
馬鹿馬鹿しい程の読破量だが、少年にとっては普通だった。
教本や事典、辞書、小説や雑誌等々――。
しかも読んだ本の内容を、鮮明に記憶しているのだから末恐ろしい事この上ない。
「次は何処の本屋行くかねえ。駅前か、バイク出して隣町の本屋でも良いかもなぁ」
独り言ち、テーブルの上のカップを手にする。
少年――志水道斎。
十八歳で、知能指数驚異の185を有する天才。
墨色の髪に、同色の瞳。
十歳の時に両親を亡くし、その後ローンを払い終えた家を道斎一人で切り盛りをしている。
両親を亡くす前、神童や天才と謳われた彼だったが、案の定、天才というのは生きづらく、また虐げられがちで憎まれがち。
当てられ続ける羨望の眼差しに酷似した嫉妬と憎悪の視線に気の触れた彼は、高校を主席で卒業すると同時に外界との関わりを完全にシャットアウトしたのだった。
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