ダブルクロス~世界の豹変~
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第一話 狂いだす歯車
色々な店でごった返すこの町の少し奥の方へ行くと、昔は繁栄していたであろう商店街と、バッティングセンターがある。
そこの向かい側にある、こじんまりしたアパートの二階の右奥のドアに色褪せた看板が立て掛けてあった。
トラブル・揉め事相談所はこちら、看板にはそう書かれていた。
今日もその相談所へ一人の来客が来た。
「家の娘は、見つかりますかね?」
眼鏡を掛け、スーツを身に纏ったサラリーマンの中年男性が不安そうな顔で問う。
この部屋は、アパートの見た目とは裏腹に、物が綺麗に片付いていて、隅々まで掃除が行き渡っていた。
サラリーマンは、革張りのソファに座っていた。
「そうですね···まぁ見つからない事も無いですね娘さんは年頃ですから、家出という線でこれから捜査したいと思います」
そう言った革張りのソファに腰掛けている長身で黒いタンクトップがはち切れそうな程の筋肉をして髪を後ろに上げている、オールバックという髪型で顎には多少の髭を蓄えている男が“捜査資料”なるものを見つめながらそう言った。
そして男は続けざまに言った
「それに、娘さんの資料や貴方のお話を聞くと、あまり素行が良くなかったらしいのであまり時間は掛かりませんね」
「え?どうしてですか?」
中年の男は不思議そうに男にそう聞いた。
「この事務所には、警察がすぐに対処してくれそうもないストーカーから、闇金とのトラブルまで色々扱ってるので、その界隈の人間なら大勢知り合いが居るんですよ。ですからきっと時間はかからないはずです。
では、俺は早速捜査に掛かるので」
男はそういってソファの横のコートハンガーからカーキ色のミリタリーコートを羽織って外へ向かった。
「あ、あのお金は···?」
中年の男性が慌てて外に向かいながらそう言った。
「後払いで結構ですよ、掛かった時間とかで決めるんで安心してください、何とか安くして見せますから」
コートを着た男はそう言いながら笑った。
それに答えるかの様に中年の男性も笑顔を返した。
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同時刻ーUGS日本支部資料室ー
「う~ん、私達のひとつ前のジャッジの資料は、っと」
そう言いながら、大量のファイルがある棚を入念に見ている、少女がいた。
「もう辞めましょうよ~お嬢~、前ジャッジのメンバーの資料なんてとっくに抹消去れてますって~」
呆れながら、学生服を着た青年は言った。
「あ、あった!これよ!」
そう言うと、少女は一つのファイルを取り出した。
「キュマイラの能力を持つ従軍経験有りの警視庁元組織犯罪対策部のえっと、名前は影沢」ーーーー
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コートを着た男はジーパンのポケットからバイクのキーを取り出し、バイクに跨がろうとした時、中年の男性が思い出したかの様にこう言った
「娘の事、宜しくお願いします!もし見つけたらキツく叱ってやって下さい!」
中年の男性は深々と頭を下げた。
コートの男はバイクのエンジンを掛けながらこう言った
「叱るのは、俺の仕事じゃなくて、貴方の仕事ですよお父さん」
「ははっ、そうですね」
中年男性は笑いながらそう言った。
そして、コートの男はフルフェイスのへルメットを被り、発進した。
「お願いします!影沢 龍一さん!」
影沢 龍一、とんでもない経歴を持つこの男がこの物語の主人公である、そして、この事件が狂い出した歯車の一つと言うことに影沢が気付くのは、もっと後の話であるーーー。
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