聖闘士星矢 黄金の若き戦士達
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561部分:第八十話 川辺においてその五
第八十話 川辺においてその五
「いいね、絶対にね」
「死ぬんじゃないよ」
「え、ええそれは」
「わかってるけれど」
「またえらく真剣ね」
二人のその言葉を受けておどおどとした調子になる四人だった。
「けれど何でそこまで真剣になるのよ」
「私達だって覚悟してるし」
「そんなにまで」
「それでも死なれたら困るんだよ」
「仲間にはね」
二人はここで彼女達を仲間と呼んだ。
「いいね、それはね」
「仲間が死ぬのは嫌なんだよ」
「仲間だから」
「私達に死なれたら困る」
「そこまで言ってくれるの」
「その通りです」
この場では今まで黙っていたムウが述べてきた。彼もまたカリーを食べている。それは彼もまた同じであった。食べているものは同じものだったのだ。
それを指で口の中に入れながら。彼はさらに言ってきた。
「貴女達は仲間ですよ」
「ムウ様もそう仰るんですか」
「私達は仲間って」
「そう」
「それ以外の何だというのです?」
微笑んでも告げるのだった。
「貴女達が私の仲間でなくて」
「ですけれど。私達青銅ですよ」
「白銀ともかなり開いてますし」
「黄金の方々なんてもう」
「仰ぎ見る存在ですし」
青銅の彼女達から見ればまさにそうである。ムウだけでなく黄金聖闘士達は誰もが彼女達にとってみれば雲の上の存在であるのだ。
その彼に言われてだ。彼女達も狼狽しないわけにはいかなかった。そしてその狼狽した声でまたムウに対して言い続けるのであった。
「そんな人に仲間だなんて」
「そんなことって」
「ないですよ」
「そうですよ」
「いえ、仲間です」
しかしムウは微笑んでまた言うのであった。
「貴女達は仲間ですよ」
「そうですか」
「そう言って下さるんですね」
「はい」
微笑みはそのままだ。その声で述べ続けている。
「同じ聖闘士ではありませんか」
「同じ聖闘士だから」
「仲間なんですか」
「そうです。同じアテナの聖闘士です」
だからだという。彼の言葉はそこにあった。
「それでどうして貴女達が仲間でないといえましょうか」
「同じアテナの聖闘士だから」
「だからなのですか」
「そうです」
また答えるムウだった。
「ですから。私もまた」
「ムウ様もまた」
「はい、私も同じです」
微笑んで述べ続けるのだった。
「貴女達に命を落とされては困ります」
「ムウ様・・・・・・」
「私達の為にそこまで」
「ですから。わかりましたね」
ムウは彼女達にその優しい微笑みを向けている。そのままだった。
それは彼女達にも伝わった。深く強く。そのせいでカリーの味が変わってしまった。
「何かカリーが急に」
「そうよね」
「不思議な味になったわね」
「本当にね」
口々に言うのだった。
「その御言葉を聞くとそれだけで」
「何か」
「不思議なものだね」
ここで魔鈴も言った。やはり彼女もそのカリーを手で食べている。
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