FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~
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楽勝じゃん!!
前書き
鉄腕DASHを見て思ったけど、なんで狸って痩せてるのに絵で描かれるのは太って描かれるのかな?ポンタとかただのデブになってるよね?モフモフして柔らかいけど、あの着ぐるみ。
「絶対・・・こいつら悪魔だ・・・」ガクッ
口から血を吐きガックリと力尽きた山賊の一人。俺たちから質問攻めにあった彼は泣きそうになりながら、何度も意識を失いながら答えてくれて、結果的にはここまでで大半の情報が聞くことができたので解放してあげたら、そう呟いて深い眠りについてしまった。
「あれ?眠っちゃった」
「疲れてたのかな?」
意識を失った男性を見て不思議そうな顔をする俺とレオン。後ろのメンバーはジト目でこちらを見ているが、気にしたら負けなので、気を失った山賊をその辺に放り投げて話を進める。
「ほとんどのメンバーがここにずっといるみたいだね」
「前の警備兵との戦闘でケガ人がいっぱいいるみたいだから」
ミンクさんたちのおかげで彼らは動くに動けず、ここに留まるしかできなくなっていたらしい。おかげで、一網打尽にするチャンスというわけだ。
「ミンクさんたちがやられた魔導士たちもいるんだよね」
「そう言ってたね」
さらりとそばにいる男性の心を抉り取っていた天竜と天神。ミンクさんは正直響いたようで、表情が強ばっていた。
「でも相手いっぱいいますよね?大丈夫なんですか?」
首を傾げもっともな疑問をぶつけてくるのは俺の愛弟子。初めての依頼なのにちゃんと考えていて動いていて、感心するな。
「敵は多いけど、問題ないでしょ」
「こんなのばっかりだしね~」
その辺に転がっている山賊を見て俺とセシリーが率直に意見を述べる。ミンクさんの話ではほとんどがこの程度のレベルばかりらしいので、負ける気は全くしない。問題なのはちょっと力がある魔導士数人だけ。
「写真で見た三人だけなんだよね?」
「あぁ。魔導士はそれしかいない」
事前に提供してもらった写真で見た二人の男と一人の女。魔法が使えるのはその三人だけらしく、他はこの通りの雑魚ばかり。なんだ、意外と楽勝じゃん!!
「気を抜いちゃダメよ」
「数に押されないようにしないとね~」
「ラウたちも頑張るぞ!!」
人の姿になれるようになったので、戦闘にも加われるようになったシャルルとセシリーはどこか楽しそうに見える。いつも見ていただけだったから、こうやって一緒に戦えること日が来ることが楽しみだったのかもしれない。
「合言葉決めようぜ。やられたら・・・」
「「「自己責任!!」」」
「なんでそこで声が被るのよ・・・」
レオンのかけ声と共に発せられた謎の合言葉。俺とセシリー、そしてサクラの声が被ったんだけど、こんなに息がピッタリ合うとは・・・実はコンビネーションがいいチームが作れるんじゃないか?
「よーし!!突撃ぃ!!」
「「「早ッ!!」」」
真っ先に飛び出していったのはなんとラウル。相当戦えることが楽しみだったらしく、いてもたってもいられずに走り出していった。それを見た俺たちも遅れまいと彼に続く。
「とうっ!!」
「がはっ!!」
先頭を行く少年はこちらを見ていなかった見張りの山賊一人を飛び蹴りで弾き飛ばす。その音でアジトの周辺にいた他の奴等の視線が一斉にこちらを向いた。
「天竜の・・・」
「水竜の・・・」
何事かと音が聞こえた方へと集まってくる山賊たちを見て、隣にいる少女と共に頬を膨らませる。
「「咆哮!!」」
「「「「「うわああああああ!!」」」」」
タイミングを見計らい、一気に敵を蹴散らそうとブレスを放つ。その狙いは見事に嵌まり、見張りの兵隊たちを一掃することができた。
「なんだ!?今の音は!?」
「誰だ!?」
悲鳴を聞いた山賊たちが慌ただしくアジトの中から飛び出してくる。
「天神の北風!!」
「氷神・永久凍土」
その瞬間を狙って二人の神が魔法を放つ。出てきたばかりの男たちは、当然反応などすることもできずに吹き飛ばされていた。
「やぁっ!!」
「とりゃ~!!」
俺とウェンディ、シェリアとレオンの取り残した敵へと蹴りやパンチを叩き込んでいるのは、今回が初の戦闘参加となる猫耳少女たち。身軽な姿なだけに、なかなか素早く攻撃を繰り出していて、山賊たちを圧倒しているように感じる。
「ここをこうやって・・・」
そして、初めて依頼に参加したサクラは、ゆっくりと、丁寧に空中に魔法陣を描いている。この依頼は彼女の経験のためにと準備したものなんだけど、まだ手慣れていない様子が明らかに見えており、押されていた男たちは狙いをこちらからその少女一本に迫る。
「サクラ!!危ない!!」
一つ一つの動作を確認しながら魔法を使っているため、注意散漫な彼女に声をかけるが、全く届いていないらしく少女は近付く敵に一切視線を向けない。
「ここをこうで・・・こう!!」
ゴッツイ山賊たちが桃髪の少女に飛び付こうとしたその時、彼女の書いていた魔法陣が出来上がり・・・
ボワッ
迫ってきていた男たちを一瞬のうちに炎で包んだ。
「「「「「あっちぃぃぃぃ!!」」」」」
全身を焼かれた彼らはあまりの熱と、それによって起こった激痛にその場でのたうち回る。
「やった!!シリル先輩やりましたよ!!」
結果オーライのようにしか見えなかったけど、サクラは自分の力で敵を倒したことに喜んでおり、こちらに向かってピースをしてくる。
「あの・・・一応依頼中なんだけど・・・」
もう魔法ができた喜びと、それを使って相手を一掃した感動で胸いっぱいになっている愛弟子の意識を戻させる。彼女の背後から迫ろうとしていた男もいたのだが、シャルルやセシリーが退けていたためなんとか無事だったけど、そんなことに一喜一憂していたら仕事なんかできないぞ?
「なんだ、騒々しい」
後でその辺の指導をしなければと考えていると、三つの足音が聞こえてくる。そちらに視線を向ければ、写真で見た二人の男と一人の女がこちらに向かってきていた。
「あら?誰かしら、あの子たち」
倒されて気を失っている仲間を平然と踏みつけ歩を進めてくる女性。彼女は気絶している男たちを見回した後、その中で立っている俺たちを見て首を傾げる。
「なんだなんだ?こんなガキにまでやられるのかよ」
女性との間に一人挟み、こちらを悪い目付きで見下ろしている上半身裸の男。その体には至るところに傷跡がついており、いくつもの修羅場を潜ってきたのがパッと見でわかる。
「落ち着け。あいつらは魔導士だ。こうなるのも仕方ない」
三人の中で中核を担っていると思われる真ん中の男。年齢は二人よりも高いように見え、ジュラさんとか一夜さんくらいの感じだろうか?落ち着いた雰囲気を醸し出しており、少し緊張した空気になってしまう。
「あんな小さい子たちが?すごいわね」
「総長からの資料で見覚えがある者が多い。詳しくはまだ目を通していないが・・・」
総長?一体何のことを言っているのかわからず目を細める。まさかこの人たち以外にも敵がいるってことなのか?だとしたら面倒なことにな――――
「こいつらが誰だろうと関係ねぇ!!」
「!!」
敵の会話の続きを盗み聞こうと耳を澄ませていると、突然目の前につり上がった目をした、さっきまで二人の隣にいたはずの男が現れる。
「はっ!!」
「うわっ!!」
腰元に備え付けられていた・・・日本の棒を鎖で繋げた武器で顔を打ち払おうとしてきた山賊。不意を突かれたためギリギリになってしまったが、なんとか回避することができた。
「おっ!!いい動きするねぇ」
「そりゃどうも」
体を仰け反らせるように回避したので、戻る力を利用して敵の顔面に頭突きを放つ。しかし、読まれていたのか、はたまた見切られていたのか、体を横にずらされ、目標を失ったために前のめりに地面に転がる。
「うわっと」
「大丈夫!?シリル!!」
でんぐり返りのようになった俺のもとに心配そうな表情でかけてくる天空の竜。俺とウェンディ、そして敵の間に割って入るようにシェリアがやって来る。
「おっ!!みんな可愛いじゃん!!あと五年くらいしてから会いたかったなぁ」
天竜の手を借りて立ち上がり男を見据えると、どこか嬉しそうなトーンの声でそんなことを言い出す山賊。なんだろう・・・バカにされたような、無意識にディスられたような気がして腹立だしい。
「喰らえ!!」
こちらを見下ろしニヤニヤしていた男の背後から忍び寄り、携えていた剣を抜き斬りかかったミンクさん。しかし、目の前の男はそちらを見向きもせずに、持っていた棒の武器を一本に折り畳みあっさりと防いでいる。
「後ろから来てもムリムリ。俺には不意討ちなんて効かねぇぞ?」
「クッ・・・」
まるで目が後ろにもついているのでは思わせるほどの反応を見せた彼は、そちらにチラッと視線を向けただけで全く興味を持っていないかのような態度を取っている。
「カラス、あまり勝手な行動を取るな」
「ほいほ~い」
いきなり飛び掛かってきた、カラスと呼ばれた男はミンクさんの剣を払うと、腹部に一撃蹴りを叩き込んでから真ん中の男の隣へと飛びながら戻っていく。
「女子供ばっかり・・・でも、なかなか強い子たちばかりなんでしょ?」
「らしいな。特にあの金髪の少年は――――」
大魔闘演武の影響もあってか、こちらのデータを多く持っている様子。あのカラスって人を見た限り、他の二人も相当手強い魔導士なは――――
ヒュンッ
「「「「「!?」」」」」
いかにして彼らを仕留めようか考えていると、脇から突然何かが飛んでいくのが見えた。俺たちがそれが何なのか見送っていると、どこからともなく打ち出された謎の物体は・・・
「ガッ!!」
リーダー格と思われる男性の頭部に命中した。
「うおっ!!大丈夫か!?」
「しっかりしなさい!!」
魔法の勢いに押され転倒した男性を抱えて揺らす男と声をかける女。だが、当たりどころが悪かったようで、目を覚ます様子が一向にない。
「あなたたち!!いきなり攻撃するなんて最低よ!!」
「お前らが言うなよ」
先に不意討ちを仕掛けたのはあちらなんだから、これはお互い様で済ませてもいいのではないだろうか?なんて、自分勝手なことを考えてみたりする。
「サクラ、ややこしくなるから勝手なことするな」
「すみません!!間違ってしまいました!!」
リーダー格の男性に魔法を直撃させた少女に小さな声で注意する。実は彼女、あの三人が出てくる少し前から次の魔法陣を書いていたみたいなんだけど、それが出来上がったのがあのタイミングだったらしく、たまたま発射してしまい、不意を突いた形になってしまったらしい。
「許さない・・・すぐに片付けてあげる」
そう言った女性は腰元にカットの入ったスカートの中に手を入れると、太ももにつけられていたホルダーから銃を取り出し、両手に握る。
「私の弾丸が受け止められるかしら?」
こちらに構えて撃ち込まれた銃撃。連続で放ったかと思ったら、それは予想外の攻撃になっていることがわかった。
「な・・・何この軌道!?」
本来銃は一直線にしか動くことができないもののはず。アルザックさんやビスカさんは早打ちや魔法弾を使っていただけだったように思うけど、彼女のは違う。まるで意志を持っているかのような、不思議な軌道で銃弾が向かってくるではないか。
「魔力を使って銃弾を意のままに動かす。軌道が読めなきゃ交わせないし防げない・・・蜂の巣になるだけよ」
まるで蛇でも襲ってくるような感覚に襲われる攻撃。一発ならまだしも、何発も放っているのが面倒くさい。どれかを避けると他の銃弾に当たってしまいそうだ。
「ま、俺は避けれるけどね」
普通の人なら間違いなく避けきれずに撃ち抜かれるしかないが、生憎と俺には通用しない。体を最小限に動かしすべての弾を避け、ドヤ顔を決めて相手を挑発してやる。
「封印の氷地獄」
ただ、これを避けれるのは俺だけ。ウェンディたちに当たる可能性があることを全く考えていなかった俺は、レオンが腕を振るって弾丸を氷漬けにしたことでようやくそのことに気付く。
「ごめん、全然気付いてなかった」
「大丈夫!!レオンのおかげで無事だよ!!」
自分が大丈夫だから周りも大丈夫、勝手にそんな思考が脳裏を過っていたのかもしれない。もう少し周囲のことを考えて行動しないとな、気を付けよっと。
「くっ・・・でも、いくらだって打ち込んで――――」
攻撃を全て凍らされても怯むことなく攻めようとする女性。しかし、彼女は突然黒い影が被さったことに気付き顔を上げると、そこには黒い風を腕に纏わせた少女が空に舞っていた。
「天神の舞!!」
「きゃあああああ!!」
渦のように風を生み出し、敵を打ち上げたシェリア。空に飛ばされた女性はバランスを整えることもできずに地面へと叩き付けられた。
「よし!!あと一人!!」
サクラの不意討ちが候を奏し、警備兵を圧倒したという話の魔導士三人組の二人を退治し、残るのはあと一人。そいつを倒そうと視線を向けると・・・
「あ!!」
「逃げた!!」
一番最初に奇襲してきた男が、俺たちとは反対方向に向かって駆けていっているのだ。
「待て!!」
「逃がすか」
それを追撃しようと真っ先に俺とレオンが走り出す。しかし、その際何もせずに倒されたリーダー格の男が手から糸のようなものを出し、俺たちの足に絡ませる。
「うわっ!!」
「っお!!」
足に絡み付いたせいで前に行こうとしていた上体が突っこみ、そのまま前のめりに倒れて腹を打つ。しかもここは山の中、辺りがゴツゴツとしていて街の中で転ぶよりもはるかに痛い。
「いってぇ!!」
「膝擦りむいた・・・」
中でも普段転んだりすることが少ない少年は初めての激痛に顔を歪めており、俺も擦りむいた箇所を押さえてうずくまる。
「大丈夫!?シリル」
「レオン!!」
それを見てすぐさま駆け寄ってくるそれぞれの幼馴染み。
「だ・・・大丈夫・・・」
「俺たちはいいからあいつを・・・」
逃げた男を捕まえてもらおうとそちらを見ると、すでにそこには男はおらず、山の中へと消えていた。
「あいつはもういいんじゃない?」
「うん。一人じゃもう無理でしょ~」
「あぁ。近くの街にも呼び掛けて指名手配するよ」
すでに追いつくことは無理だろうと判断したシャルルとセシリーがそう言い、ミンクさんがその後の対応について案を出してくれる。
「レオンが転ぶなんてレアだね」
「シリル先輩!!ドジッ娘みたいで可愛いですよ!!」
「うるさい!!」
体を起こし、治癒魔法をかけてもらっている俺たちをニヤニヤしながら見下ろすラウルと、相変わらず俺の扱いがおかしいサクラ。最後の一人を取り逃がしたのは悔しいけど、これ以上の追走は無理だし、諦めるしかないか・・・
「皆さん、ありがとうございました」
それから山賊たちを捕まえて評議院へと引き渡した後、川の流れを正常のものへと戻した俺たちは、街に戻りお屋敷に報告をしに行った俺たちに、ビオラさんが笑顔で頭を下げている。
「いえ、一人逃がしてしまいましたし・・・」
「よりによって一番強そうな奴を」
あの三人の中なら間違いなくあの男が一番強かったと思う。それを逃がしてしまったということは、今後街に報復をして来るのではないかと心配してしまう。
「何、大丈夫だ」
「あいつがどう攻めて来ても俺たちが何とかする」
その不安を払拭するようにストリングスさんとミンクさんがそう言ってくれる。そう言ってもらえるとすごくありがたい。ミスをしてしまっただけに、気持ちが落ち込んでいたから。
「本当にありがとうございました。おかげで元通りの生活をすることができます」
依頼の主な部分は“水不足の解消”だったため、山賊たちの退治はついでの仕事という考えになっていたらしく、何度も頭を下げてくるビオラさん。本来の街の姿に戻すことができてよかったし、感謝されることはやっぱり気持ちがいい。
「また困ったことがあったらいつでも呼んでくださいね!!」
「えぇ!!ぜひウェンディさんにお願いしますね」
まるで姉妹かと思わせるように仲の良いウェンディとビオラさんが、別れを惜しむように手を取り合い言葉を交わしている。
「シリルって言ったな」
「はい?」
二人の様子を見ていると、横から今回の依頼で初めて知り合ったミンクさんが話し掛けてくる。
「お前、本当に男なんだよな?」
「殴りますよ?」
最初に確認したはずなのに、いまだに疑いの視線を向けてくる彼に拳を叩き込みたい衝動に駆られるが、なんとかそれに耐える。
「お前が腑甲斐無かったら、いつでもウェンディをもらってやるぞ」
「ロリコンか!?」
いきなりの恋敵宣言に目を白黒させる。なんでもここに来た時ウェンディは男装をしていたらしく、親友になれると思っていたのだが、後に女の子だったことがわかるとそれがすぐに恋心に変わっていたらしい。
「絶対ウェンディはあげません!!俺はあいつを絶対離しませんからね!!」
そう言うとニヤッとイヤらしい笑みを浮かべたミンクさんだったが、なぜか目から涙を流しており、驚愕する。
「どう見ても女の子同士なのに・・・俺は割って入れないのか・・・」
相当俺の見た目が気になっているらしく、背中を向けてうずくまった彼を見て何とも居たたまれない気持ちになる。
「シリル先輩!!行きますよ!!」
そうこうしているうちに街を出る時間になったらしく、サクラに名前を呼ばれる。
「だ・・・大丈夫です!!いずれいい人が見つかりますよ!!」
恋敵宣言したかと思ったら、いきなり失恋したかのように泣き出した彼にそう声をかけ、部屋から出ていく。
「シリル、ミンクさんと何話してたの?」
「内緒だよぉ」
ウェンディが彼の気持ちに気付いていたのかわからないし、ここは彼のために黙っておいてあげよう。それに、できる限りミンクさんと離しておいた方が、奪われる心配もないしね。
後書き
いかがだったでしょうか?
終盤ストーリーがうまく纏まりませんでしたが、やりたいことはやれたのでまずはいいかな?
次は一話遊んで日常編2を終了しようと思います。
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