黒魔術師松本沙耶香 騎士篇
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第二十六章
「お見事、と言うべきね」
「素晴らしい一撃でした」
二人は真っ二つになっていなかった、五体満足のまま言う。
「魔術を使わせてもらったわ、移し身のね」
「私はこれです」
速水はタロットカードの教皇を出していた、そのカードを手にしつつ騎士に話した。
「持ち主を護ってくれる、そうした力がありまして」
「己の身を守ったか」
「はい」
「そうか、見事なものだ」
「並の魔術師なら終わっていたわ」
先程の一撃でとだ、沙耶香も言った。
「私達でもない限りは」
「あの様にしてかわした者ははじめてだ」
「そうだったのね」
「このことは褒めておく」
騎士は感情を込めた声で沙耶香に告げた。
「余もな、しかしだ」
「そう上手くはいかないわね」
「余を甘く見ぬことだ、魔術の類には負けぬ」
決して、という口調での言葉だった。
「それを今から見せてやろう」
「では」
「これはどうだ」
騎士は今度はその場から剣を縦横無尽にそれも驚くべき速さで振り回した、すると剣から無数の衝撃波が出てだった。
二人を襲う、そうして二人を衝撃波で斬ろうとするが。
二人は今度はだ、上に上がった。空を飛び。沙耶香は黒い翼でそうして速水はタロットカードの星を出していた。
そうして攻撃をかわしてだ、二人は空から反撃にかかった。
沙耶香は右手に雷、緑のそれを宿し騎士に向かって右手を突き出して放った、速水は皇帝のカードを出してそこからランスを抜き出し。
騎士に向かって投げた、これで攻撃としたが。
騎士はその雷もランスもだ、見事にだった。
雷とランスを見上げて睨むと、盾をかざしてだった。
盾でその雷もランスも受け止めて防いだ、どちらも一撃だけではなかったがそれも全てだった。盾で防いでみせた。
そうしてからだ、二人に向けて再びだった。
剣を振るった、すると今度は白い気が放たれた。気は巨大な鎌ィ足となって二人に襲いかかるが。
二人はそれを紙一重でかわし地上に降り立った、沙耶香は両膝を折って着地の衝撃を殺してから騎士に言った。
「今のは衝撃波ではないね」
「わかったか」
「ええ、気が入っていたわ」
「こちらの力ですね」
速水は教皇、そして女教皇の二枚のカードを出して言った。
「まさに」
「そうだ、聖なる気だ」
「信仰に基づく」
「この気でだ」
まさにというのだ。
「そなた達を倒そうと思ったが」
「魔族や不死の類なら相当な存在でもない限り受ければ一撃ね」
それで終わりだとだ、沙耶香も言う。
「そうなっていたわ」
「そなた達は異教徒であり魔族や不死の類ではないがな」
「ええ、それでもよ」
聖なるものを体質的に、彼等にとっては猛毒だからこそ忌み嫌う魔族やアンデット達とは違う。だがそれでもだというのだ。
「人間でもね、ただの」
「無傷では済まないものだ」
「ええ、一撃を受ければね」
その時はとだ、沙耶香も言う。
「そうなっていたわね」
「これで倒せると思っていたが」
「生憎かわすのは得意よ」
相手の攻撃、それをだ。沙耶香は口元に笑みを浮かべて告げた。
「それはね」
「そうだな、防ぐよりかわすか」
「それが私の戦い方よ」
「私もです」
速水も言う、もう教皇と女教皇のカードは収めていて別のカードを出している。
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