火宅
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第二章
「いいって」
「そうじゃないのか?」
「そんなものなの」
「これで俺達に暴力を振るったり放ったらかしだったらな」
それこそというのだ。
「その場合はどうしようもないが」
「そうしたことは一切ない」
「ちゃんと俺達の面倒を見てくれている」
「家のことはしっかりしてくれている」
「だからなの」
「いいだろう、確かに二人の仲は悪いがな」
このことは一郎も認める、しかしだった。
そのうえでだ、こう弟や妹達に言うのだった。
「それを差し引いてもこれだけしてくれるならな」
「いい親か」
「そうなるか」
「悪い親なんてな」
それこそというのだ。
「もっと酷いだろ」
「暴力振るって育児放棄」
「よく話にある駄目親か」
「そうした親じゃないから」
「いいのね」
「ああ、喧嘩はないに越したことはないがな」
しかしというのだった。
「まあこれはな」
「差し引くしかないな」
「もう無視してか」
「やってくしかない」
「家族で」
「どうしても嫌なら家を出ることだ」
二人の喧嘩が我慢ならないならというのだ。
「それしかない」
「まあそこまではな」
「俺達もいかないしな」
「お父さんとお母さんは喧嘩ばかりだけれど」
「居心地は悪くないから」
それでとだ、四人もそれぞれ顔を見合わせて話した。
「家にいるさ」
「親父もお袋も顔を見合わせないと優しいしな」
「それならね」
「このままお家にいるわ」
「そうだな、じゃあ我慢するしかない」
両親の喧嘩のことはというのだ。
「わかったらそれぞれのやることをやろうな」
「俺はシェフの仕事で」
「俺は柔道部の部活か」
「私は受験勉強」
「私も資格取りたいし」
「俺もそろそろ服装を真面目にしてな」
一郎も一郎で言う。
「就職活動だ」
「ああ、一郎兄ちゃんもうね」
芙美子は一郎のその言葉を聞いて言った。
「三回生きるだから」
「ああ、御前と似た状況だよ」
「だからなのね」
「髪の毛もなおしてピアスも止めてな」
「リクルートスーツ着て」
「就職活動だ」
「そっち頑張らないといけないわね」
兄の言葉を聞いて納得して頷くのだった。
「もう」
「ああ、だからな」
それでと返した一郎だった。
「そっち頑張らないとな」
「アルバイト先のスーパーに就職したら?」
「スーパーに就職するにしてもな」
そうしてもというのだ。
「やっぱりこの格好だとな」
「アルバイトならともかく」
「社員さんになるにはな」
それはというのだ。
「無理だからな」
「格好変えるの」
「そう言う御前もな」
芙美子にしてもというのだ。
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