聖闘士星矢 黄金の若き戦士達
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543部分:第七十七話 最後の八大公その六
第七十七話 最後の八大公その六
「けれど用心しなよ」
「覚悟は必要だよ」
「覚悟って何が一体」
右手の指をテーブルの上にカリーと一緒に置いてあるボールの中の水で洗ってからそのヨーグルトが入ったコップを受け取り飲む。するとその味は。
「・・・・・・これはちょっと」
「甘過ぎるっていうか」
「お砂糖入れ過ぎ?」
「極端じゃないの?」
四人はそれぞれそのヨーグルトを飲んで今度は口を難しくさせていた。先程までの汗と混ざり合ってそれでそうした顔になっているのだった。
「甘いものはとことん甘いっていっても」
「これはちょっと」
「あんまりなんじゃ」
「これがインドなんだよ」
「わかったね」
その四人にまた話す二人だった。
「食べ物だけじゃないからね」
「ここは異次元だよ」
「油断したら何が何かわからなくなるから」
「それも用心しておきなよ」
インドという国全体がだというのだ。四人はそれを聞いてあることに例えるのだった。
「シャカ様みたいな感じ?」
「あの方みたいな」
「捉えどころがないっていうか」
「ああした感じかしら」
彼がインド出身であることから思ったことである。
「あの方って何考えてるかわからないし」
「お優しいのかしら」
「怒ったところ見たところないけれど」
「いつも物静かだし」
しかしであった。ここでまた白銀の二人が言うのだった。
「まあ怒らせないことだね」
「何があってもね」
「あれでかなり気紛れだし」
「全然優しくないよ」
シャカのその人間性についての言葉である。
「あれでね。黄金聖闘士の中で一番怖いからね」
「何するかわからないから」
「絶対に怒らせたら駄目よ」
「とんでもない方法で死ぬよ」
「とんでもないって」
「シャカ様って」
四人は魔鈴とシャイナのその言葉にそれぞれ顔を見合わせて困惑した顔になる。そしてそのうえで言葉を出し合うのであった。
「怖い人なのね」
「シャカ様のそうした性格もカリーとヨーグルトが作ったのかしら」
「極端な性格って」
「とにかくインドだからね」
「用心しときなよ」
二人はさらに注意するのだった。そしてここでムウを見てみるとだった。
「そういえばあんたは」
「表情変わらないね」
「ネパールですが」
彼が生まれ修業していたその国である。
「あの国の料理もかなり辛く甘いものですから」
「ネパールもですか」
「インドと同じだからなんですね」
四人はムウの言葉からそれを察した。
「そういえばあの国はインド文化圏ですね」
「それで辛さと甘さが極端なんですか」
「けれどムウ様は」
「シャカはあれは特別だからね」
魔鈴が四人に告げる。
「ムウはまた違うんだよ」
「そうですよね。ムウ様はムウ様ですよね」
「お優しくて穏やかで」
「気品があって」
ムウの評判のよさはこうしたところから来るのである。
「それじゃあ安心して」
「インドでの戦いを続けさせてもらいます」
「インド自体にはかなり思うところがありますけれど」
今は戦いのことよりもまずインドというその異文明に対する感情と戦う彼女達だった。しかしその中でムウだけは穏やかであった。
「それではです」
「はい、それでは」
「一体」
「これを食べ終わったら出発しましょう」
既に食べてからのことを考えているのだった。
「戦いの場へ」
「ええ、このカリーを食べたら」
「ヨーグルトも」
「デザートもあるからね」
「それもね」
それもあるというのである。
「果物がどっさりとね」
「それも食べなよ」
「何か食べるの多いみたいね」
「この国って」
「やっぱり凄く甘そうだし」
またしても食べ物の話になる。
「辛いのも続くし」
「それがね。何か凄そうだけれど」
「果たしてどうなるか」
「何、大したことはありませんよ」
しかしムウは穏やかな顔で言うだけであった。
「何ともありません。同じ人間です」
「そうですか」
「人はですか」
「ただ」
しかしであった。ここでムウの言葉が少し変わった。
そうしてであった。彼は言う。
「シャカみたいな人は本当にいますので」
「ってそれもやっぱり」
「凄い国じゃないですか」
そのことを認識せざるを得ない四人だった。何はともあれインドでの戦いがはじまるのであった。それもまた激しいものになろうとしていた。
第七十七話 完
2009・12・11
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