真田十勇士
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巻ノ六十七 関白秀次その二
「あの方が直々にな」
「それはまたどうしてか」
「我等の様な者達に関白様がお声をかけて下されたのか」
「それがわかりませぬか」
「うむ、おそらくであるが」
幸村はいぶかしむ彼等にまた言った。
「御主達の武勇を聞いてじゃ」
「我等のですか」
「それが関白様のお耳に入り」
「そのうえで、ですか」
「うむ、そうであろうな」
こう十勇士達に言うのだった。
「おそらくであるが」
「ですか、それでは」
「我等は関白様にそれぞれの武芸をお見せする」
「そうなりますか」
「そこまではわからぬが」
それでもというのだ。
「御主達の武勇を聞いてであろうな」
「我等そこまで名を知られていますか」
「そうしたことは考えたことはなかったですが」
「そうだったのですか」
「我等が」
「いや、御主達はかなりじゃ」
自分達のことを知らない十勇士達にだ、幸村は確かな声で話した。
「天下に名を知られておるぞ」
「十勇士としてですか」
「その名で」
「それぞれな、天下の豪傑十人としてな」
まさにというのだ。
「知られておるぞ」
「しかも殿の家臣として」
「その様にですか」
「拙者はよき家臣達を持っていると言われておる」
笑みを浮かべたままでだ、幸村はこうも言った。
「しかしそうして褒められると、しかも拙者自身のことでないのに褒められるとな」
「恥ずかしい」
「そう言われますか」
「どうもな」
こうも言った幸村だった。
「そうも思う、しかしな」
「しかし?」
「しかしといいますと」
「優れた主には優れた家臣が来るともいうし」
この言葉も出したのだった。
「拙者のことでもあるのか」
「やはりそうだと思いますが」
「殿だからこそです」
「我等は殿と共にあります」
「生きるも死ぬも共にと誓ったのです」
「共にいようと」
「そうか、では拙者はその御主達をこれからも宝にしていきたい」
まさにというのだ。
「必ずな」
「そうして頂けると我等これ以上はなき喜びです」
「では、です」
「関白様の下にもお供致します」
「是非供」
「ではな、尚御主達の身なりはそのままでいいとのことじゃ」
普段通りでいいというのだ。
「このことも言っておく」
「着替えずともいいのですか」
「然るべき身なりに」
「そうなのですか」
「うむ、文にはそうも書いておった」
「それはまた」
十勇士達はそう聞いてだ、驚いて言った。
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