オズのビリーナ
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第三幕その十
「家庭はそういうものらしいね」
「お父さんは、ですね」
「好き勝手やっていて家事もしない」
「家事はお母さんがするもので」
「どんなに忙しくてもな」
お母さんはというのです。
「家事をしないといけない」
「それは絶対ですね」
「そう、そしてね」
「お父さんは会社とかでお仕事はしても」
「家では何もしないんだ」
「お母さんは会社のお仕事をしてもですね」
ナターシャもその辺りの事情はわかるのでした。
「家事をしないといけないんですね」
「そうみたいだね」
「お父さんはお家で好き勝手にしている横で」
「お母さんは働いているんだよ」
「お母さんの方がずっと大変なんですね」
「そうみたいだね」
「そう、僕は子供の時自分の家でね」
ご主人がここでまた言ってきます。
「そういうのを見てきて」
「それでだね」
「はい、亭主関白はよくないと思ってますが」
「それがなんだね」
「妻はそうした性格でして」
しっかりとしていてしかも優しいからというのです、将軍の性格が。
「僕はついついです」
「亭主関白になっているんだね」
「実はそうなんです」
「成程ね」
「もっと妻を大事にしないといけないですね」
「充分大事にしてません?」
トロットはここまで聞いて腕を組んで言いました。
「そこまで考えてるなんて」
「そうかな」
「私はそう思いますけれど」
「だといいけれどね」
「はい、将軍も幸せだと思いますよ」
「実際にそう言ってくれてるけれどね」
将軍もというのです。
「妻も」
「奥さんもわかってるんですよ」
「いや、どの家もこうなんだろうね」
「亭主関白ですね」
「そうじゃないかな」
実はというのです。
「かかあ天下というよりは」
「そうしたものなのね」
「旦那さんの方が強いのね」
エリカとガラスの猫も言うのでした、考えるお顔で。
「いや、本当にね」
「今日もいい勉強になったわ」
「僕を恐妻家だって思ってたんだね」
「文字通りにね」
「そう思っていたわよ」
二匹はまたご主人に言いました。
「それが違っていて」
「大抵のお家がそうなのね」
「恐妻家じゃなくてかかあ天下」
「そうしたものなのね」
「そうだよ、じゃあもうすぐ来るよ」
ご主人がこう言ったその時にでした、キッチンの方から将軍の声がしました。
「ココア入ったわよ」
「お菓子もだね」
「用意出来てるわ」
「じゃあお菓子は僕が運ぶよ」
ご主人は席を立って将軍に言いました。
「君はココアを頼むよ」
「いつも悪いわね」
「いいよいいよ、夫婦じゃない」
笑って応えたご主人でした。
「これ位はね」
「それじゃあお願いするわね」
「皆はここで待っていてね」
笑顔で、です。ご主人は皆にはこう言いました。
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