提督はBarにいる。
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EX回:4鎮守府の秋祭り~前日編~
どうにかこうにか、祭りの前日までこぎ着けた。俺も目の下に濃い隈を作りながら書類と格闘している。連日連夜、ウチの店に出店担当の艦娘達が料理指導をしてくれと押し寄せて来ていた。鳳翔さんか間宮さんのトコに行けよ、と怒鳴ったりもしたのだが、鳳翔さん達は明日のご飯の準備があるからダメなんだと。俺もここの指揮官なんですがそれは。兎に角だ、漸く明日には一段落だ。と、そこにノックの音が。
「おぅ、入れ。」
「提督?間宮です。お疲れでしょうから、大判焼きの試食を兼ねて、お茶をお持ちしました。」
「おっ、良いねぇ。早速頂こうか。」
準備期間中はこんな嬉しい誤算もあった。試食と称して艦娘達が差し入れを持ってきてくれるのだ。お陰で半分引きこもりのような状態になりながらも書類仕事をやっつけられていた。
「ず、随分持ってきたね。」
「えぇ、出品予定の全種類、持ってきましたから。」
えぇと、つぶあん、こしあん、クリーム、チョコ、ずんだ、白玉入りのつぶあんとこしあん、ウグイスに栗……すげぇ。大判焼きの専門店か何かかな?
「これでも減らした方なんですよ?最初の段階ではこの倍くらいの種類でしたから。」
て事は、最初は20種類位あったのか。恐るべし間宮さん。
「さぁ、冷めない内にどうぞ?」
そう薦められて1つ手に取る。まだ温かい。わざわざ焼いて持ってきてくれたらしい。半分に割って見ると、中から小豆の粒と白い塊が顔を出した。どうやら、白玉入りのつぶあんを手に取ったらしい。一口かぶりつく。途端に感じたのは餡の熱さ。
「あふ、あふ、あふふふ……」
口をハフハフと動かしながら、口内から熱を逃がす。ある程度冷めたら一回、二回と咀嚼する。次に感じたのは、その独特の食感だ。フワフワと口当たりの良い大判焼きの皮に、小豆のツブツブとした食感、そして舌に感じるツルリとした感触。白玉だ。白玉を噛むとモチモチとした食感が加わる。
フワフワ、ツブツブ、モチモチ。3つの異なる食感が目新しさを感じる。そして口一杯に広がる餡のドロリとした甘味。皮からも甘味を感じるが……これは、ハチミツか?
「…うん、流石は間宮さん。美味いよ。」
そして、このほうじ茶に合う事合う事。間宮さんが正面で満足げに微笑んでいる。あぁ、こういう熟した感じの女性ってのも、魅力的だよなぁ……。って、何考えてんだ俺は。
「でも、大分お祭り会場らしくなって来ましたね。」
ほうじ茶を啜りながら、外を眺める間宮さんが目を細める。確かに、櫓も屋台もほぼ完成し、今は飾り付けの提灯を下げている段階だ。
「そうだな、もう明日には開催だからな。」
「他の鎮守府でも開催された事の無い、初めてのイベントですから。絶対、成功させましょうね。」
「あぁ、勿論。」
俺と間宮さんは、その場で握手を交わした。
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