提督はBarにいる。
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参った!と唸らせる魚。part2
さて、お次は分けてあった小鯵と、三枚卸しにせずに下処理を施した鯵を調理していこう。
まずは小鯵。ほとんど下処理などはせずに、片栗粉を付けて油で揚げていく。その間に付け合わせの野菜の準備だ。使うのは玉ねぎ、人参、ピーマン、パプリカ、ニンニク。
玉ねぎはスライス、人参とピーマンは細千切りがオススメ。もし短冊等にするならサッと油通ししておこう。パプリカは食感を残すために太めに切ったら、サッと油通し。ニンニクは薄皮を剥いて素揚げにしておく。焦がさないように気を付けよう。さてさて、ここからが重要な調味液……南蛮ダレを作っていく。そう、今俺が作っているのは小鯵の南蛮漬けだ。
南蛮ダレ(4人分)の分量は下の通り。
・おろし生姜:1片分
・酢:大さじ2
・オイスターソース:大さじ1と1/2
・水、ごま油、醤油:各大さじ1
・砂糖:小さじ1
以上の材料を混ぜてバット等の平たくて広い容器に入れ、下準備の出来ている野菜を浸けておく。そこに揚がった小鯵の唐揚げを投入。ジュウジュウという音と共に、ぷ~んと漂ってくる南蛮漬け独特の香り。ゴクリ、と生唾を飲み込む音が聞こえる。暫く浸けて味を染み込ませたら、野菜と小鯵を一緒に盛り付けて完成だ。
「さぁ、『提督特製・小鯵の南蛮漬け』だ。酒のお代わりは?」
ビール、ハイボール、モスコミュール、ジントニックと様々な注文が入る。やっぱ揚げ物系のツマミには、炭酸の爽やかな刺激が欲しくなるよなぁ、マジで。ちなみにだが、この南蛮漬けのタレは大概の青魚に合う。アジ・サンマ・イワシ・サバ……。好きな奴をチョイスしてくれ。
「ん~、幸せぇ♪」
「ホント、提督さんは料理上手過ぎですよぅ。」
「よせやい、誉めたって他の料理しか出て来ねぇぞ?……で?どうだ江風。美味いだろ?」
俺に唐突にそう聞かれた江風は、両頬を膨らませてモゴモゴと、
「ま、まぁ確かに普通の男よりは上手いんじゃない?」
と、顔を赤くしてそっぽを向いた。頬っぺた一杯に南蛮漬け突っ込んでそう言われても全然説得力無いんだが……こりゃ、轟沈まで後一歩、ってトコか。ならだめ押しだ。
「そうかそうか、なら気分をかえて、次はイタリアンでいくか。」
用意するのは漸く登場、下処理済みの鯵と昨晩から砂抜きしておいたアサリとハマグリ。そういえば、よく砂抜きが上手く出来ないと聞くから、砂抜きの上手いやり方を解説しておくか。
まずはアサリを浸けておく水。コレは海水よりも薄めの塩水で。あまり濃くすると塩味がついてしまうからな。そして重要なのが水のかさ。よくボウルに目一杯水を入れて砂抜きする人がいるが、あれだとアサリは上手く砂を吐き出さない。溺れてしまうからな。目安としては貝殻の一番高い所が少し水面に出る位の高さがベスト。スーパー等で売っている物なら2時間~半日、掘ってきた物なら半日~一晩浸けておくとしっかりと砂を吐き出してくれる。
砂抜きが終わったアサリとハマグリを、ザルに開けて米研ぎの要領でガシャガシャと洗っていく。こうして貝殻に付いた細かい汚れを落としてやる。次は鯵に飾り包丁を入れておく。斜めに三ヶ所程で良いだろう。ここに軽く塩を振ったら、フライパンにオリーブオイルを敷き、火を点けて軽く熱しておく。ニンニクをスライスした物と鯵を投入。ニンニクのスライスが面倒なら、包丁の腹を使って押し潰しても良い。元はイタリアの漁師メシ、意外と適当だ。
鯵の表面に軽く焦げ目がつき、カリッとしてきたら裏返し、ここにアサリとハマグリを投入。そして白ワインを入れるんだが、スーパー等で売っているアサリ1パックに対して50ccだから、80~100cc位かな。入れたら蓋をして3分程待つ。貝が開いてきたら水を300cc程一気に加える。このボコボコ言っている姿がイタリア語で狂った水……Acqua pazzaの名前の由来になった……という説もある。
そしたらここにミニトマト。ヘタを取り、半分にカット。幾つかは味出しの為に軽く潰してもいいかもな。コレをオリーブオイル200ccと一緒に入れて、豪快に混ぜる。本格的な味にするなら、ここに黒オリーブやケッパーを入れるとかなりレストランに近い味になる。後は全体に馴染むように鍋を揺すりながら煮込み、塩胡椒で味を整えてパセリを散らす。この出来上がりの煮汁の色が、質の悪い密造ワイン、acqua pazzaだと言う説もあるが、本当の所は解らない。
「さぁ出来たぞ、『鯵と二種の貝のアクアパッツァ』だ。」
瞬間に伸ばしてきた江風の手を、ヒョイとかわす。
「ちょ、ちょっと!?何すんのさ提督‼」
「あのなぁ江風。俺だって美味しく食べて貰える奴に食わせたいの。つまんねぇ意地張って、美味しいって素直に言えないような奴には食わせたくないの。」
ぐぬぬ……、という悔しそうな顔をする江風。よっぽど食べたいのか、身体はぷるぷる震えてるし、唇もワナワナしている。
「……った。」
「あん?聞こえねぇぞ。」
「解ったよ!参った、参りました‼提督の料理はプロ並みだよ。だから、早く食べたいからそれちょうだい!」
勝った(悦)。全くもう、最初っからそうやって素直にしてりゃあ可愛いってのに。そう思いながら頭を撫でてやる。
「頭撫でんなー‼子供扱いすんなー‼」
ムキー!となりながらも食べる手は止めない。全く、本当の娘みたいに思えてくるからな、駆逐艦は可愛いなぁ。
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