提督はBarにいる。
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■提督のお手軽‼イタリアンクッキング~和風イタリアン編②~
さて、前菜的な物は味わって貰った。次は日本生まれのパスタとピザを味わって貰おう。
先ずはパスタだな。一般に良く使われるスパゲッティを茹で始めたら、次は具材を刻んでいく。使うのは玉ねぎ、ピーマン、マッシュルーム、そしてお手製のスモークベーコン。ここまで書いたらもうまるわかりだよな。日本生まれのパスタの代名詞、ナポリタンを本場イタリアの艦娘に味わって貰おう。
玉ねぎはスライス、ピーマンは半分に切ってからか、そのまま輪切り。マッシュルームもスライスして、ベーコンは食べやすい大きさに切っておく。後は炒めていくぞ。
フライパンにサラダ油を引き、ベーコンを炒めて脂と共に旨味を出させる。そこに野菜類をドバッと入れたら、油に馴染ませるように炒める。ここで軽く塩胡椒をふってもいいが、ケチャップの味を計算に入れて振らないとしょっぱくなってしまう。
スパゲッティが茹で上がったら、ザルに揚げて軽く水気を切る。具材が十分に炒まったらスパゲッティを加えて具材と良く絡ませる。仕上げにケチャップ。最近のちょっと小洒落たカフェなんかだと、ケチャップじゃなくてトマトソースを使ったりするらしいが、そんなのはナポリタンじゃねぇ。ここで味見をして、少し塩気に物足りなさを感じたらパスタの茹で汁をお玉で加える。少しずつ加えて様子を見るようにしよう。
出来上がったら皿に盛り付けて、パルメザンチーズとタバスコを添えて出してやる。
「ホレ、日本生まれのパスタ……ナポリタンだ。お好みでタバスコとパルメザンチーズを振りかけて食べるんだ。」
3人共に興味津々でフォークに巻き付けて食べる。だが、何とも言えない微妙な表情。
「う~ん……とてつもなくマズい、という訳では無いんだけれど…。」
「やっぱり、トマトソースを使ったスパゲッティの方が美味しいわ。」
そりゃあそうだろうな。元々ナポリタンは終戦直後の物資不足の中で生まれた料理だから。
「まぁな。でも、それは日本人の努力の結晶なんだぞ?」
「え、どういう事?提督さん。」
「いいか、ナポリタンてのはな……。」
終戦直後、日本はGHQをはじめとする連合国の占領下にあった。それに日本中焼け野原で物資も乏しい。そんな中である日、東京のとあるホテルに米兵がやって来た。
「スパゲッティが食べたい。」
注文を受けたはいいが、ソースを作る為のトマトは無いし、スパゲッティは昨日茹でて余ってしまった残り物しかない。具材に使えそうな野菜も僅か……。そんな状態であるシェフがフライパンで刻んだ野菜と少し残っていた配給の加工肉を炒め、そこに余り物のスパゲッティを加えて、トマトソースの代わりにケチャップを突っ込んだ。そんな適当な料理が美味いハズが無いと仲間のシェフ達は止めようとしたが、そのシェフは皿に盛り付け、味に深みが足りないだろうと粉チーズをウェイターに持たせて運ばせた。
緊張の一瞬。米兵の機嫌を損ねたらどうなるか解った物ではない。食べ終えた米兵がウェイターを呼ぶ。
「この料理を作ったシェフを呼べ。」
不味かったのか。作ったシェフは項垂れて米兵の下へと向かう。
「大変美味しかった。仲間にも紹介したいのだが、これは何という料理だ?」
口の周りをケチャップだらけにして、にこやかにそう語る米兵。そこでシェフは、自分が知っていたイタリアの都市、ナポリから名前を取ってこの料理をナポリタンと名付け、この料理は瞬く間に日本中に広がっていった。やがてナポリタンは喫茶店等の定番メニューとなり、人々に親しまれるようになって今に至る。
「ま、そんな具合で使える物が少ない中、諦めないで美味しい料理を提供しようとしたシェフの思いが、その素朴な味のパスタ料理には籠められてるのさ。」
「……なんでしょうね、そうやってこの料理の出自を聞くと、何だか暖かさを感じるような、そんな不思議な味に感じますね。」
そう言いながら二口、三口と食べ進めるイタリア。
「まぁ、元々不味い訳ではないし。」
先程よりも少し頬に赤みが増したローマも食べ進める。少し目も潤んでるか?もしかして意外と涙脆いのか?
「確かにねぇー。どんどん食べてくと、クセになってくる不思議な味~。」
先程まで苦しそうだったリベも頑張って食べ進めている。そんな3人を微笑ましく見ながら、俺は最後の一品に取り掛かった。
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