提督はBarにいる。
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この人残念系美人だったらたまらんよね。
前書き
さて、前回が重めの話だったので、今回は思いっきりギャグ方面に振り子を振ります。お楽しみに。
ウチの鎮守府には残念系美人四天王、と陰で呼ばれている艦娘がいる。面子は、隼鷹・足柄・ビスマルク、そして残りの1人が……
「ちょっと提督、聞いてるんですかっ!?」
ダン!とカウンターに大ジョッキを叩き付けて、赤ら顔にビールの泡で髭を生やし、クダを巻いている重巡・高雄型の1番艦、高雄だ。彼女達は夜な夜な「居酒屋 鳳翔」に入り浸って酒盛りをし、やれ男にモテないだの、やれ職場に潤いが無いだの、なんとも男が聞いていても物悲しい喪女の叫びを上げてクダを巻いているらしい。
「あぁ、聞いてる聞いてる。……で、なんだっけ?」
「聞いてないじゃないですかぁ~っ‼……もう。だからぁ、足柄が私達女の友情を裏切ろうとしてるんですよぉ~っ‼」
普段から騒がしい呑みをしているらしい彼女だが、今日は一段と騒がしい。それもバカ騒ぎではなく泣き上戸の上に絡み酒。面倒臭い事この上ない。
なんでも、足柄が合コンや婚活パーティーに参加しても彼氏が出来ないから、お見合いをしようとしているらしい。
「私達、ちゃんと恋愛して彼氏作って、それから結婚しようね、って言ってたのにぃ~っ‼」
ウチの鎮守府に限らず、艦娘には人と何ら変わらない権利が与えられている。転職や(鎮守府によっては)副業、そして恋愛も自由だ。提督とケッコンカッコカリではなく本当に結婚した艦娘も少なくない。鎮守府の外に彼氏が居る艦娘もザラだ。
「ははは……、でも高雄位の美人なら、合コン行ったら引く手数多だろ?」
苦笑いしながら俺は高雄の飲み干したジョッキに再びビールを並々と注ぐ。これで大ジョッキ7杯目。そろそろ打ち止めにしてやらないと明日に響く……かと思ったが、確か高雄は非番だ。ならば、好きなだけ飲ませてやるか。
「合コン行ったって、本命が居るから本気になれるハズないじゃないですかっ。」
高雄はムスッとしたまま、ボソッと聞き取れるかどうかと言うギリギリの声量でそう言った。
「え?高雄本命居るのか?マジか‼誰だ誰だ、鎮守府の職員か?それとも外の奴か?」
俺も腐っても提督だ、そういう情報戦は制していないとマズイ。高雄は聞かれたと解ると顔を真っ赤にして俯いた。照れてる、モジモジしてる。めっちゃ可愛い。
「うぅ~……ち、鎮守府の中の人……です。」
「職場恋愛かぁ。……で?そいつイケメン?彼女いんの?」
高雄は人差し指を合わせてクリクリしながら、
「顔は……私的にはカッコいいかな、と……。か、彼女は……それっぽい人が……」
「あちゃぁ~…彼女持ちかぁ。そりゃ片想いじゃ辛ぇわな。」
「あ、あの……彼女っぽい人が…7人……」
は?あれ、高雄さん?今とんでもない事口走りませんでした?
「え?彼女7人て、お前それ浮気野郎じゃねぇか‼最低の野郎だな、そいつ……。てか、お前も何でそんな奴に惚れるかなぁ。」
やれやれと、俺は頭を抱えてしまった。幾ら自由とは言え、部下は部下だ。そんな最低の浮気野郎に、大切な部下を預ける訳にはいかない。だが、先ずは高雄の心を癒す事が先決だ。
「よし!今からは俺のオゴリだ!飲みたいだけ呑んで、そんな最低の野郎なんざ忘れちまえ‼」
「やっぱ解ってないよ、バカ……。」
高雄がなにかしら呟いたようだったが、今度は聞き取れなかった。
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