真田十勇士
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巻ノ六十六 暗転のはじまりその六
「何とか説得し」
「それぞれ百石か」
「それだけとなりました」
「成程のう、百石取りか」
「そうなりました」
「立派な旗本じゃな」
真田家のそれだとだ、大谷も言った。
「それだけの禄ならば」
「それで馬術の稽古もさせていますが」
「御主程達者ではないな」
「どの者も生粋の忍、馬よりもです」
「駆け、泳ぐ」
「そうしたものの方が得意です」
十勇士、彼等はというのだ。
「やはりあの者達は忍です」
「忍はあまり馬に乗らぬ」
山を駆けあらゆる場所に潜むものだ。それで彼等は馬に乗るよりも己の体術を備えているのである。それが忍なのだ。
「だから仕方ないな」
「このことは」
「そうじゃな、しかしな」
「それでよいですか」
「あの者達は馬術は程々でじゃ」
「忍術とそれぞれの術で働く」
「その方がよいな、では御主はあの者達と共にな」
その十勇士達とだ。
「武士の、義の道を歩め」
「さすれば」
「そして御主はおそらくないと思うが」
「まさか」
「うむ、関白様はやはりな」
「唐入りをされますか」
「明を攻めるおつもりじゃ」
このこともだ、大谷は幸村に話した。
「我等はそれをお止めするつもりじゃが」
「それは、ですか」
「出来そうもない、だからな」
「唐入りの為に戦になりますか」
「朝鮮からな」
「あの国は明の属国の一つです」
幸村は書で読み世に聞くことから述べた。
「ですからその際道を開けよと言われても」
「開ける筈がないな」
「どう考えても」
「だからまずはな」
「朝鮮で戦ですか」
「そうなるであろう」
大谷は幸村に冷静にだ、達観した様な調子で話した。
「あの国の軍勢は弱いというが明が出ればな」
「流石に容易ではありませぬな」
「明は帝が政を見なくなり国が乱れ衰えだしているというが」
「それでもあの国は大国、力があります」
「だから軍も多く武具もよい」
「激しい戦になりますな」
「今は天下の政の時であるが」
大谷は先日幸村に言ったことをここでも言った。
「しかしな」
「それは、ですな」
「出来そうもない」
「今は政をして天下を定めねばなりませぬが」
「関白様はそうお考えですか」
「それでは」
「致し方ない、戦になればな」
その時のこともだ、大谷は幸村に話した。
「わしは戦に勝つ為に働くことになる」
「関白様の家臣として」
「朝鮮に近い為西国の大名達が行く」
その戦にというのだ。
「だから御主はまず出ぬが」
「それでもですな」
「大きな戦が起こることは頭に入れておいて欲しい」
「さすれば」
「来年にも戦になる」
大谷はその時期のことも話した。
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