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エクリプス(機動戦士ガンダムSEED編 )

作者:cipher
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第36話 ゆれる世界(前編)

Side レドニル・キサカ

クサナギオペレータA
「ハルD、距離200、ハルC、距離230、軸線よろし。」

クサナギオペレータB
「ランデブー軸線、クリアー、アプローチ、そのまま。」

クサナギオペレータA
「調査値偏差を修正する。ナブコムをリンク、各員退去。」

クサナギオペレータB
「アプローチ、ファイナルフェイズ、ローカライズド。」

クサナギオペレータA
「確認した。全ステーション、結合ランチ、スタンバイ。」

キサカ
「クサナギのドッキング作業、完了した。」

マリュー
「カガリさんは?」

キサカ
「大丈夫だ。」

Sideout



Side マリュー・ラミアス

フラガ
「しかし、問題はこれからだな。」

マリュー
「ええ。」

キサカ
「クサナギは以前から、ヘリオポリスとの連絡用艦艇として使ってきたのだ。
モビルスーツの運用システムも、武装も、それなりに備えてはいるが、アークエンジェルほどではない。」

子供(リュウタ・シモンズ)
「ううわ…うわぁあ…う…」

フラガ
「五つのの区画に分けて、中心部だけを行き来させてるのか。効率のいいやり方だな。」

マリュー
「アークエンジェルと似ているわ。」

キサカ
「アークエンジェルが似ているのだ。親は同じモルゲンレーテだからな。宙域図を出してもらえるか?」

エリカ・シモンズ
「はい。」

フラガ
「エリカ・シモンズ主任!」

エリカ
「こんにちは、少佐。慣れない宇宙空間でのM1運用ですもの。私が居なくちゃしょうがないでしょ?」

キサカ
「現在我々が居るのはここだ。知っての通り、L5にはプラント、L3にはアルテミス。」

Sideout



Side カガリ・ユラ・アスハ

カガリ
「…ぅ…ハァ…」


~~回想~~

ウズミ
「今は父とは別れるが、お前は一人ではない。兄妹もおる。」

~~回想終了~~


キラ
「カガリ、大丈夫?」

カガリ
「ぁ…あー、今行く。」

マリュー
「L4のコロニー群へ?」

光輝
「L4宙域にエクリプスの移動基地がある。
L4のコロニー群は、開戦の頃から破損し、次々と放棄されて今までは無人だったが、
今はメンデルを除いて再建済みだ。」

フラガ
「何故メンデルは再建しなかった。」

光輝
「バイオハザードは知ってるな。メンデルを隠れ蓑にしている。」

キラ
「じゃぁ決まりですね。」

カガリ
「うん。」

フラガ
「しかし、本当にいいのか君は?」

アスラン
「ん?」

マリュー
「少佐…」

フラガ
「オーブでの経緯は俺だって見てるし、状況が状況だしな。着ている軍服に拘る気はないが…」

アスラン
「…」

フラガ
「だが俺達はこの先、状況次第では、ザフトと戦闘になることだってあるんだぜ。オーブの時とは違う。」

アスラン
「ぅ…」

フラガ
「そこまでの、覚悟はあるのか?君はパトリック・ザラの息子なんだろ?」

カガリ
「誰の子だって関係ないじゃないか!アスランは…」

フラガ
「軍人が自軍を抜けるってのは、君が思ってるより、ずっと大変なことなんだよ。
ましてやそのトップに居るのが、自分の父親じゃぁ。自軍の大儀を信じてなきゃ、戦争なんて出来ないんだ。
それがひっくり返るんだぞ、そう簡単に行くか?彼はキラと違って、ザフトの正規の軍人だろ?」

カガリ
「ぁ…」

アスラン
「…」

フラガ
「悪いんだけどな、一緒に戦うんなら、当てにしたい。いいのか?どうなんだ?」

アスラン
「オーブで、いや、プラントでも地球でも、見て聞いて、思ったことは沢山あります。
それが間違ってるのか正しいのか、何が解ったのか解っていないのか、それすら、今の俺にはよく分かりません。
ただ、自分が願っている世界は、あなた方と同じだと、今はそう感じています。」

フラガ
「ふ、しっかりしてるねぇ君は。キラとは大違いだ。」

キラ
「ぇ?昔からね。」

マリュー
「うふ。」

フラガ
「俺達が、オーブから託されたものは、大きいぜ。」

マリュー
「ええ。」

フラガ
「こんなたった2隻で、はっきり言って、ほとんど不可能に近い。」

マリュー
「そうね。」

フラガ
「でも、いいんだな?」

アスラン
「ぅ…」

カガリ
「ぁ…」

キラ
「信じましょう。小さくても強い灯は消えないんでしょ?」

フラガ、マリュー
「ふ。」

アスラン
「プラントにも同じように考えている人は居る。」

フラガ、マリュー
「ん?」

キラ
「ラクス?」

アスラン
「ああ。」

フラガ
「あのーピンクのお姫様?」

キラ
「アスランの婚約者だ。」

カガリ
「ぇ?」

光輝
「どこまで盛り上がるか、見ていたが…。
はははっ、腹が痛い…ぷっはー…。」

フラガ
「お前、話に参加してないのは、笑っていたな!」

光輝
「あまりにも真剣で…。
まあその話はチョット横に置いて。」

フラガ
「横に置くな。」

光輝
「脇、側、そば、手元、手の届くとこ…。
私はエクリプスの輸送船が合流次第、アスランとプラントに行ってくるよ。
移動基地への案内はルリがしてくれる。
その間に基地を満喫してくれ。
但しパイロット達は訓練を怠るなよ。」

フラガ
「ここで突っ込んだら負けなのか。」

マリュー
「少佐…」

Sideout



Side カガリ・ユラ・アスハ

カガリ
「キラ!
ちょっと…いいか?」

アスラン
「ぇ?ぁぁ…じゃ俺…」

カガリ
「ぅちょっちょっちょっ…」

アスラン
「ぉ?」

カガリ
「いいから…居ろって…いや居てくれ…。」

アスラン
「…」

キラ
「どうしたの?カガリ。」

カガリ
「ぅ…ぅ…これ…」

キラ
「ん?写真?誰の?」

カガリ
「…裏…。」

キラ
「え?カガリ…えっ!?」

写真の裏にはキラとカガリの名前があった。

アスラン
「ぁ…」

カガリ
「…クサナギが発進する時…お父様から、渡されたんだ…。」

キラ
「ぇ…」

カガリ
「お前は…一人じゃない…兄妹も居るって!」

キラ、アスラン
「あっ!」

カガリ
「ハァ…うっ…」

アスラン
「ぁぁ…ん…」

キラ
「ぁ…」

カガリ
「…どういうことだ…?」

キラ
「そんな…僕にだって…そんな…ぁぁ…」

カガリ
「ぅぅ…」

アスラン
「ぁっ…双子…?」

キラ
「とにかく…でも…これだけじゃぁ全然判んないよ。」

アスラン
「この赤ちゃんを抱いてる人は?」

カガリ
「…お前と兄妹って…じゃぁ私は…」

キラ、アスラン
「ぁ!」

アスラン
「ぁぁ…」

キラ
「今は考えてもしょうがないよ、カガリ。」

カガリ
「ぅ…」

キラ
「それにそうだとしても、カガリのお父さんは、ウズミさんだよ。」

カガリ
「キラ…」

光輝
「ヴィア・ヒビキさんだよ。」

キラ、カガリ、アスラン
「えっ!」

キラ
「知っているんですか?」

光輝
「キラ君の母親のカリダ・ヤマトさんのお姉さんだ。」

キラ
「母さんの…。」

アスラン
「カリダさんのお姉さん…。」

カガリ
「アスランも知っているのか?」

アスラン
「カリダさんは母の親友だった。」

光輝
「夫のユーレン・ヒビキさんとメンデルで働いていたがブルーコスモスの襲撃で二人とも生死不明となっている。
その襲撃の際、キラとカガリがメンデルにいる実妹夫婦であるヤマト夫妻に預けられ、
オーブへ亡命した。
しかしキラ君の両親はヤマト夫妻であり、カガリの父親はウズミ殿だ。
カガリ、言っておく。その写真を渡したのは真の父親だからだ。
カガリがどんな選択をしようと受け入れる覚悟がある証拠だ。
キラ君が優しいのも、カガリが真直ぐなのも、親譲りだ。
今は心の整理が付かなくてもいい。時間が解決してくれる。
自分が親になった時に、心から感謝できるさ、それまでは親に甘えなさい。
どうせ二人の性格なら我儘は言えないだろうからね。」

Sideout



Side マリュー・ラミアス

マリュー
「カガリさんも含めて、三人でプラントに行くのね。」

光輝
「カガリは気分転換を兼ねてラクス・クライン嬢に預けるけどね。
キサカさんには悪いけど、護衛はミスリルで行うよ。」

キサカ
「カガリの事を宜しくお願いします。」

フラガ
「あははは…、何だその髪の色は?」

光輝
「カガリの兄役だし、プラントでは有名人だからな。
人は目の色と髪の色だけでも印象が変わる。」

マリュー
「兄妹といえば、それらしくあるわね。」

Sideout



光輝とカガリ、アスランの三人はエクリプスの輸送船に乗り換えてプラントに向かった。



Side アスラン・ザラ

アスラン・ザラ
「それで最初は何をすればいいのですか?」

光輝
「モビルスーツの搬入だな。」

カガリ
「これ全部?」

光輝
「フリーダムをパクったから、その返礼だ。」

アスラン
「それにしても…」

光輝
「後は作戦通りに頼む。
こちらはラクス嬢にカガリを預けてくる。」

アスラン
「はい。」

Sideout



Side マリュー・ラミアス

マリュー
「そろそL4宙域だけど、コロニーの残骸しか見えないわね。」

ルリ
「残骸は全てダミーです。
もうすぐ誘導ビーコンが来ます。
後は自動操縦に切り替えて下さい。」

マリュー
「分かったわ。」

フラガ
「宇宙で重力を感じると違和感がなぁ。」

マリュー
「そのおかげで天使の湯に入れたじゃない。」

フラガ
「まさか宇宙で温泉に入るとは…。」

ナタル
「少佐の声が一番大きかったですよ。」

トノムラ
「おお天国だ!ってはしゃいでいましたね。」

フラガ
「てめぇはマードックと女湯を覗こうとしてただろ。」

ルリ
「コウキさん自慢の温泉です。そんな隙はありません。
モビルスーツで外から周り込まないとムリです。」

フラガ
「あっその…」

ルリ
「その手は使えません。入浴中はジャミングされます。」

フラガ
「無駄に高度な…。」

ルリ
「それがコウキ・クオリティーです。
そんな事より、誘導ビーコンをキャッチしました。」

マリュー
「自動操縦に切り替えて。」

ノイマン
「は!」

アークエンジェルは自動操縦で基地内部へ入っていく。

「「え!」」

マリュー
「これが移動基地…。」

フラガ
「思っていたよりでかいな。」

ルリ
「ここはまだドッグ内です。
基地内部は1万人規模です。
基地内部に入ったので、学習システムで基地の情報が解禁となりました。
上陸前に基地の情報を各自ロードして下さい。」

Sideout



Side アスラン・ザラ

アスランはプラントの工廠に来ていた。

ユーリ・アマルフィ(ニコルの父)
「これが見せたい物か?凄いなこれは…?」

アスラン
「いえ、これらではありませんが、先に説明します。
こちらの3機は地球軍の最新モビルスーツで、左から
GAT-X131 カラミティ
GAT-X252 フォビドゥン
GAT-X370 レイダー
で、火力支援、電撃侵攻、一撃離脱を目的に作られています。
3機ともトランスフェイズ装甲を持っています。
OSは強化人間専用です。」

ユーリ
「強化人間か、放送を見たが人間を道具としか見ていない所業だな。」

アスラン
「えー酷い物でした。」

ユーリ
「次はオーブ戦で戦っていたバルキリーだな。」

アスラン
「民間軍事プロバイダーS.M.Sで使用されていた物です。
バルキリー VF-1 リトルエンジェルです。
ターボファンジェットエンジンとバッテリー型の2機種です。」

ユーリ
「ターボファンジェットエンジンとはまた古臭いな。」

アスラン
「性能的にはターボファンジェットエンジンの方が上ですが、ジェット燃料がメタンから合成して作られたものです。
3機の設計図と仕様書及びバルキリーの諸元表がこちらです。」

ユーリ
「チョット待ってくれ、端末を持ってくる。」

ユーリは携帯端末を持ってきてアスランから貰ったデータチップを差し込んだ。

ユーリ
「設計図だけでなくて、トランスフェイズ装甲のデータまである。
バルキリーはジェット燃料の化学式まであるな。
これだけのデータを良く集めら…、いや機体まであるんだ。…」

アスラン
「正解です。ミスリルのコウキ・イチジョウ氏にフリーダムの返礼だと渡されました。
バルキリーの燃料と電磁伸縮炭素帯(カーボニック・アクチュエータ)を応用すれば、
モビルスーツに搭載出来ないが、応用範囲が広がると言われました。
電磁伸縮炭素帯は反応速度が非常に速いとの事です。
ただし、モビルスーツの様な重量物には適用できないとも…。」

ユーリ
「技術者としての挑戦状だな。」

アスラン
「いえ、情報撹乱です、きっと。」

ユーリ
「見せたい物はこれじゃないのか?」

アスラン
「いいえ、これはS.M.Sの活動が大気圏内だけと認識して貰う為によこした物です。」

ユーリ
「それだけの為に…。」

アスラン
「ええ、情報はどうせ洩れるし、隠したい技術はブラックボックス化するので、構わないと言っていました。
それで本題なのですが、こちらを見て下さい。」

ユーリ
「これはニュートロンジャマー・キャンセラーの設計図、いや少しちがうな。」

アスラン
「新ニュートロンジャマー・キャンセラーです。
これだと核暴発事故を防げるし、核ミサイルに転用しても弾頭が爆発しないそうです。
具体的に説明されましたが概要しか解りませんでした。
ただNジャマー・キャンセラーを作った責任者には設計図と解説書だけで理解できると、
渡されました。それ以上詳細に記すと仕組みが地球軍の技術者にバレると…。」

ユーリ
「うん、理論的には問題ないようだな。しかし実物があれば直ぐに証明出来るのに。」

アスラン
「あのー…実は、ジャスティスに既に搭載されています。」

ユーリ
「…え?」

アスラン
「すいません。ジャスティスの搭載されていたNジャマー・キャンセラーが新しい物に替えてあります。」

ユーリはアスランとジャスティスを交互に2度見た。

ユーリ
「おっほん。もう一聞くがこれは実用ベースな物なのかね。」

アスラン
「はい、交換後に30分フル稼働しました。」

ユーリ
「ではフリーダムの核エンジンの投棄された映像が流されたが、本当なのか?」

アスラン
「映像にはジャスティスの指だけしか映っていませんが、投棄に立ち会いました。」

ユーリ
「…あぁえと、フリーダムは武装を減らして、バッテリー型に改修されたのか?」

アスラン
「…あの、…その、ブラックボックスでしたが、小型化された熱核タービンエンジンです。」

ユーリ
「まて、その熱核タービンエンジンは戦艦に積んでいる熱核タービンエンジンか?」

アスラン
「その熱核タービンエンジンです。」

ユーリ
「…あーそうか、熱核タービンエンジンか…。それで納得できる。
ミスリルのバルキリーがあれだけの性能を持っていたのか、謎の一つが解明出来た。
電磁伸縮炭素帯(カーボニック・アクチュエータ)が反応速度の謎か。ハァ…」

アスラン
「それほどの謎でしたか。情報撹乱に利用する筈だ。
電磁流体発電の流体が超電導素材でチョットジャスティスの性能より上というのは、大した事ないですね。」

ユーリ
「まて、もう一度言ってくれ。」

アスラン
「電磁流体発電の流体が超電導素材でチョットジャスティスの性能より上です。」

ユーリは格納庫にあったバケツを蹴飛ばした。

アスラン
「あっこれは、情報攪乱の一貫でしたか?」

ユーリ
「ハァハァ…、良く聞け!超電導素材を流体化するのが難しいんだ。
その話が本当なら、チョットどころではない、倍の性能だ。ハァハァ…」

アスラン
「情報部で検証された内容に嘘は発見されていないですよね。」

ユーリ
「…大人気なかった。ああ、本当だ。
科学者や技術者達は、検証をそっちのけで騒いでいる。
中には技術革新だー!と叫んでいる遺伝子操作の学者までいる。
早く戦争が終わって欲しい、そうしないと過労死が出てしまう。」

光輝
(思わぬところで、タンクベッド睡眠の需要者発見、エクリプス社に民間用を報告と)

アスラン
「そこまでですか…。」

ユーリ
「そこまでだ。くっそー来世では、技術者にいやコーディネイターに生まれないぞ。」

Sideout



Side カガリ・ユラ・アスハ

カガリ
「あははは…、あー死ぬ。苦しい…ハァハァ…」

ラクス
「大丈夫ですか、みぃ水はこちらです。」

カガリ
「ゴク…、ハァ生き返った…。」

ラクス
「コウキさんが面白い中継をするって、出て行きましたけど工廠でしたね。」

カガリ
「モビルアーマー素材の釣り糸とモビルスーツの装甲素材の釣り針を置いて来たら、
ザフト軍の技術者は卒倒するな。」

ラクス
「まあ、面白そうな話ですね。聞かせて下さい。」

カガリ
「あの時は…」

後日、ラクスが光輝に貰った釣り糸と釣り針を技術者に見せ。
何人もの技術者が卒倒した。その中にはニコルの父、ユーリも含まれていた。

Sideout

 
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