衛宮士郎の新たなる道
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第18話 武神と軍神
前書き
赤き外套を纏う暗殺者のオリジナル保有スキルです。
火器精通。
あと、聖杯の寵愛を勝手に改造しました。
ご都合主義を通す為に。
時間を遡り、ヒカルの一行が拠点の船を出かけた所を見計らっていた赤き外套を纏う暗殺者は、躊躇なくに侵入して時限式の爆弾を仕掛けて行く。
「これで最後だ」
ヒカルたちの拠点はかなり頑丈な作りになっていて、そこらの小型爆弾ではびくともしないのだが、それを解決するにあたり暗殺者の固有スキルの一つが適している。
火器精通。
このスキルを持つものが生前扱った事がある火器が現代にて入手できれば、それをランクC以下の宝具として使用することが出来ると言うモノである。
しかし宝具扱いともなれば魔力の件で魔術師に負担を掛ける事となるが、もう一つの保有スキルでそれも解決している。
聖杯の寵愛。
このスキルは他者の幸運を奪い、自分の幸運値を跳ね上げると言うモノだが、マスターがアラヤの抑止力では無く人間である場合に限り、さらに効果が加えられる。
大気中に漂っているマナや地脈のマナを吸収して魔力と言う名の糧にすることが出来る。
これにより、マスター無しでも二日三日持つと言われるアーチャーの単独行動スキル以上の単独行動を可能としている。クラススキルでも付属されている単独行動も合わさり、マスター無しで最長で半月も現界し続けられるのだ。
ともあれ、作業を完了したのならば長居をする必要はない。
直に撤収して対象を確認した後に、時限式爆弾を発動させるだけの事。
そうして暗殺者は何時もの様に、狩りの準備を終えるのだった。
-Interlude-
時間を少し戻し、士郎を先に行かせた百代と言えば――――。
「そんな思わせぶりな姿で来たかと思えば、逃げるだけか!」
『攻撃を当てるのが下手な色ボケ武神にはその様にしか見えないだけだ』
「言ってろッ!」
現在攻めは百代、守りはラミーと言った戦況で、元いた所から移動しながら戦っていた。
「躱すしか能がないのか!」
『貴様こそ、先程から川神流特有の派手な技を封じての攻撃ばかりでらしくないな。何か事情でもあるのかな?あの武神とあろうものが』
「ッ!」
今いる住宅街で川神流の派手な技を使えば、周囲にどれだけの被害を齎すかなど容易に想像できた。
それを出来れば見抜かれたくなかったのにと歯噛みする――――いや、だったらなんでさっきから避けてばかりなんだ?と百代が疑問に思っていると、漸く逃げに徹していたラミーの足が止まった。
「ここは・・・」
『人気も無く、住宅からも離れた場所だ。此処なら思い切り派手な技を使えるだろ?』
「・・・・・・何のつもりだ?」
『それは当然格上から格下相手への気遣いに決まっているだろ?私に手加減しても、当たる当たらない以前の問題になるだろうからな!』
こと戦闘に関して自分の実力を知っている上でここまで見下される台詞など、百代は言われた事が無かった為についにキレた。
心は冷めて冷酷に、激昂を力に変換して、それこそ敵を滅ぼす拳を振るいに行く。
「川神流――――富士砕、きっ!?」
百代の富士砕きは今までのどの富士砕きよりもフォームが美しく、力は一切の加減のない威力だった――――が、決まらずに百代は驚いた。
正直認めたくないが、相手は今までにない強者だからこそ防がれる事もあるだろう。躱される事もあるだろう。だがこの怪人はあろう事か自分と同じ川神流のそれも富士砕きで応戦せて来たのだ。
「クッ!?」
拳と拳が正面から衝突しあい、百代だけが衝撃に耐えきれず後退するも、瞬時に自分の体を止めて大技を打ち出す。
「川神流――――」
『フッ』
「――――致死蛍っ!?」
またも同じ川神流の技で正面衝突し、百代が後退する。
「お、前っ!如何して川神流の技が使えるっ!!」
『何の話だか?』
「惚ける気か!」
再び正拳の連打。
その一発一発が大砲クラスであり、掠めただけでも大ダメージだが、ラミーはそれらすべてを一切無駄なく最小限の動きだけで躱し続ける。
だがその連打は単なる囮。
「ラァッ!」
『ほぉ?』
百代は正拳の連打を囮にして、その体勢から器用にラミーを蹴り上げる。
しかしラミーも瞬時に蹴り上げに気付いて踏みつけるように蹴りを止めるが、百代は強引に力任せにそのままラミーを宙に打ち上げた。
『ごり押しとは、武神の名に恥じる蹴りだな』
「負け惜しみだな、コスプレ!川神流――――」
いつの間にか溜めていた膨大な気、が光輝いたまま形となって百代の右手に収束されて、それを宙に投げ出されているラミーに撃ち放つ。
「――――星殺しぃいいいいいいいぃいいいいっっ!!!」
過去最大出力の極太ビームは、ラミー目掛けて一直線に貫いて行く。
だが――――。
『こんなものか』
「はぁああっ!?」
ラミーは極太ビームを蹴りで、あさっての空へ打ち上げた。
そのせいで積もっていた雲が霧散して晴れやかな空へと変わった。
「クッソォオオオ!!」
あれで決まったと思われた一撃を捌かれて悔しそうに吠えながら、百代は自分も宙に舞い上がりラミーにまた連打を繰り出していく。
しかし宙だと言うのにラミーはそれを躱して行く。
「何故攻撃してこない!」
『だから手加減を・・・』
「躱すしか能がないのかっ」
『ふむ・・・・・・では、お言葉に甘えて』
ラミーはマントの中から左手を徐に出して、掴むように手を曲げる形を取ったその時――――。
(かかった!)
「川神流、人間爆弾っ!!」
挑発する前に仕込んでいた全身に張り巡らせた気を暴発させ、て自分もろとも超近距離にいる相手にダメージを与える諸刃の剣を放った。
だが百代には瞬間回復が二八回まで使えるので、その内の一度目を使えば済む事。
そうして即瞬間回復しようとした時に、煙の中から現れた左手が百代の首を掴んだ。
『自爆ご苦労』
「なっ!?無き、ぐぁああああ!!?」
無傷どころかマントまで燃えずに現れたラミーに驚く暇も無く、浴びせられた紫色の電撃を全身に巡らせられるようにダメージを受ける。
『フン』
「がはっ!」
まるでボロ雑巾のように地面に向けて投げ捨てられる百代だが、直に立ち上がろうとすると同時に瞬間回復を掛けようとするも発動しなかった。
「なっ、何でぐはっ!?」
また驚く暇も与えられず、上から着地したラミーの片足が百代の背中目掛けて叩き付けられたのである。
「ぉ、前っ!」
『まだ睨み付ける元気があるとはな。そのタフさだけは認めてやるが、それだけ、だっ』
「ぐぁああああああああああ!!!」
今度は足から百代に紫電を流す。
瞬間回復していないでボロ雑巾状態の百代は、相当な激痛に意識を手放しかける。
だがそこへ、士郎の呼んだ援軍が漸く到着した。
「石蕗流、閃っ!」
『おっと』
和成がラミーの前に突然現れて、一文字切りをするも避けられる。
不意打ちのお返しにと拳を叩き込もうとするが、その瞬間に体が動かなくなる。
(これは結界。体を包んで身動きさせずらくしたか)
「石蕗流、貫!」
このタイミングを判っていたように、和成は刺突で結界ごとラミーを突き放つ。
おかげでラミーは軽く吹き飛んでいったが、当然のようにきれいに着地する。
「大丈夫か?百代嬢ちゃん!」
「よ、しお・・・かさん・・・?」
「俺を認識できてるな?よし、逃げるぞ――――って、逃がしてくれるわけ無ぇか」
ぼろぼろの百代をお姫様抱っこ状態で担ぐ利信は、自分達を俯瞰するように見ているラミーを睨む。
だが驚く事に、ラミーの言葉は利信の考えとは真逆だった。
『構わんぞ?』
「「何!?」」
『時間も稼いだ。やりたい事もやれた。私としてはもう十分、そこの身の程知らずのボロ雑巾を見逃してもいい結果だと言ったんだ。が、その前に・・・』
人差し指から僅かな紫電を百代に当てる。
「がっ!?」
「てめっ!」
『別に止めを刺したわけじゃない。まあ、信じるか否かは任せるが』
言いたい事は言い終えた様で、利信と和成の殺意の籠った眼光を黙殺した上で背を向ける。
『ああ、それと。そこのボロ雑巾のためにと、けじめを付けさせると掛かってくるのなら構わんぞ?容赦なく嬲り殺してやろう』
「クっ!」
「・・・・・・・・・・・・」
結局2人は、悪びれもせずに去って行く怪人の背を睨み付けることしか出来なかった。
そして百代を抱えての藤村邸への帰還途中、七浜方面から爆発音を聞くのだった。
-Interlude-
冬馬達が帰った夕方頃、藤村邸ではお馴染の幹部の面々にサーヴァント2体にスカサハと士郎、そして連絡を聞いてきた鉄心が人払いをした部屋で緊急会議をしていた。
「まさかモモがあそこまで痛みつけられるとはのぉ」
「すみません。俺の判断ミスです。俺が居れば百代をあんなに酷い目に合わせる事なんて無かったのに・・・・・・」
「そ」
「それは驕りだぞ、士郎。お前が残っていようと百代ちゃんが今の結果に辿り着かなかったと言う保証はないんじゃ・・・・・・・・・ん?如何した、鉄?」
「何でもないわい」
鉄心の言いたい事を雷画が取ってしまった格好となり、軽く拗ねる。
「それに加えて、お前が居ても同じ結果になっていたかもしれんぞ?」
「理由を聞いても・・・?」
「お前たちが遭遇した相手が軍神だと言う可能性が高いからじゃ」
「なっ!あれがっ!?」
「手を抜いた上で百代ちゃんを圧倒できる実力に加えて、紫色の仮面に鎧にトドメは紫電を操ると言うなら、まず間違いなくの」
話の内容についていけないエジソンとシーマは、スカサハの説明を聞いている。
鍛錬マニアにしてバトルジャンキーの毛があるからなのか、スカサハは士郎の知らない内に知っていた様だ。
「何でそんな超大物がこの町に居るんだ!しかもあのタイミングで立ちはだかるなんてっ!」
「それは判らぬが、今回の騒動を起こしている者達と繋がっている可能性が高いじゃろうな。それで和成、調べはついたのか?」
「はい。シーマ殿が救出した少女の証言などの裏を取った結果、今回少女達を襲撃している天音ヒカルは操られているワケでは無く、自分の意思で動いていると思われます。動機については苛められたことによる復讐だと思われます」
「復讐・・・」
この町に騒動を起こしている主犯たちであるとは言え、復讐と言う犯行理由を聞いてしまえば思わずやるせない気持ちが湧き上がってくるのを感じる。
特に士郎とシーマは中でも飛びぬけている。表情を露骨に顰めているのが良い証拠と言えた。
「それにしてもその少女、報告書で見る限り魔術師でもないのにどのようにしてサーヴァントを現界し続けられておるのかな?」
報告書を手に取っているエジソンが質問をする。
2体のサーヴァントの内の1体の真名については、既に少女自身が漏らしたことにより判別されており、アステリオスと聞いた時戦々恐々としたが逆に肝が据わったのだ。
その為、エジソンが質問として聞くのが代わりとしてのそれに過ぎなかった。
「それは当然自分の魂魄のエネルギーと標的の少女達でしょう。前者については我々も知らない何かしらの方法で、現界維持を保てる術式を使っているのでしょうが」
「そうだとしてもこの少女の苦痛は尋常では無いのでは?到底ただの一般人だった少女が決断できるものでは無いように思えるがね?」
「それを彼女から“先生”と呼ばれており、シーマから報告に上がったもう1体のサーヴァントが誑かしたか何かしたんだろう。恐らく復讐心を餌に・・・」
「ド外道めっ・・・!!」
「下種がっ・・・!!」
矢張り露骨に顔を顰めて怒りに打ち震えるのは士郎とシーマの2人だ。
衛宮士郎とシーマであるならば当然の反応と言えた。
「そ奴は矢張り、街全体が眠った夜に士郎とやりあったキャスターと思しきサーヴァントの仲間と思うか?」
「推測でしかありませんがそうなのでしょう。そして問題は彼らの目的です。彼らが何を目的としてこの町に来ているのか、今のところ推測も立てられませんので。――――まさか本当に少女の復讐の支援が目的とは思えませんしね」
「ふむ。それで奴らの拠点は何所にあるか掴めたか?」
「申し訳ないのですが、それはまだです」
いったい彼らは今どこに居るのか、それさえ知ることが出来れば仕掛けようもある所なのだがと言うのがほぼ全員の共通認識だった。
「ところで百代の容態は如何なんですか?瞬間回復できずにボロボロだったそうですが・・・」
「安心せい。いざ百代が暴走した時に封じ込める極技に龍封穴と言うのがあるんじゃが、それを解く時の技の応用で何とかなったわい」
「そうですか・・・」
士郎は龍封穴について特に聞こうとしなかった。川神院の事情を察したまでだ。
そして鉄心は士郎に説明し終えてからも、胸中は困惑で埋まっていた。
(応用などと説明したが、効果だけなら間違いなく百代に掛けられていた技は龍封穴そのもの。じゃが龍封穴は、儂等川神一族や歴代の師範代クラス以上の者達しか知られていない程の秘中の秘。それを何故軍神は使えたんじゃ?)
その理由の真実は恐らく仮面の奥に隠されていると思うと、不気味過ぎて仕方なく思えるのだった。
-Interlude-
ほぼ同時刻。
モロは丸一日かけてヒカルを探していたが、結局手がかり一つ掴めずの帰宅途中だった。
「天谷さん・・・何所に行ったんだろう」
もう正直自分1人の力じゃ限界もあるし、彼女の病状も考えれば一刻を争う。
「・・・決めた。こんな時間だけど風間ファミリーに相談しよう・・・・・・?」
そこで踵を返して島津寮へ行こうと、移動方向を変えようとしたところで橋の下の川辺に誰かが倒れているのを視界に収めた。
「誰だろう・・・・・・・・・って、アレはまさか!?」
病衣に黒髪の特徴にピンと着たモロは、急いで駆け寄る。
そしてやはり――――。
「天谷さん!?」
探していた行方不明の少女で、気絶している天谷ヒカルを偶然にも遂に見つけるのだった。
-Interlude-
日も暮れた頃。
ある郊外の崖付近にラミーとはまた別の怪人が来ていた。
「この周辺の“救済”はあらかた終えたと言うのに、また来る事になろうとはな」
それは頭の先からつま先まで黒一色の衣服を身に纏ったコズモルインの首領、黒子であった。
「歯がゆいな。そこに救うべき対象がいると知り得ながら手が出せないとは」
この怪人は衛宮邸の方角へ向いていた。
だが今回彼が来た目的はスカサハでは無い。
「憂鬱だな。何故救い求めぬ者を手にかけなければならんのだ」
トワイスの命令により、全世界でもトップクラスのイレギュラーが予定よりも早く、そして再び川神の地に降り立つのだった。
後書き
今思えば、性格上シーマが士郎に召喚されても不思議は無かった。
2人とも正義感強いですからね(正確には士郎は少し違うけど)
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