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Three Roses

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第二十二話 大学その八

 マリーが大学と図書館のことを言ったがだ、彼女はこう王に言ったのだった。
「私もマリー王女の考えに賛成です」
「そなたもか」
「はい」
 こう答えた、王に対して。
「大学を大いに増やし図書館を置き」
「様々な学問と古今東西の書を集める」
「そうしましょう」
「そなたもそう言うのならだ」
 王は旧教に強いこだわりを持つマイラが柔軟な言葉を言ったことに内心戸惑いも感じたがそれでもと思い言った。
「その様にな」
「されますか」
「うむ」
 こうマイラに答えた。
「大学を増やし巨大な図書館ももうけ」
「そして」
「様々な学者を集め」
「書も」
「古今東西の書を集めよう」
 王も決断を下した。
「そうしよう、そしてだ」
「そして、ですか」
「まだ焚書の話があるが」
 法皇庁がやることだ、異教の書や異端の書だと言ってそうして彼等にとって好ましくない書を焼いているのだ。
「それは法によって禁じる」
「焚書をですか」
「そうだ、有害な書もある」
 悪書、それもというのだ。
「それは最初から入れず発禁ともするが」
「それでもですか
「焚書はしない」
 王自身で決めたことだった、マイラにも話した。
「このことは法として定めよう」
「よいことかと」 
 あえてだった、焚書は法皇庁が行うことで法皇庁のそうした統制の為の政策を好まない太子が最初に王に賛同した。
「そのことは」
「太子もそう言われるか」
「書は読む為のものです」
 己の考え、法皇庁の影響の排除を考えていることを美事で隠して答えた。
「暖炉の薪ではありません」
「だからだな」
「はい、いらぬ本は発禁にし」
「最初からだな」
「国に入れなければよいだけのこと」
 こう言うのだった。
「それだけですので」
「太子も余と同じ考えか」
「はい」
 まさしくと答えた太子だった。
「是非共です」
「焚書はだな」
「しないで置きましょう」
「焚書は、だな」
「はい」
 また答えた太子だった。
「可能な限り広く学び」
「それを国の力とすることだな」
「ですから」
 それでというのだ。
「そうしていきましょう」
「その通りだな」
「私もそう思います」 
 太子に続いてマリーも応えた、太子に先を越されたがそれは気にしてはいなかった。
「やはり」
「焚書はだな」
「そうした無闇に書を焼こうとも」
 そうしてもというのだ。
「心は残ります」
「問題は心だな」
「はい、ですから」
「書を焼くことには然程意味はないな」
「むしろ悪書と善書を読み比べ」
 マリーは確かな目で王に述べた。 
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