Three Roses
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第二十二話 大学その五
「それが特に民や国を脅かさずむしろ役に立つのならな」
「見て見ぬふりをして」
「学ばせればいい」
「太子はその様にお考えですか」
「そちらについても」
「異教徒達は錬金術を禁じてはいない」
彼等はそれは一切禁じていない、むしろ奨励さえしている。そこから金が生まれればいいことだという考えなのだ。
「そしてその錬金術から金が出たという噂もあるが」
「賢者の石とやらにより」
オズワルド公が言った。
「それは私も聞いたことがありますが」
「あくまで噂だ」
「では」
「真実はわからない」
この話のというのだ。
「しかしだ」
「それでもですか」
「金を生み出す最中に興味深い発見が多く為されていてだ」
「その発見がですか」
「国の役に立つものも出て来ている」
こう言うのだった。
「だからだ」
「錬金術もまた」
「帝国では実際にそうしている」
異教徒の帝国の様に奨励とまではいかないがだ。
「見て見ぬふりをし帝室で学者ということにしてだ」
「お抱えにもですか」
「している、彼等は害があるどころかだ」
「国に対してですか」
「益をもたらす者達だ、だからだ」
「それで、ですか」
「私としてはだ」
この国においてもというのだ。
「錬金術は禁じない、そしてだ」
「魔術も」
今度は司教が言ってきた。
「こちらもですか」
「人の益になる魔術ならばだ」
「害さないですか」
「そうだ、しかも異端審問の者達が言う魔女はだ」
世に災いをもたらすことを無上の喜びとするという彼等はというにだ。
「まことにいるとする」
「それならば、ですね」
「簡単に見つかり捕まるか」
「その魔術で逃れると」
「天候を変えて箒で空を飛び小さな獣にも姿を変えられる」
「それならば」
「周りを霧で包むなりその箒で飛んだり鼠にもなってだ」
その様にして、というのだ。
「逃げるか隠れる筈だ」
「はい、それは」
「卿もそう思うな」
「彼等が言う魔術が魔女達にあれば」
ここで司教が言う魔女とは異端審問で捕まってきた者達だ、激しい拷問を受けてそのうえで『魔術』を告白しているが。
「その告白した魔術を使えば」
「簡単にだな」
「逃げられます」
「私もそう思う、そこまで邪な魔術はだ」
「そもそもですか」
「持っている者がういればな」
そもそもというのだ。
「我々の手ではどうしようもない、そしてだ」
「人の益をなる魔術を使うのなら」
「何を捕まえる必要がある」
今の言葉は素っ気なくさえあった。
「そのままだ」
「人の役に立ってもらう」
「それだけだ、錬金術も魔術もそうでだ」
「他の法皇庁が嫌う学問も」
「邪魔をしない」
それを学ぶことをというのだ。
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