Three Roses
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第二十二話 大学その二
しかしだ、それと共に言うのだった。
「そしてそこで正しき学問を学ぶべきです」
「そうですか」
「はい、学問はです」
まさにというのだった。
「正しきものでなければならないので」
「学問は、ですか」
「そして学問を教える教授達も」
その彼等もというのだ。
「人を選ぶべきです」
「そうお考えですか」
「あくまで、信仰に反する学問は」
そこには断固たるものがあった。
「見てもなりません」
「国家にとって有益なものは」
「有益であるものは正しい信仰です」
「それのみですか」
「全てその中にあります」
マリーを見据えてだ、マイラは毅然とした声で答えた。
「そこにないのならばです」
「国家にとってもですか」
「有益である筈がないのです」
「だからこそ」
「大学ではです」
「正しき信仰ですか」
「それに基づくもののみ」
微動だにしない、マイラはこう言って退かなかった。それでマリーもこれ以上言うことは出来ずだった。そして。
話題を変えた、今度の話題はというと。
「ところで近頃ですが」
「何か」
「セーラ、マリアからの文は」
「ありますが」
こう返したマイラだった。
「ですが深くは読んでいません」
「読んでは下さっていますか」
「しかし返事はあまりしていません」
「それはどうしてですか?」
「二人共私のことはあまり思っていないからです」
だからというのだ。
「儀礼のうえでのことなので」
「だからですか」
「そうしています」
深く読まず返事の文もあまり出してはいないというのだ。
「私は」
「そうなのですか」
「はい、むしろです」
「二人からの文は」
「歓迎していません」
「何故、でしょうか」
「私は貴女達とは違います」
マリーに対しても言うのだった。
「王家の者であっても側室の子です」
「だからですか」
「貴女達とは違うのですから」
劣っているというのだ、マイラはそう思っている。それでこう言うのだ。
「ですから」
「そうですか」
「その私がどうして貴女達と同じなのか」
「では」
「私にはそうする価値がありません」
拒む、そうした言葉だった。それも心から。
そうしてだ、マイラはマリーにさらに話した。
「貴女も文はいいです」
「そうですか」
「はい、こうして会うだけで」
時折というのだ。
「私には過ぎたことなのですから」
「それは決して」
「事実です」
こう言って引かないマイラだった、このことでも揺ぎがなかった。
「これだけでいいです」
「そうですか」
マリーはこれ以上何も言えなかった、そしてこの時の二人の話を聞いてだった。太子はオズワルド公と司教に難しい顔で言った。
「こだわり過ぎている」
「信仰にも出自にもですね」
「どちらにも」
「そうだ、あまりにもな」
こう言うのだった、密室の中で。
ページ上へ戻る