英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~(閃Ⅱ篇)
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第245話
前書き
更新が遅くなってしまい申し訳ありません!!そのお詫びになるかわかりませんが今回の話はいつもの倍以上の長さにしてあります。
頂上に向かって先を進み続けていたリィン達が再び広間に出た。
~真・煌魔城~
「また広間に出たね……」
「今までのパターンを考えたら間違いなく”誰かが”待ち構えているだろうね。」
「今度は一体誰がわたし達の道を阻むのかな……?」
再び広間に出た事で今までのように何者かが自分達の道を阻むことを予想していたエリオットは不安そうな表情をし、アンゼリカは真剣な表情で考え込み、トワは周囲を見回していた。
「それよりも一体いつになったら頂上につくんだよ~。」
「今までの道のりを考えれば恐らく次か、次の昇降機の行き先が屋上だと思うのですが………」
疲れた表情で呟いたミリアムの不満に対してクレア大尉は考え込みながら答え
「………………」
「?どうしたんだ、ユーシス。」
辛そうな表情で黙り込んでいるユーシスの様子に気づいたガイウスは不思議そうな表情で訊ねた。
「……今までの道のりで俺達の道を阻もうとした者達の中に兄上がいなかったからな。それを考えるとそろそろ兄上が出てきてもおかしくない。」
「あ………」
「……そう言えば未だ奴の姿は見ていないな。」
「確かにそうじゃな……”エレボニア存亡会議”でオズボーンが亡霊と化した奴がオズボーンの下にいる事も明言していたからな……――――!」
ユーシスの推測を聞いたアルフィンは呆けた声を出し、ゼルギウスの言葉に頷いたリフィアは何かに気づくと血相を変え
「この気配は……」
「冥き途に………行きそこねた人……一人………」
「―――そこにいるのはわかっている。大人しく姿を現せ。」
「フッ、やはり卿らに奇襲は無理であったか。」
リタは真剣な表情をし、ナベリウスの言葉に続くようにセリカが正面を見つめて呟くとセリカが見つめていた先にリィン達の道を阻むかのようにルーファスの亡霊が姿を現した!
「あ……っ!」
「ルーファスさん………」
「……兄上………」
「あの人がユーシスのお兄さんの……」
ルーファスの登場にアリサは声を上げ、リィンとユーシスは複雑そうな表情でルーファスを見つめ、ゲルドは目を丸くしてルーファスを見つめ
「”鉄血の子供達”の”筆頭”であり、宰相殿にとって”切り札”でもあった君が出て来たという事はゴールも近いと判断していいのかな?」
「ふふっ、さすがオリヴァルト殿下。見事な慧眼です。殿下の推測通りこの昇降機を昇った先がこの”真・煌魔城”の最上層であり、その終点にある昇降機が閣下が待つ屋上へと通じています。」
「って事はお前さんが”最後の障害”って事か……」
真剣な表情をしたオリヴァルト皇子の問いかけにルーファスは感心した様子で答え、ルーファスの答えを聞いたトヴァルは警戒した様子でルーファスを見つめた。するとその時ユーシスが一歩前に出てルーファスに問いかけた。
「……兄上。エリゼから受け取った兄上の遺書で兄上が本当にしたかった事等が書かれてありましたが……今一度聞きます。本当にあのような夢物語を実現できると思っていたのですか?」
「”夢物語”……?」
「……一体どのような事が書かれていたのでしょうか……?」
ルーファスへの問いかけを聞いたガイウスは不思議そうな表情をし、エリスはユーシスを見つめて尋ねた。
「……エレボニアがゼムリア―――いや、異世界を含めた全ての地の覇権を握り、平等な世界を創る事……それが”鉄血宰相”が最終目標としていた事で、エレボニアから貴族制度を廃止する事こそがエレボニアを繁栄させられると思っていた兄上が”鉄血宰相”の最終目標を知り、”鉄血宰相”に忠誠を誓ったとの事だ。」
そしてユーシスは驚愕の事実を口にした!
「あ、あ、あんですって~!?」
「それじゃあオズボーン元宰相はゼムリア大陸どころか異世界も支配して身分制度を廃止するつもりだったのですか!?」
ユーシスの話を聞いたエステルとセレーネはそれぞれ驚き
「……ありえません。そのような事、絶対に不可能です。」
「……ゼムリア大陸はともかく神々が現存し、”魔神”や”神格者”等世界中に多くの超越者や人間と比べると遥かに様々な能力が高い多くの異種族達がいるディル・リフィーナ全土を支配する等、妄言の類としか思えませんわ。」
「まさに”夢物語”ね。」
「そのような無謀な事、”結社”でも実行しないぞ。」
「もはや呆れを通り越して感心に値するわね。」
エリゼとシグルーン、セリーヌ、レーヴェとロカはそれぞれ呆れた表情で呟いた。
「フッ、オズボーン宰相閣下のお考えこそが腐敗した貴族達によって衰えていくエレボニアを繁栄に導き、年々落ち気味になっていたエレボニア皇家の権威を取り戻せる。エレボニア皇家に仕えし帝国貴族として……そして祖国を愛する民の一人として、私はオズボーン宰相閣下に忠誠を誓った。」
「!!………兄上……」
「ちょ、ちょっと待ってください!それだとおかしくありませんか!?今の話を信じるのならばもしオズボーン元宰相の目的が達成できれば、ルーファスさんの実家―――”アルバレア公爵家”も取り潰されてルーファスさんも”平民”になるんですよ!?なのにどうしてオズボーン元宰相に……」
ルーファスの答えを聞いたユーシスは目を見開いた後辛そうな表情で肩を落とし、マキアスは信じられない表情で尋ねた。
「私は真に祖国を想う帝国貴族として、貴族こそがエレボニア皇家にとって邪魔な存在でエレボニアを衰退させる害悪で、排除すべきだと思っている。現に”四大名門”を始めとした多くの帝国貴族達は不敬にもユーゲント皇帝陛下を始めとしたエレボニア皇家に弓を引き、内戦を引き起こした。」
「ルーファスさん………」
「「……………」」
ルーファスの説明を聞いたアルフィンは複雑そうな表情をし、オリヴァルト皇子とミュラー少佐は重々しい様子を纏って黙り込んでいた。
「その内戦を引き起こした貴族連合の”総参謀”を務めていたくせに、よくそんな事が言えるよね~。」
「あれは内戦後の正規軍、領邦軍の被害を最小限に抑える為にカイエン公の信頼を得て、”総参謀”を務めていたのだ。―――”激動の時代”に備えてね。最もメンフィルの予想外の介入の速さによって、もはや不可能となってしまったがね。まさか父の独断とはいえ辺境を襲撃しただけであんな短期間で戦争に踏み切るとは、計算外だった。プリネ姫達の留学やメンフィルの皇族達の一部がオリヴァルト殿下と親しい件を考えると、もう少し猶予はあると思ったのだがね。」
「………………」
「ひ、酷い……!」
「それが貴方の”本音”なのですね……!」
「やはり貴様は余達メンフィルに裁かれて当然の存在だったな。」
ミリアムの疑問に対して答えたルーファスの話を聞いたエリスは複雑そうな表情をし、セレーネとツーヤ、リフィアは怒りの表情でルーファスを見つめ
「兄上………」
「だったらどうして誘拐したエリスをすぐに解放してメンフィルに返還しなかったのですか!?メンフィルがエレボニアとの戦争を決めるまでにエレボニアに対して最も求めていた事はエリスの返還です!すぐにエリスを解放して俺達シュバルツァー家の元に――――メンフィルに返還すれば、メンフィルもエレボニアとの戦争を考え直してくれたかもしれなかったのに、どうしてそれをしなかったのですか!?」
「リィン…………」
ユーシスは辛そうな表情をし、怒りの表情でルーファスに問いかけるリィンをガイウスは静かな表情で見つめていた。
「君達には申し訳ないと思ったが、エリス嬢を返還した所でメンフィルの怒りが収まるとはとても思えなくてね。彼女をこちらで”保護”している限り、メンフィルも早まった事はしないと思っていたのだよ。その証拠に彼女には陛下達同様最高級の待遇で過ごしてもらった。」
「……やっぱり彼女はメンフィルへの”人質”としての価値もあったから、解放するつもりはなかったのか……」
「家族と離れ離れにして、軟禁している時点で最高級の待遇じゃないよ……!」
「ふざけないで下さい!兄様達と離れ離れにされた日々は私にとって最悪の日々でした!」
ルーファスの話を聞いたヨシュアは複雑そうな表情でエリスを見つめながら呟き、エリオットは不安そうな表情で反論し、エリスは怒りの表情で反論し
「やれやれ……まさかここまで愚かだったとはな。」
「―――ルーファス・アルバレア。もし内戦終結までメンフィルがエレボニアとの戦争を踏み切らなかった際はユミル襲撃やエリス嬢誘拐など貴族連合が犯した数々の愚行によって燃え上がった我等メンフィルの怒りの焔をどのようにして収めるつもりだったのだ?」
レーヴェは呆れた表情をし、ゼルギウスは厳しい表情でルーファスを見つめて問いかけた。
「当然猟兵達にユミル襲撃を指示した父の身柄をメンフィルに引き渡す事もそうだがエリス嬢誘拐を指示した”蒼の深淵”やカイエン公、誘拐を実行した”黒兎”の身柄もメンフィルに引き渡し、アルバレア公爵家が納めているクロイツェン州のおよそ半分の領地の統治権をメンフィルに贈与する事で収めるつもりだった。勿論”被害者”であるエリス嬢自身やシュバルツァー卿達に対しても賠償や謝罪をするつもりだったし、後はアルフィン殿下とリィン君を婚約を提案し、二人が将来結ばれる事も和解の理由にするつもりだった。特に最も迷惑をかけた被害者であるエリス嬢に対しては公爵家ができる最大限の賠償としてバリアハートのアルバレア公爵家が所有していた城館の所有権を贈与するつもりだった。無論城館を管理する使用人達の給与はアルバレア公爵家が支払うという形でな。」
「……ッ!」
「と言う事は貴方は最初から私達をメンフィルと和解する為の”生贄”にするつもりだったのね……!」
「それに実の父親であるアルバレア公爵もメンフィルへの”生贄”にするつもりだったんだ。」
「ハッ、あの”鉄血”の忠臣だけあって、考えている事もあの野郎と大して変わらねぇな。」
「――あまりにも愚かな計画じゃな。リウイもそうじゃが余達マーシルン皇家は”その程度”の償いで怒りの矛先を収める程甘くはない。」
(どの道わたしはメンフィルによって殺されていたのですね……)
(アルティナさん…………)
ルーファスの口から語られた驚愕の事実を聞いたユーシスは唇を噛みしめ、クロチルダは厳しい表情でルーファスを睨み、フィーは真剣な表情でルーファスを見つめ、クロウは鼻を鳴らした後不愉快そうな表情をし、リフィアは呆れた表情で呟き、、複雑そうな表情をしているアルティナの念話を聞いたメサイアは心配そうな表情をした。
「「!!」」
「え………」
「ええっ!?ど、どうしてメンフィルとの和解の為にリィンとアルフィン殿下を結婚させる事まで考えていたのですか!?」
一方リィンとオリヴァルト皇子は目を見開き、アルフィンは呆けた声を出し、エリオットは驚きの表情で尋ねた。
「”夏至祭”の件を考えるとメンフィルは次期メンフィル皇帝たるリフィア皇女殿下の専属侍女長であるエリゼ嬢を眷顧している事はわかっていた。そしてエリゼ嬢は兄君であるリィン君ととても親しい仲だ。そのリィン君にリフィア皇女殿下にメンフィルの怒りを収めてくれるようにとりなしてくれとエリゼ嬢に頼むように嘆願すれば、メンフィルとの和解は可能だ。アルフィン皇女殿下はエリス嬢の件と父の暴走によるユミル襲撃の件に対するリィン君への賠償であると同時にメンフィルに対する”詫び”の意味もある。アルフィン皇女殿下は君達も知っての通り皇位継承権をお持ちだ。エレボニアの皇位継承権を持つ者を手に入れる事はメンフィルにとっても”利”にはなるだろうし、メンフィルが眷顧しているエリゼ嬢の家柄の”箔”も上げる事もできるしね。それにリィン君は自身が”尊き血”を引いていない事を随分と気にしていたようだからね。エレボニアが用意できる最高の”尊き血”を引いておられる皇女殿下を娶れば、彼も自身に流れている血の事を気にしなくなるだろうし、今まで自分を育ててくれたシュバルツァー卿達への恩返しにもなるだろうしね。」
「………………!」
「皇女殿下に対してそのようなあまりにも傲岸不遜で不敬な事を考えていたのか、貴様は………!」
ルーファスの口から語られた驚愕の事実を聞いたエリゼは膨大な殺気を纏ってルーファスを睨み、ミュラー少佐は怒りの表情で声をあげてルーファスを睨んだ。
「そ、それって……!」
「メンフィルがエレボニアに要求した”戦争回避条約の救済条約”に秘められているメンフィルの目的とほとんど同じじゃないか!?」
「なるほどね~。確かにそれなら可能性はあったかもしれないね~。」
「はい……少なくても”救済条約”の件同様”戦争回避条約”の内容の一部を譲歩してもらえたでしょうね……」
一方アリサとマキアスは信じられない表情をし、真剣な表情でルーファスを見つめて呟いたミリアムの推測に頷いたクレア大尉は複雑そうな表情でアルフィンに視線を向け
「……ッ!ルーファス卿!幾ら戦争を阻止する為とは言え、内戦の時のようにアルフィン義姉様を再び利用する事に不敬だと思わなかったのですか……!?それにアルフィン義姉様のお気持ちを完全に無視しているではありませんか……!」
エリスは怒りの表情でルーファスを見つめて問いかけた。
「フフ、利用とは人聞きの悪い。アルフィン皇女殿下は”夏至祭”の件を切っ掛けにリィン君に好意をお持ちになられているのだから、私はアルフィン皇女殿下の幸せを願う者として……アルフィン皇女殿下を利用した償いとして……そしてアルフィン皇女殿下の幸せの為にもリィン君と殿下のご結婚を提案するつもりだったのだよ?」
「例え内戦が終結するまでにメンフィルとの戦争が勃発しなくてもアルフィン皇女はリィンへの気持ちを利用されていたようね……―――しかも祖国の信頼していた家臣達に。」
「ああ………もし、メンフィルが戦争を仕掛ける前に内戦が終了していたら父上もメンフィルとの戦争を避けるために彼の案を受け入れていただろうね……」
「はい……………わたくしもメンフィルとの戦争勃発の責任を取る為にも例えルーファスさんに対して思う所があっても、ルーファスさんの提案通りメンフィルへの和解の印として、リィンさんと政略結婚する事を受け入れていたでしょうね……」
「ひ、酷すぎるよ……!」
「やれやれ……まさかルーファス卿がそんなあまりにもえげつな過ぎる事を考えていたとはね……」
「兄上!幾らアルフィン殿下がリィンに好意を持っているからと言って、メンフィルとの戦争勃発に関わっていた兄上がそのような傲岸不遜な事を提案する資格はありません!」
「……それ以前にエリゼにリフィア殿下へのとりなしを頼むリィンがルーファスさんの嘆願を断るという可能性は考えなかったのですか?」
ルーファスの答えを聞いたセリーヌは重々しい様子を纏って呟いた後目を細め、セリーヌの意見に同意して疲れた表情で呟いたオリヴァルト皇子の推測にアルフィンは頷いた後辛そうな表情で顔を俯かせ、トワは悲痛そうな表情をし、アンゼリカは疲れた表情で溜息を吐いた後真剣な表情でルーファスを見つめ、ユーシスは怒りの表情でルーファスに指摘し、ガイウスは心配そうな表情でリィンに視線を向けた後真剣な表情でルーファスに尋ねた。
「その点に関しては心配していなかった。”内戦後に拘束されるクロウ君の為”にも彼は断らなかっただろうしね。」
「な――――」
「な、”内戦後に拘束されるクロウの為”って……!」
「まさか……クロウの罪の軽減等を盾にして、俺にエリゼへの説得を頼むつもりだったのですか!?」
予想外の話を聞いたエリオットは信じられない表情をして絶句しているクロウに視線を向け、リィンは厳しい表情で問いかけた。
「……さすがに無罪放免は無理だが、リィン君が望む可能な限りの希望に応えるつもりだった。―――例えばクロウ君が卒業するまでの間だけは彼をトールズ士官学院に通わせる事なら可能だ。」
「―――なるほど。メンフィルとの戦争を回避する為ならばユーゲント三世を始めとしたエレボニア皇族達もそうですが、帝国政府も”特例措置”としてエレボニア帝国全土でテロ活動を行っていたテロリストのリーダーをそのような常識的に考えてありえない甘い処遇にする事にも同意したでしょうね。」
「そ、それは………」
「オレ達が目指した”かけがえのない毎日”を取り戻す事……その中には当然クロウがいる事も入っているな……」
「……ッ……!」
「兄様……」
「クロウ君……」
「…………」
ルーファスの話を聞いたフェミリンスは真剣な表情で推測し、マキアスとガイウスは複雑そうな表情をし、クロウは唇を噛みしめ、エリスとトワはそれぞれ心配そうな表情でリィンとクロウを見つめ、アンゼリカは重々しい様子を纏って黙り込み
「貴方という人は……!」
「どこまでリィンを利用すれば気がすむのよ!?」
「あんたと同じトールズの常任理事のリウイ陛下ですらエレボニアと戦争になっても直接生徒達を利用するような事はしなかったのに、仮にもトールズの常任理事だった癖にあんたは幾ら国の為だからと言ってよくもそこまでウチの生徒達を利用しようと考えられたわね……!」
「貴方といい、オズボーン元宰相といい、お兄様を何だと思っているのですか……!」
「幾ら国の為だからって、何度もリィンさんを利用する事に罪悪感とか湧かなかったの!?」
「”教授”や”鉄血宰相”並みに根性が腐っているわね、あんたは!」
「……彼の案は確かに純粋に”国”を救うために考えた案ですが、エステル様の仰っている通りある意味”教授”と同等の悪辣さですわね……」
「むしろ奴の方が”教授”よりも性質が悪いと思うがな。」
「そうね……戦争を回避し、国を救う為ならどんなに悪辣な手段だとしても、表向きは政略結婚でありながらアルフィン皇女の恋を叶えるという見方がされるだろうから後にその事が評価されてルーファス卿は人々に称えられる存在になったでしょうね。」
「さすがはオジサンがボク達の”筆頭”にしただけあって、オジサン並みにえげつない事を考えていたんだね~。」
「兄上…………」
「リィンさん……」
エリゼとアリサ、セレーネとサラ教官、ミントとエステルは怒りの表情でルーファスを睨み、シャロンの指摘を呆れた表情で補足したレーヴェの指摘にプリネは複雑そうな表情で同意し、ミリアムは疲れた表情でルーファスを見つめ、ユーシスは辛そうな表情で肩を落とし、クレア大尉は辛そうな表情でリィンを見つめた。
「ですがその結果貴方達はメンフィルの逆鱗に触れた事でメンフィルが予想以上の早さで内戦に介入して来たことで計画が崩壊し、貴方自身もメンフィルによってその罪を命と引き換えに償わさせられた……と。”策士策に溺れる”という諺を示す典型的な例ですね。おまけに自分達の思い通りにいかなかったからと言って、双界を破滅に導こうとするあの愚か者を諫めようとせずに逆に力を貸して一緒に双界を破滅に導こうとするなんて、はっきり言えば子供の癇癪じゃないですか。」
その時エイドスは呆れた表情でルーファスを評価し、エイドスの評価を聞いたリィン達は冷や汗をかいて表情を引き攣らせ
「黙れ!我等の計画が崩壊し、私や宰相閣下達がこのような事になってしまったのも、元を正せば貴公が”幻の至宝”をクロイス家の先祖に与え、その結果”零の御子”が生まれてしまった事が一番の原因!その原因である貴公に私達を責める権利はない!」
ルーファスは怒りの表情でエイドスを睨んで反論した。
「キーアさんの件を私のせいにするなんてただの責任転嫁じゃないですか。遥か未来の”幻の至宝”がどうなったかや、その事によってクロイスの子孫がどのような”選択”をしたのかだなんて、例え”女神”である私ですらもわからないのですから。まあ、”予知能力”があるゲルドさんでしたらわかったかもしれませんけど。」
「……私の”予知能力”で”未来が視える”のはせいぜい数十年後くらいで、数百―――ううん、数千、数万年先まではさすがに視えた事がないから、私でも無理だと思うよ……?」
「ゲ、ゲルドさん……こういう時はわざわざ律儀に答える必要はありませんよ………」
「と言うか数十年先の未来がわかる予知能力とか、ぶっちゃけミントちゃん程でないにしても、神々のみが起こせる”奇蹟”同然のとんでもない異能やねんけどな……」
「彼女の”予知能力”が戦争等に悪用されない為にもできれば七耀教会で彼女を保護したかったのですけどね………」
「メンフィルが彼女の後ろ盾になったから彼女に手を出せない状況だものね……」
ルーファスの反論に指摘したエイドスの指摘と、ゲルドのエイドスへの指摘にリィン達が再び冷や汗をかいて表情を引き攣らせている中エマとケビンは疲れた表情で溜息を吐き、リフィア達をジト目で見つめるリースの様子にルフィナは苦笑しながら答えた。
「と言うかエイドスさんといると、本当に今が決戦の空気なのかと疑問に思うよね……?」
「エイドスの空気を読まない発言が毎回毎回その場の空気を壊しているから誰でもそう思うの。」
「エイドスの仲間の人達が彼女を”KY女神”って呼んでいたのもそれも理由の一つでしょうね……」
「そしてエイドスさんによってその場の空気を壊された側はたまったものじゃないでしょうね……」
「た、確かに……エイドスと対峙した相手は色んな意味で哀れに思えてくるな……」
「ううっ、エイドスを育てている親としてミントさんの力を借りてエイドスに一体いつ、何があって、こんな性格になったのか、本気で知りたいくらいです……」
一方またもや空気を壊したエイドスの発言に苦笑しているナユタにノイはジト目でエイドスを見つめながら指摘し、クレハとエレナは疲れた表情で呟き、アドルは苦笑しながらルーファスを見つめ、フィーナは疲れた表情で頭を抱え込んでいた。
「……ッ!敵であるこの私を前に悠長に雑談をするとはどこまで私を愚弄するつもりだ……!」
「え、えっと………」
「……まあ、普通に考えたら向こうの反応が常識なんだがな……」
「エイドスさん……と言うよりも”ブライト家”が関わったら”非常識が常識”になりますからね……」
自分の存在を忘れて雑談をしている様子のリィン達を見て怒りの表情で叫んだルーファスの様子を見たエリオットは困った表情をし、トヴァルとマキアスは疲れた表情で溜息を吐いた。
「ちょっと、マキアス君!?”ブライト家”って事はエイドスだけじゃなくあたし達もその”非常識が常識”になるじゃない!」
「今は黙っておこうよ、エステル……」
「ア、アハハ……」
ジト目でマキアスを睨むエステルにヨシュアは疲れた表情で指摘し、ミントは苦笑していた。
「………そちらの質問に答えたのだから、こちらの疑問にも答えてもらっていいかな、”Ⅶ組”――――いや、”本来の歴史のⅦ組”の諸君?」
「ほ、”本来の歴史のⅦ組”……?」
「意味不明だし。」
「恐らく”改変される前の歴史”――――つまり、ゼムリアとゼムリアにとって異世界である”ディル=リフィーナ”と繋がらなかったゼムリア大陸での貴方達の事を指しているのだと思うわ。」
ルーファスの問いかけにアリサが戸惑い、フィーはジト目になり、困惑している様子のリィン達にロカが説明をした。
「異世界と繋がらなかったゼムリア大陸での”Ⅶ組”のメンバーと言う事は……」
「……メンフィル出身の私達や他の異世界から来たセレーネがいない”Ⅶ組”―――つまり、ノルド高原出身のガイウスさんを除いた全員がエレボニア出身であるⅦ組の事を示しているのでしょうね。」
ロカの説明を聞いてある事を察して複雑そうな表情をしたエマに視線を向けられたプリネは静かな表情で答えた。
「そうだ。――――遠回しな言い方は止めて直截に訊ねる。君達はクロスベル―――いや、自分と親しい者達を守りたいという理由の為だけに私を含めた多くの貴族連合に所属していた者達の命を本来のゼムリアの歴史では存在しなかった異世界の大国――――メンフィルによって奪われる因果へと操作し、挙句の果てにはメンフィルとクロスベルによってエレボニアの領地を削り取られ、エレボニアを衰退の道へと歩ませるように仕向けた愚か者を何とも思っていないのか?」
「そ、それは………」
「まあ~、メンフィルがいなかったらエレボニアは多くの領地を他国に奪われて衰退する事はなかっただろうね~。」
静かな怒りを纏ったルーファスの問いかけにマキアスが複雑そうな表情で言葉を濁している中、ミリアムは疲れた表情で呟き
「リィン君、君も私達同様”零の御子”の所業を許せないと思わないのかい?彼女の因果操作がなければ、シュバルツァー家は帝国貴族のままで、クロウ君との”約束”を守れたのだよ?」
「………………」
「エリゼ嬢、君もだ。君も”本来の運命”ならばリフィア皇女の専属侍女長という重荷を背負い、リフィア皇女の行動に翻弄される事なく、貴族の子女として平穏に暮らしていけたのだよ?ましてや多くの兵士達の―――人の命を奪うという事をする必要も無かったのだよ?」
「………………」
「お兄様……」
「姉様……」
ルーファスの問いかけに対して、それぞれ目を伏せて黙り込んでいるリィンとエリゼをセレーネとエリスは心配そうな表情で見つめていた。
「―――言いたい事はそれだけですか。」
「何……?」
そして目を見開いたリィンの言葉を聞いたルーファスは眉を顰め
「世界中の多くの人々の運命を改変したキーアさんの真意はどうあれ……その改変によって救われた人々もいますし、本来出会えるはずの無かった人々との”絆”を結んだ人々もいます。俺もその一人。本来出会う事がなかったベルフェゴール達やセレーネとの出会い、そしてリウイ陛下を始めとしたメンフィルの人々との”絆”を結んだ事は俺にとっても大切な出来事です。」
「―――当然私もリフィア殿下の専属侍女長という大任を務める事になった事は”誇り”に思っています。確かにリフィア殿下の破天荒な行動には苦労はさせられますが、リフィア殿下の専属侍女長になった事を後悔した事は一度もありませんし、戦いの最中で多くの敵―――”人”を殺した事も後悔していません。」
「お兄様……」
(うふふ、こんな時でもさりげなく私達の好感度を上げたわね♪)
(ふふふ、さすがはご主人様ですね。)
(というか”本来の運命”以上に”女殺し”になっているのではないでしょうか。)
(ア、アハハ……た、確かにそれは言えてますわね。)
(フフ、私も貴方同様貴方に出会えてよかったと思っているわよ、リィン……)
「うむ、それでこそ余の忠臣じゃ!」
「フッ……」
「フフ……」
エリゼと共に答えたリィンの答えを聞いたセレーネは嬉しそうな表情をし、ベルフェゴールとリザイラがリィンに感心している中、ジト目で呟いたアルティナの念話を聞いたメサイアは苦笑し、アイドスは微笑ましそうにリィンを見守り、口元に笑みを浮かべて頷いたリフィアをゼルギウスとシグルーンは微笑ましそうに見守っていた。
「それに”本来の歴史”と違って僕達の祖国であるエレボニアが衰退する事は確かに悲しい事ですけど……」
「そもそもそんな事になってしまったのは先にメンフィルの逆鱗に触れる事をしたエレボニアに全面的な非がありますし、第一ルーファス卿はユミルがメンフィル―――”他国”の領地であり、リィン達―――”シュバルツァー家”が”他国”の貴族と理解していて、自らの計画を成就させるためにリィン達に危害を加えたのですから、ルーファス卿が”改変された今の世界”について指摘する”資格”はありません。」
「そしてリィンも言っているように、オレ達は本来出会う事がなかった人々――――プリネ達を始めとした異世界の人々とも交流を結び、”本来の歴史”では決して知る事が無かった様々な事を知る事もできましたし、”本来の歴史”では救われなかった人々も救われました。だから”改変された今の世界が間違っている”とはとても思えません。」
「皆さん………」
「ふふっ、これもまた”改変された世界”による影響なんでしょうね。」
「間違いなく”本来の世界のⅦ組”より成長しているだろうな……」
エリオットやラウラ、ガイウスの主張を聞いたプリネは微笑み、サラ教官とトヴァルは苦笑しながらリィン達を見守っていた。
「ですが確かにルーファスさんの言う通り、キーアさんの因果操作によって本来失われる事がなかった多くの命が失われる事になり、クロウやルーファスさんを含めた多くの人々の人生が狂わされました。だけどそれは決してキーアさんだけのせいではありません。そのような事になってしまった原因を作ったルーファスさん達も責任の一端を背負っている……―――違いますか!?」
「貴族連合の”総参謀”であった事で貴族連合内ではカイエン公に次ぐ権力を持っていた貴方ならばカイエン公達に内密でメンフィルがエレボニアとの戦争を踏み切るまでの間に求めていたエリス返還を含めた要求の実行をできたはずです。―――エレボニアが衰退し、貴族連合軍から多くの犠牲者を出してしまった事で責められるべき人物は自らの野望の為に先程挙げた事を実行しなかったルーファス卿―――いえ、ルーファス・アルバレア。貴方もカイエン公やオズボーン元宰相同様その一人であり、エレボニアを混迷と衰退の道へと導いた”逆賊”です!」
「…………ッ……!」
「ふふっ、私達にとっても耳が痛い話ね。」
「ハッ、よく言うぜ。」
リィンとエリゼの正論に反論できないルーファスは表情を歪め、苦笑しながら呟いたクロチルダをクロウは鼻を鳴らして呆れた表情で見つめていた。
「―――二人の言う通りです、兄上。エレボニアの衰退もメンフィルとの戦争によって出てしまった多くの犠牲者達や兄上がメンフィルに処刑された事も、元をたどればメンフィル帝国から猶予を貰っていた上その実行が可能な立場でいたにも関わらずメンフィルの要求を呑まなかった兄上も責任の一端を担っています。兄上が言っている事は”空の女神”の指摘した通りただの責任転嫁です。」
「ユーシス…………」
静かな表情で自分を見つめて指摘したユーシスをルーファスは驚きの表情で見つめた。するとその時オリヴァルト皇子が一歩前に出てルーファスを見つめて口を開いた。
「――――ルーファス君。確かに君の言う通り”改変された世界”によってエレボニアが衰退する事は”アルノール家”としても悔しい話だ。だが、同時に今回の件はエレボニアにとって良い機会になったとも思っている。」
「な―――何故です!?他国の侵略によって多くの兵達の命が奪われた所か広大なエレボニアの領地が半分以上削り取られ、更には『ハーメルの惨劇』を公表する事によってエレボニアの社会的地位は地に堕ちるというのに、エレボニア皇家の一員である殿下は何故それらの事が”良い機会”になったと仰れるのですか!?」
オリヴァルト皇子の答えを聞くと信じられない表情で声を上げた後厳しい表情でオリヴァルト皇子を睨んで問いかけた。
「フッ、決まっている。私が愛するエレボニアが美しく生まれ変わる良い機会になったからさ。」
「!?」
「君も知っての通り、今までのエレボニアは多くの腐敗した貴族勢力によって支配され、平民達はその支配によって苦しみ続けて来た。更には”革新派”が現れた事で同じ国の者達が互いを敵視し、極めつけは他国の領地欲しさに自国の領地の民達を虐殺し、その虐殺の責任を他国に押し付けて戦争を仕掛けた件―――”百日戦役”だ。」
「「「……………」」」
オリヴァルト皇子の話を聞いたレーヴェとヨシュア、プリネはそれぞれ目を伏せて黙り込み
「だが今回の件――――内戦を勃発させ、メンフィルに戦争を仕掛けられる元凶になり、更にはカルバードと領有権争いをしていたクロスベルにまで下克上をされてエレボニアの領地が奪い取られる隙を作ってしまった原因の一端になってしまった事によって”貴族派”、”革新派”共に双方の権威は地に堕ちた。」
「………つまり結果的には双方の勢力の権威が地に堕ちた事で双方の勢力はエレボニア皇家である”アルノール家”の名の元に一丸となり、協力してエレボニアを復興しなくてはならない状況になってしまった事がエレボニアにとって”良い機会”だと仰りたいのですか……?」
オリヴァルト皇子の説明を聞き、オリヴァルト皇子の言いたい事を察したルーファスは厳しい表情で問いかけた。
「否定はしない。だが、”そんな事よりも重要”なのは”戦争回避条約”によって『ハーメルの惨劇』を世界中に公表する事によってエレボニアはようやく”ハーメル”の民達とリベールに対してエレボニアが背負ってしまった女神も許し難き”大罪”を償える事だ。」
「!?」
しかしオリヴァルト皇子の口から出た予想外の答えを聞いたルーファスは驚いたが
「君の言う通り『ハーメルの惨劇』を世界中に公表する事によってエレボニアの社会的地位は地に堕ち、『西ゼムリア通商会議』のような国際会議でもエレボニアの立場は非常に弱いものになってしまうだろう。――――だが、逆に言えばエレボニアはようやく一からやり直し、美しい国に生まれ変わる事ができる機会を得られたという事だ。」
「……殿下の仰る”美しい国”とは一体どういう国なのですか?」
オリヴァルト皇子が目指しているものが気になり、オリヴァルト皇子に問いかけた。
「人は、国は、その気になればいくらでも誇り高くあれる。それが私が目指す理想の国―――――私にそれを教えてくれたリベールのような素晴らしく、そして美しい国さ。フフ、本物の女神ですらやり直せる機会が訪れてそれを今もなお行っているのだから、我が祖国も一からやり直して素晴らしい国へと発展させる機会はいくらでもあるさ。」
「オリビエ………」
「お兄様………」
「……………」
(えへへ……オリビエさんの話に出て来た”やり直せる機会が訪れた本物の女神”ってフェミリンスさんの事だろうね……)
(……否定はしませんけど、何故このタイミングで私を例えに出したのか、全て終わった後にあの皇子に問い詰めますわ。)
オリヴァルト皇子の答えを聞いたエステルとアルフィンは驚き、ミュラー少佐は静かな笑みを浮かべてオリヴァルト皇子を見つめ、微笑みを浮かべたミントに視線を向けられたフェミリンスは静かな表情で答えた後顔に青筋を立ててオリヴァルト皇子を睨んでいた。
「………なるほど。あの宰相閣下が一目置いていただけあって、私ではとても理解できない考えをお持ちのようですね。」
「ほう?それは意外だね。てっきり、放蕩皇子の精一杯の抵抗と侮られていたと思っていたのだがね。」
ルーファスの答えを聞いたオリヴァルト皇子は目を丸くした後口元に笑みを浮かべた。
「―――ならば私は宰相閣下の忠臣として、この魂を燃やし尽くしてでも閣下の最大の障害である殿下達の力を注がせてもらう……!」
「ま、結局はそうなるよね~。ユミルの時は圧倒されちゃったけど、あの時よりもボク達は遥かにパワーアップしている上、”空の女神”達もいるんだから、余裕だね~。」
「油断するな、阿呆……!”貴族連合”の”総参謀”を務めていた兄上が何の策も無く自分より遥かに戦力がある俺達に正面から戦いを挑む訳がない……!」
ユミルで戦った時と違い、圧倒的な戦力を有している自分達なら例えルーファスが相手でも余裕で勝てると判断しているミリアムにユーシスが警告したその時
「フフ、その通り。」
ルーファスが静かな笑みを浮かべて指を鳴らすと何とリィン達―――”Ⅶ組”のメンバー全員の容姿や姿と瓜二つの人物達がルーファスの周りに現れた!
「なっ!?」
「ぼ、僕達――――”Ⅶ組”!?」
「ど、どどどど、どうなっているの~!?」
「―――落ち着いてください。恐らくあの人物達は七耀教会の”聖典”に記されている”魔物”――――”グリモア”が変身した偽物達です!」
「”グリモア”………………”煉獄”に落とされた魂の成れの果てね。」
ルーファスの周りに現れた自分達そっくりの人物達の登場にリィンとマキアスは驚きの声を上げ、ミリアムは混乱し、リィン達に助言したプリネの説明を聞いたルフィナは真剣な表情でリィン達そっくりの人物達を見つめ
「………ケビン、気づいてる?」
「ああ………”影の国”で戦った奴等と気配の資質が明らかに違う。一体どういう事や……?」
何かに気づいたリースの言葉に頷いたケビンは真剣な表情でリィン達の偽物達を見つめた。
「………なるほど。この”真・煌魔城”の”力”――――”負の力”で”リィンさん達自身を具現化”したという事ですか。」
「へっ!?そ、それってどういう事!?」
一方偽物のリィン達の正体に気づいたエイドスの言葉を聞いたエステルは驚き
「………彼らは”教授”達のようにこの城の力によって具現化した”もう一つの本物のⅦ組”と言う事さ。」
「フフ、その通り。その証拠を見せてあげよう。――――それぞれに秘めた”力”を解放したまえ。」
驚いているエステルに説明をしたヨシュアの推測にルーファスは静かな笑みを浮かべてヨシュアの推測が正解である事を答えた後指を鳴らすと何と偽物のリィンとプリネはそれぞれ本物のリィンとプリネがそれぞれに秘められている”力”を解放した状態になり、偽物のツーヤとセレーネは竜化した!
「ええっ!?偽物のリィン達が本物のリィン達みたいに………!」
「まさかあたしとセレーネの竜化どころか、リィンさんやマスターに秘められている”力”をも模倣するなんて………!」
「ふふっ、私にとって最も厄介な存在は”本隊”である君達に真正面からぶつかり合っても一矢すら報いる事ができないのは最初からわかっていたからね。だが”本隊”同士がぶつかり合えば、結果は変わるだろう?」
偽物のリィン達がそれぞれ解放した力を見たアリサとツーヤが驚いている中ルーファスは静かな笑みを浮かべて説明をし
「……なるほどね。同じ力がぶつかり合うのだから、確実にわたし達を消耗させる事ができるね。」
「チッ……ある意味一番厄介な相手ね。」
「フーン………ムカツクけど確かに偽物のエヴリーヌやプリネから感じる力も本物のエヴリーヌやプリネと同じ”力”だね。」
「しかもクロウどころか”死線”や私の偽物までいるから、このメンツでもちょっと手こずるかもしれないわね………」
「やれやれ……偽物とはいえ、本物同然の存在のアリサ君達とやりあうのは精神的に来るね……唯一の救いはトワの偽物がいない事だね。」
「ア、アンちゃん、今はそんな呑気な事を言っている場合じゃないよ!」
ルーファスの説明を聞いたフィーとサラ教官は警戒の表情で偽物の自分達を見つめ、エヴリーヌは不愉快そうな表情で自分やプリネの偽物を睨み、クロチルダと共に疲れた表情で溜息を吐いたアンゼリカにトワは呆れた表情で指摘した。
「………あれ?リィンさん達の偽物はいるけど、リィンさん達が契約している異種族の人達の偽物はいないよね?」
「そ、そう言えばベルフェゴール様達の偽物はいませんわよね………?」
「それにエステル達や僕達の偽物もいないな………」
「一体どういう事なのでしょう……?」
その時何かに気づいたミントの言葉を聞いたセレーネは戸惑いの表情で自分達の偽物を見つめ、アドルとエレナは不思議そうな表情をした。
「………―――!なるほど………”そういう事”ですか。」
「エイドス?何か気づいたのかしら?」
そして目を見開いて呟いたエイドスの言葉の意味が気になったフィーナはエイドスに訊ねた。
「ユーシスさんのお兄さんがギリアス・オズボーンから分け与えられたユリスの”力”を使ってリィンさん達の偽物達を具現化した一方私達の偽物達は具現化しませんでしたが……その理由は到って簡単……”具現化しなかったのではなく具現化できなかった”のです。」
「”具現化しなかったのではなく具現化できなかった”………?」
「………――――!なるほど………幾らあの世界中から集めた負の集合体と言えど、”限界”はあったという事ね。」
エイドスの説明を聞いたナユタが考え込み、中エイドスの言いたい事を察したサティアは目を見開いて呟いた。
「あ……っ!」
クレハの答えを聞いて意味がわかったアリサは声を上げ
「今まで私達の道を阻んできた人達が”負の力”で凄まじい存在になったり、現世に呼び寄せたりしたから莫大な”負の力”にも限界が来ているのね。」
「ハッ、要するに他の連中もそうだがこの城自体が好き放題にエネルギーを使いまくったせいでガス欠になったって事か。」
ロカが明確な答えを口にするとクロウは鼻を鳴らして不敵な笑みを浮かべてルーファスを見つめた。
「…………ッ………!」
「――――どうやら図星のようだな。」
一方ルーファスは唇を噛みしめて表情を歪め、その様子を見たセリカは静かな表情で呟き
「なるほどね~。道理でご主人様やあたし達の偽物が現れなかった訳ね。冗談抜きで助かったわ……」
「セリカのやわらわ達の偽物等どう考えても苦戦する事は目に見えているしの………」
「はいです~。それに偽物でもご主人様とは戦いたくありませんし~。」
「フフ、サリアの言う通り色々な意味で偽物とはいえ、ご主人様と戦いたくないものね。」
マリーニャとレシェンテは安堵の溜息を吐き、サリアの言葉を聞いたシュリは苦笑していた。
「―――くっ……!まさかこんなにも早く悟られるとはな……さすがは”空の女神”か。だが、他の精鋭部隊は卿らを先に行かせる為に全て宰相閣下の呼びかけに応えた者達や”真・煌魔城”の”力”によって具現化した者達との戦いによって足止めされ、すぐには卿らの援軍に向かえない状況だ。宰相閣下の勝利の為にも全身全霊を以って卿らを一秒でも長く足止めさせてもらう――――!」
そして唇を噛みしめたルーファスがエイドス達を睨んで戦闘態勢に入ったその時
「いや……貴方達の相手は僕達だ!」
エルバラードや、ラヴィリエやミストリアを始めとしたエルバラードに力を貸しているエルバラードの多くの仲間達、そしてコリドーラがリィン達とは別方向のルートの出入り口から現れた!
後書き
と言う訳で既に予想していたと思いますがルーファス達の相手はエルド達です!なお、この話のエルドは既に原作で仲間になるキャラは”全員”仲間にしているという事にしてあります。なのでアペンドで仲間になるカーリアンを除けば全員(召喚キャラ除く)ちょびっとですが出番はありますwwそれと私も暁の軌跡をプレイしていますが………リーシャが出ねぇ………しかもリーシャが出る確率が高い時期にリーシャ狙いでガチャ回したらオリビエが来て、そのオリビエは今では一軍として今も大活躍している上他の人達も私のオリビエを助っ人に使っている影響でフレンドポイントも以前と違って毎日貯まっていきますから複雑です………
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