天本博士の怪奇な生活
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
36部分:第三十五話
第三十五話
第三十五話 生贄
「さてとじゃ」
博士はおもむろにカードを一枚取り出した。
「取り出したるこのカード」
「それでやるんですね」
「うむ。まずは」
コブラが書かれているカードを出してきた。
「これとあとこれとこれじゃな。ついでにこれもじゃ」
蟹と犀、カメレオン、そして黒い龍のカードも出した。それを五枚一気に投げる。
「さあ出るのじゃ。鏡の世界の住人よ」
「召還ですね」
「左様、では危ないから下がっておるのじゃ」
「危ないからってまさか」
小田切君はそこに危険なものを感じていた。
「モンスターじゃぞ。下手をしたらこっちが襲われる」
「そうですか。それじゃあ」
二人はすっと後ろに下がる。だがゴロツキ達にはそれがわからない。
「逃がすかよ!」
「死にたくなけりゃ金置いていけ!」
「残念じゃが金なぞ御前等には渡さんわ」
博士はしれっとした様子で述べた。
「とっとと化け物の餌になるのじゃな」
「餌だと!?」
「手前一体」
彼等はそれを聞いて眉を顰めさせる。その時だった。
「お、おい!」
その中の一人が声をあげた。何と彼等の周りに巨大なモンスター達が姿を現わしたのである。
「何だこいつ等!」
「特撮じゃねえよな!」
「そんなわけが・・・・・・うわあっ!」
うち一人が犀に吹き飛ばされた。
そして一人がカメレオンに舌ではたかれコブラに巻きつかれる。蟹に挟まれたり龍におっかけられている者もいる。
「ほれ、見たか」
博士はモンスター達に襲われ為す術もない彼等をみて平然と述べた。
「わしを甘く見るからじゃ」
「そのモンスター達と契約したんですか」
小田切君はモンスター達がゴロツキ達相手に暴れるのを見ながら博士に尋ねた。
「他にも色々とあるがな」
「色々とですか」
「さて、この程度でよかろう」
そう言うと今度は鏡を出して来た。
「帰るがいい」
そしてモンスター達を収めた。後には殆ど死にかけで転がっているゴロツキ達がいるだけであった。
「全治半年ってところじゃな、全員」
瀕死と言っていい。
「実験は成功じゃ。これは使える」
「使うんですか」
「モンスターを使ってな。これからは鏡の世界も利用できる」
「それもですか」
「うむ。ところで君にもカードをやろうか?」
博士は小田切君にも薦めてきた。
「何なら一枚。鮫なんかはどうじゃ」
「いえ、連慮しときます」
小田切君はそれは断った。正直何か手違いで自分にモンスターが襲い掛かってきたらたまったものではないからである。ッそれは避けたかったのだ。
「そうか。ならいいが」
「ええ。それで博士」
そのうえで博士に声をかける。
「そのモンスター達の世話は」
「気が向いたら外に出て餌を捜すから心配はいらぬ」
「外ってまさか・・・・・・」
悪夢が幕を開けようとしていた。
第三十五話 完
2006・11・15
ページ上へ戻る