FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~
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シリルvs.カグラ
前書き
いつの間にか日付が変わっててこんな時間に更新。
眠くて変な時間に寝ちゃうんだよな・・・疲れてんのかな?
「どっちが勝つと思う?」
八人の魔導士たちが椅子に座り、備え付けられている魔水晶ビジョンから二人のプレイヤーの戦う姿を観察していると、銀髪の青年が視線を動かすことなく皆に質問をぶつける。
「カグラちゃんが勝つに決まってるじゃん!!」
「オオーン!!」
「この二人ならさすがにな」
その問いに真っ先に答えたのは剣を構える女性と同じチームの三人。彼女たちはプレイヤーである人物の実力を把握しているため、勝利できることを信じて疑わない。
「何言ってるの!!シリルだって強いんだから!!」
「はい!!カグラさんにだって負けません!!」
「そうだそうだ!!」
対して水髪の少年とチームメイトである少女たちがそれに反論する。彼女たちも仲間の実力と勝負強さを重々理解しているため、勝つ可能性があることをわかっていた。
「お前はどう思う?レオン」
「んん?」
リオンは隣でビジョンから視線を外さず、先ほどの回答に答えなかった少年に率直な意見を聞いてみる。彼もそれを受け、一瞬悩むような仕草をしたあと、自分の意見を述べた。
「五分五分・・・かな」
「やはりそう思うか」
自チームのプレイヤーが勝つと言っていた他のメンバーとは違った意見を発したレオンと、それに賛同するような様子のリオン。
「実力は二人とも互角だろうし、メンタル面ではカグラさん、動体視力ではシリルが勝ってるから、真っ正面から戦うとどっちが勝ってもおかしくないかな」
あくまで冷静に、それでいて的確に二人の実力を考えて自身の考えを述べる。以前どちらとも手合わせしたことがあるからこそ言える言葉であった。
「ただ・・・」
「ん?」
レオンの意見を聞き終え、全員の視線が魔水晶ビジョンに移ろうとした時、それを遮るように少年が口を開く。
「個人的にはシリルに勝ってほしいかな」
「ほぅ・・・」
自分の全力を発揮して敗れた相手だからこそ抱いた感情。その時彼の頭の中に、ある約束事が思い出される。
『俺はいつか、絶対レオンを越える。だから・・・その時は本気で俺と戦ってほしい』
真っ直ぐな、曇りなき瞳でされた願いを、断る理由などなかった。少年はその言葉を真摯に受け止め、いつか全力でぶつかり合うことを約束した。
(あの約束を果たすなら、こんなところで躓いてるんじゃねぇぞ)
失礼な話だが、今の力があれば自分が少年の対峙している相手よりも強いことを彼はわかっていた。だからこそ、彼に負けてもらいたくないと強く願っていた。
「それが本音か」
「うん」
普段、なかなか本音を言わないいとこの心からの言葉を聞いたリオンはどこか嬉しそうに口角を上げる。
「だが、悪いが俺もカグラに負けてもらっては困る。あいつに負けられたら、俺の立場というものがないからな」
大魔闘演武で、大観衆の目の前で時間制限に助けられた格好の青年は、自分をそこまで追い詰めた彼女が敗北することがどれだけ嫌なことか、どれだけプライドを傷つけられるか、その想いから敗北してほしくないと思っていた。
((問題は・・・どうやってカグラさん(シリル)があいつを倒すんだ?)
今後手合わせをする機会があるかもしれない敵と、どうやって戦い、いかにして勝利を納めるのか。彼らは今後の参考になればと、他のメンバーたちよりも集中し、一言も発することなく画面へと食いついていた。
シリルside
アクアドライブを解放したことにより、体がさっきよりも力を帯びているのが実感できる。ここ最近使う機会がなかったからうまくできるか不安だったけど、ひとまずは安心だな。
「行きますよ、カグラさん」
「来い」
剣を構え、臨戦態勢の人魚を見据え、こちらもいつでも動き出せるように姿勢を作る。
「水竜の・・・咆哮!!」
いつも通り、先手必勝と先制攻撃を放つ。それに対しカグラさんは刀を鞘から抜刀すると、水平にそれを動かし魔法を切り裂く。
「まだまだだな」
「!!」
ブレスを真っ二つにしたかと思うと、まるで瞬間移動でもしたかのように目の前に現れる剣士。これはユキノさんを倒したあれか?
「怨刀・不倶戴天・斬の型!!」
強く踏み込み剣を加速させ、一刀両断しようとするカグラさん。だけど、それは俺の目で捉えることができるものだったため、腰を引いて回避する。
「浅いな」
だが、それは彼女の予想の範疇だったようだ。
「ぐっ!!」
振り抜かれたかと思われた彼女の刀が、同じ軌道を戻すかのように返ってきて刃の裏の部分が脇腹に突き刺さる。まさか返ってくるとは思っていなかったため、その攻撃を対処する術がこちらにはなかった。
「このっ!!」
怯むと弱点を破壊されると思ったので相手が次の攻撃を仕掛けてくる前に痛みに耐えて蹴りを放つ。それは彼女の胴体に直撃するかと思ったけど、カグラさんは刀をうまく使って俺の蹴りを防御していた。
「水竜の・・・」
蹴りを防がれたので次なる一手をと思い指先に魔力を集中させていく。
「砕牙!!」
無理矢理に体を捻った形で繰り出した攻撃は、威力こそ普段のそれより落ちてしまったが、すでに刀で第一撃を止めていた彼女には防御する方法がなく、命中させることができた。
「なかなかやるな、シリル」
「カグラさんこそ」
引っ掛かれた腕を少し擦ったかと思うと、特に問題はなかったようで何事もなかったかのように振る舞うカグラさん。不意討ちで手の甲の弱点を狙ったはずだったんだけど、彼女には読まれていて咄嗟に前腕部分で受け止められた感じになっちゃったな。
(速度じゃ勝てないってことかな?)
向こうの動きがちゃんと見えていて、それに対応することができていただけに驚きを隠すことができない。でも、交わすことができるなら、もっと意識を集中させることさえ出来れば、攻撃だって当たるはず。
(集中!!)
目を大きく開けてより魔水晶を使えるように意識を高めていく。彼女の動きにいち早く対応できるように、魔力の流れを確かめて・・・
ダッ
さっきの仕返しと言わんばかりに、地面を強く蹴ってカグラさんの懐へと入り込む。
「水竜の斬撃!!」
水を剣のように腕へと纏わせて、本職の剣士めがけて斬りかかる。ただし、狙いは弱点バッジではなく・・・
「くっ!!」
手の甲につけられた弱点に意識が向いている彼女の、無防備になっていた腹部!!案の定彼女は狙われるとは思っていなかったようで、ガードが間に合わず攻撃を受けていた。
「水竜の・・・」
カグラさんが怯んだところで彼女の頭付近に足が上がるくらいまでジャンプする。そこから体を半回転させ、頭部目掛けてそれを振り切る。
「鉤爪!!」
側頭部へと直撃した一打。最初の斬撃でバランスを崩していたカグラさんは、尻餅を付くように地面に倒れる。
(ここだ!!)
彼女の頭を蹴る際にさらに空中へと飛び上がるようにした俺は、彼女の真上数メートル程度のところに位置している。
(ここでこれを打てば、いくらカグラさんでも逃げ切れない!!)
両手首を合わせ、へその前に持ってくるように引き、地上で起き上がろうとしている女性に標準を定める。
「雲竜水!!」
魔力を押し出すように、腕を前方に突き出して地上にいる人魚を狙い打つ。ただし、今回は逃げ切れないように広範囲にそれを放つことを意識した。これにより攻撃力は落ちるけど、弱点バッジはそれほど強度があるわけではない。わずかにでもダメージを与えることが出来ればいいのだから、これで十分なはず。
ドォンッ
大きな爆音を残し砂煙が上がっている地上。俺はその砂煙の範囲外へと着地して、どうなったのか目を凝らす。
(さっきの体勢からだと剣で防ぐのは難しいはず・・・これで勝負が決まってくれれば・・・)
なかなか煙が晴れないせいで敵の状況が見えてこない。その場でただ待つしかないことにもどかしさを感じていると、煙の中から剣の先で突くような姿勢で、こちらに飛んでくる黒髪の女性が現れた。
「はぁっ!!」
「うおっ!!」
砂煙の存在で敵に気付くのが遅れてしまった俺は彼女の突きに押し飛ばされる。
「くっ!!」
背中から倒れたが、後転するようにしてすぐさま立ち上がり、彼女を視界の中で捉えられるように顔を上げる。
「怨刀・不倶戴天!!」
「!!」
しかし、顔を上げた時にはすでにカグラさんは目の前にやって来ていた。慌てて避けようとしても、普段やらないような立ち上がり方をしたため、左右の動きに対応できない。
(だったら!!)
動くとしたら前後にしかいけない。ならばここは受けて立つのが男ってものだろう。そう考えた俺はその場で止まると、手のひらに魔力を集中させ、剣筋を見切ろうとする。
「斬の型!!」
頭に降り下ろそうとされている刃先をよく見て、それを両手で挟む。真剣白羽取りなんてやったことないけど、ぶっつけ本番で挑んだそれは見事に嵌まり、彼女の不倶戴天を受け止めることに成功した。
「ほぅ」
まさかそんな受け止め方をするとは夢にも思っていなかったカグラさんは驚愕したような顔をしたあと、感心したように息を漏らす。
「うぅ・・・」
ただ、この体勢を維持するのがなかなか厳しい。相手はこちらが気を抜いたらそのまま頭を打ち抜こうと力を入れているから、俺もそれに耐えようと力を入れ続けなければならない。それが非常に苦しくて、思わず歯を食い縛り苦悶の表情を浮かべてしまう。
「ほっ」
互いに動けぬ膠着状態になるかと思っていた矢先、なんと剣士は信じられない行動に出た。両手でガッチリと刀を持っていた彼女は、こちらも手を離しているのをいいことに足裏で腹部を蹴ってきたのである。
「やばっ!!」
それにより俺は挟んでいた剣から手を離してしまい、彼女の一太刀を受けそうになった。
ガッ
だが、彼女も片足を浮かせた状態になっていたためにバランスを保てず剣を真っ直ぐに降り下ろせなかった。おかげでわずかに俺が倒れた位置から剣筋が逸れ、九死に一生を得る。
「水鉄砲」
「わぷっ」
ブレスを放つほど魔力を溜める時間がなかったため、口から弱々しく水を吐き出し彼女の顔面にぶつけてみる。ダメージなんか一切与えられるようなことはないけど、なんか新しい攻め方ができてちょっとだけ面白くなってきた。
「やめろ!!なんか汚いぞ!!」
「失礼ですよ!!何が汚いんですか!!」
水でびしょ濡れになりながら怒りの感情を露にしているカグラさんに向かって叫ぶ。ナツさんもウェンディも口から魔法出すじゃん!!今のはブレスよりも勢いがないから違和感を覚えたんだろうけど、その言われようはあんまりだ!!
びゅううううう
ちょっと怒ったのでさらに目の部分を目掛けて水鉄砲を発射すると、さすがに視界がなくてどうしようもなくなったのか、彼女の方から距離を取っていった。
「シリルめ・・・なんか嫌な攻撃だった」
顔についた水滴を袖で拭き取りながら、キッと睨み付けてくるカグラさん。そんなに今の攻撃が嫌だったのか、ピンチに陥った時に使えば身の安全を確保するのにはちょうどいいのかも・・・今度実践でも試してみよっと。
「全く・・・」
長くて艶々としていた黒髪も水でびしょびしょになっており、少しずつ水滴がポタポタと地面に滴り落ちている。だが、カグラさんはそれを気にするような素振りは見せず、真剣な表情を崩していなかった。
(別にカグラさんがびしょびしょでもどうでもいいんだけど、ここからどうすればいいかな?)
多少濡れたからって動きが悪くなるはずはないだろうし、ここからどうやって勝利をもぎ取るか戦略を考えてみる。だけど、こっちはアクアドライブを駆使して戦っているため、これ以上の能力向上をする術が・・・
(いや、あることはあるんだけどね。だけど・・・)
一瞬視線を上げてこの戦いの様子をモニターしている魔水晶カメラを見る。たぶんあれからウェンディたちも勝負の行方を見守っているはず・・・つまりあいつもこの様子を見ているってことか・・・
(あれはまだレオンには見せたことがないから、あいつと戦うときまで隠しておきたかったんだけど・・・)
そんなことを言っていられる状況じゃないことは重々承知している。敵は一ギルドのエースで戦いも手慣れたものだ。俺もかなり経験を積んできているとは思うのだが、彼女のような剣士とは手を合わせたことがないため戦いのイメージがつきにくい・・・
それを覆すのに必要なのは、向こうも経験したことがないような、絶対の力。
「よし」
レオンにこっちのとっておきを見せてしまうのは心苦しいが、彼のとっておきも俺は一度目にしているわけだし、条件は五分五分のはず。いざ覚悟を決め、左の腕にかつて刻まれた模様を呼び起こす。
「なんだ?」
覚えたばかりなのとほとんど使うことがなかったから完全にその力を呼び覚ますのに時間がかかる。だけど、まだ完全に解放できているわけではないのに、目の前の人魚は魔力の質が変わり始めていることに気付き目を見開いていた。
「一体なんだ?それは」
訝しげな表情で今俺がやろうとしていることを問いかけてくるカグラさん。俺はそれに、不敵な笑みを浮かべて回答する。
「俺の・・・一番のとっておきですよ」
竜を滅する魔法と悪魔を滅する魔法の融合。これが俺の全力の魔法だ!!
後書き
いかがだったでしょうか。
シリル対カグラを一話で片付けようか迷った末に二話目突入です。そもそもこの二人が最後に純粋な魔法勝負をする予定じゃなかったから展開がグダグダ・・・orz
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