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真田十勇士

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巻ノ六十四 大名その七

「わかったな」
「はい」
 幸村は一言で答えた。
「それでは」
「その様にな、双方でそれぞれつきじゃ」
 そしてというのだ。
「何があろうともな」
「今後ですな」
「どういったことが起ころうとも」
「家は守る」
 真田家はというのだ。
「そうする」
「そしてその為には」
「天下の情勢をよく見て」
「どうなってもいいようにしておく」
「今からですな」
「そうじゃ、確かに天下は羽柴家のものになったが」 
 だがそれでもというのどだ。
「まだわからぬ、だから手は打っておくぞ」
「その一手として、ですか」 
 幸村が言った。
「それがしは上洛ですか」
「都か大坂に行ってな」
「そのうえで」
「関白様の下で働いてもらうぞ」
「義父上と共に」
「そうせよ、よいな」
「さすれば」
 幸村は父の言葉に静かに応えた、そしてその彼にだ。昌幸はさらにこうしたことも言った。
「それで御主に話がある」
「はい」
「関白様から加増の話があってな」
「沼田をですな」
「当家に正式な加増としてじゃ」
 そのうえでというのだ。
「組み入れて下さるとのことじゃ」
「左様ですか」
「沼田にはまずは源三郎が入るが」
 信之も見つつ言う。
「源三郎は長子、だからな」
「家督を継がれ」
「この上田に入る、だからな」
「それがしはやがては沼田に」
「そうじゃ、入ることになる」
「そうなりますか」
「三万石じゃ」 
 昌幸は笑って幸村に話した。
「御主はやがてそれだけの身になる」
「三万石ですか」
「そして沼田に入るまでにな」
「それまでに」
「御主には源三郎の分も含めて一万八千石じゃ」
「二千石からですか」
「うむ、それだけになる」
 微笑み幸村に話す。
「どうじゃ、受けるか」
「さすれば」
 幸村も応えた、こうしてだった。
 幸村は大名になることを受けた、しかもこのことは秀吉からの直々の命とのことだった。こうして幸村は晴れてだった。
 一万八千石の大名となった、そうなってだった。
 十勇士達にだ、こう言ったのだった。
「都か大坂に上洛してな」
「そこにおいてですな」
「務められるのですな」
「大名として」
「上田に帰ることは稀になる」
 まさにというのだ。
「奥も一緒じゃが」
「我等もですか」
「連れて行って下さいますか」
「都にも大坂にも」
「そうして頂けますか」
「御主達は拙者の家臣であり義兄弟じゃ」
 幸村は今彼が住んでいる屋敷の中で十勇士達に微笑んで話した。
「だからな」
「我等もですか」
「共に上洛し」
「殿と一緒に務めてよいのですな」
「その様に」
「そうじゃ、来てもらいたい」
 是非にという言葉だった。 
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