真田十勇士
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巻ノ六十四 大名その二
「確かであるからな」
「それがしが大名になる」
「うむ、そうだからな」
「ではその話が確かに来た時は」
「返事のことを考えておくのじゃ」
「わかりました」
確かな声でだ、幸村は信之に答えた。そしてだった。
この日はそのまま飲み休んだが次の日だ、幸村は起きるとすぐに十勇士達に対してこんなことを言った。
「近くに風呂がある」
「はい、その風呂に共に入りですな」
「朝早いですし」
見ればまだ暗い、飯の時間もまだまだ先だ。
「だからですな」
「風呂で昨日の話をする」
「そうされるのですか」
「そうしたいが」
こう十勇士達に言うのだった。
「どうじゃ」
「はい、それでは」
「今より風呂に入りましょう」
「そして酒も抜きすっきりしつつ」
「話をしましょうぞ」
「やはりな」
どうしてもとだ、ここでこうも言った幸村だった。
「風呂ではじっくり話が出来る」
「くつろいだ気持ちになり」
「お互い砕けますからな」
「だからこそこれから風呂で話しますか」
「何も隠さずに」
「そうしようぞ」
こう言ってだ、そしてだった。
幸村と十勇士達は温泉に向かってそしてだった、それぞれ裸になりそのうえで湯の中に入った。そうしてすぐにだった。
幸村は十勇士達にだ、あらためて問うた。
「では話すぞ」
「はい、お話は伺っております」
「禄のお話ですな」
「それですな」
「そうじゃ、拙者に万石の話が出ておる」
まさにというのだ。
「そして万石取りとなればな」
「大名ですな」
「これまでは旗本扱いでしたが」
「それが大名となる」
「殿が」
「二千石がじゃ」
雪村が今は貰っている禄である、真田家の中からだ。
「どうも真田家自体が加増されてな」
「それで、ですな」
「その中で殿の禄も増えて」
「万石取りともなり」
「大名ですな」
「そうなられるのですな」
「昨日兄上に言われるまで夢にも思わなかった」
それこそだ。
「まさにな、しかしな」
「源三郎様は嘘は申されませぬ」
「あやふやなことも申されませぬ」
「では確かなことですか」
「昨夜は不確かな様に言われていましたが」
「拙者もそう思う」
弟として信之を知っているだけにだ、雪村も言った。
「兄上が言われたことはな」
「かなり確かなものですな」
「信憑性がありますな」
「やはり」
「そうしたお話ですな」
「そう思う、拙者が大名か」
幸村はまた言った。
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