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役職?召喚魔術師ですがなにか?

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そうだ、家出をしよう

さて、ベルとヘスティアがソーマファミリアに世話になりはじめてから一週間が過ぎた。
やはりファミリアに人が増えるだけで賑やかになるのは悪くない。
何時までも四人だと活気がなかったからな。
とは言え、ここ数日のベルとリリの対応がドライなんじゃないかと思うのは気のせいだろうか?
ちょっと用事があって呼び掛ければタイミングを見計らったようにリリかベルが割って入ってきたり、ダンジョン行こうぜ!と誘ったら「はい、頑張ってくださいね」ベル談「そうですか。お気を付けて量」リリ談と言ったように完璧スルーしようとするのだ。
これはもうあれだ。避けられているとしか思えない。
つまりあれだろうか?私はもうお役ごめんと言うやつですね。分かります。
そうとなったら家出をしよう。まずは身支度だよな。確かリヴィラの近くに泉があったはずだからタオルと着替え…あとはサバイバルキットが必要だよな。
「おっと、書き置きしてかにゃならんな」
カキカキカキと、ああ、『探さないでください』っと。これで良いだろ。
さぁ出発しよう。どうせなら深層まで潜っても良いかもしれない。
何らかの出会いがあることを祈っておこうかね。

こうして俺は家出をした。
そしてその後日ーーー

「リリィーーー!タケルさんの部屋に書き置きがぁぁぁぁぁ!!」

ソーマファミリアに悲鳴が響き渡り、一大事と言う事件を引き起こした…。

「タケルなら直ぐに戻ってくるでしょうね」
「…そうだね」

と言うことにはならなかったようだ。



18階層。
木々に囲まれた場所の奥深くで、テキパキとテントを建てる姿があった。
まぁ俺な訳だが。

「こんなもんで良いか?」

汗を脱ぐって出来映えを見る。
材質はコンクリート。高さ2m広さ1:-pの、もうテントじゃなくて建物である。

「ありがとな、二人とも」

俺は向き直ってお礼を言う。
今回はE-HEROのバブルマンとクレイマンに手伝ってもらったのだ。

「さて、飯にしよう」

なんかキャンプしてるみたいで楽しい。



その頃、タケルのいる場所の近くにやって来た三人の女性がいた。

「…あれ?何か良い匂いが…」
「ん……カレーの匂い…」
「カレー?何よ、カレーって」
「多分、あの人がいる」
「え?あ、ちょっとアイズ!」
走り出したアイズを追って、女性二人もあとに続いた。
そして

「やっぱり、いた」
「ん?おお、アイズちゃん。久しぶり」

ガサガサと草木を掻き分けて出てきたのはアイズちゃんだった。
どうやら俺が食べているカレーの匂いを追ってきたようだ。

「アイズーってぇ!?君は!」
「何よ…って、あんた…」

そしてアイズの後方から顔を出したのは、ロキファミリアのアマゾネス姉妹。
ティオネとティオナだった。
因みにまだあの時のドラゴン連続召喚の件を根に持っている。特にティオナが。

「何だ、姉妹も一緒か」
「ねぇねぇ何食べてるのー?」
「ちょ、ティオナ!」
「えー良いじゃん。アイズも食べてるしさ」
「ん、美味しい」

いつの間に…アイズちゃんはいつにもましてフリーダムなようだ。

「あのね。確かにこれは食えば傷はなくなるけど、元を辿れば俺の魔力だからね?」
「は?魔力?食べ物でしょ?」
「そう。元気100倍」
おいこらアイズちゃん。

「おいしー!何コレ!はじめて食べた!」
「本当ね。これなら団長も…」

モウヤンのカレーは無限ではありません。1日3食が限界です。再利用しても10食が限界も良いところです。
それなのに君たちと来たらそんなに食べてくれやがりまして…俺の分ないじゃん。

「ごちそうさま」
「お粗末さま…じゃねえよ!全部平らげやがったな!?」
「うん!美味しかった!」
「だろうな!」
「何怒ってんのよ。小さい男ね」
「他所が内に入ってくることが正しいとでも思ってんの!?」
「こんなところでキャンプしてる方が悪いんじゃない?」

なんと言う暴論。理屈とか完全無視である。

「もう良いわバカゾネス!さっさと帰れ!」
「なっ!?言うに事欠いてバカゾネスですって!?
ティオナなら兎も角聞き捨てならないわね!」
「ウチ(モンスター)のアマゾネスはお前以上に上品だよ!」
「何ですって!?」

段々とヒートアップする言い争いに、アイズとティオネが茅の外になる。
しかしここまで食い下がってくるのなら、実際に引き合わせた方が早いかもしれない。

「と言うわけで召喚!アマゾネスの聖戦士!」

魔方陣から現れたのは、アマゾネスシリーズの一角。
他のアマゾネスとは違って肌の露出は少なく、それでいて筋肉質でもない。

「な、一体何処から…」
「強そう…」
「き、綺麗な人…」

それぞれが感想を口にし、聖戦士に見とれる。

「どうだ!これが気品と言うものだ!」
「あ、主様…恥ずかしいです」
「ほら!羞恥心とかお前らないだろ!こう言うところとかも女らしさがにじみ出ると言うもの!」
「そ、そんなの関係無いでしょ!」
「いいや在るね!男としてオープン過ぎるのも如何なものか!
終始盛ったような物言いが、一部の男以外に通用すると思うなよ!」

ガーン!と、ティオネは雷に射たれたように仰け反った。
まさか、と思う。
ロキファミリアの団長、フィン・ディムナに対して行ってきた様々なアプローチは、全てに於て強引さが見られた。
尽くす女と言うものを体現してきたつもりのティオナだが、それが逆効果であったと言われるならば、これまでのフィンのつれなさにも納得がいくと言うもの。

「先輩、いや師匠!」
「え?師匠?」

ティオネは聖戦士に詰め寄る。
その気迫に、聖戦士はたじろぐ。

「どうか思い人の落とし方についてご教授下さい!
同じ同族のよしみとして!」

恋愛と言うものを焚き付けられたのか、鬼気迫る勢いで聖戦士に弟子入りしてきたティオナだった。
実際に彼氏とかいるわけではない聖戦士も、思い人と言う単語に反応し、嬉々として恋愛談義に花を咲かせ始めるのだった。

「…何でこうなった」
「ティオネは、昔からこう」
「おねぇちゃん……」

3時間に昇る談義に、家出してきたのは間違っていたのか。
そう思わずにはいられないタケルだった。 
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