デカとチビ
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第四章
「子供みたいな声やの声変わりせえへんかったんかとかな」
「実際声変わってないやろ」
「子供の頃からずっとや、顔も背もな」
そういったものもというのだ。
「ずっとこんなんや」
「童顔でチビでか」
「デブやったわ」
それこそ子供の頃からというのだ。
「ほんまにな」
「それで声もか」
「そう言われてきたさかいな」
それでというのだ。
「今こう言われて複雑な気持ちや」
「そやねんな」
「からかわれていじめられたこともあったさかいな」
その声がというのだ。
「けれどこれが飯の種になるってな」
「世の中わからんな、わしもウドの大木だの牛蒡だの言われてきたしな」
まことにしてもだった。
「でかいから邪魔って言われ続けてきたわ」
「実際邪魔になっているぞ」
「でかいからか」
「ああ、おるだけでな」
「そう言われてきた、ほんまにな」
まことはさらに言った。
「それが飯の種になるから」
「わからんもんや」
容姿や声がだ、そして今は歌の収録でいいと言われている。二人はこのことについてしみじみと思いもした。
そのうえでまずは一人ずつ歌って収録した、するとレコード会社の者は二人に言った。
「いい感じです、声も音程も」
「出来てるんやな」
「わし等」
「お上手ですよ」
実際にというのだ。
「これならいけます、ただ」
「ただ?」
「ただっちゅうと」
「何かですね」
考える顔になってだ、レコード会社の者は二人にこうも話した。
「お一人だけだとそれぞれただ上手で声に特徴のある」
「そんな感じの」
「ただの歌手やと」
「ここまで好対照ですから」
それでというのだ。
「バスとソプラノで」
「その男の声やと珍しい」
「そのソプラノで」
「大池さんも凄く珍しいバスです」
彼にしてもというのだ。
「ここまで低声域のバスはです」
「珍しいんやな」
今度はまことが言う番だった。
「わしの声域も」
「はい、そうです」
「そやねんな」
「珍しいですから」
まさにというのだ。
「ここはお二人でデュエットをしましょう」
「それ最初から予定に入ってたな」
「そやったな」
レコード会社の者の言葉を受けてだ、二人はここでもお互いで話した。
「二人で歌う曲は」
「最初からな」
「そやからそこでそう言うても」
「何かな」
「それはそうですが」
しかしという返事だった。
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