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13部分:第十二話


第十二話

                  第十二話   楽屋にて
 コンサート会場でリハーサルを終え楽屋で準備を整える六人。もうその手には楽器や楽譜がある。
「ここはこうしてね」
「うん」
 最後の打ち合わせである。それにも余念がない。
「で、こうやって」
「よし、それで行けばいいね」
「うん、そうね」
「それでまたこうして」
「またこうやって」
 六人でさらに詰めていく。それが終わった後で美奈子が言った。
「はじまる前にね」
「何かあるの?」
 華奈子と楽器組は美奈子に顔を向けて尋ねた。
「うん、最後のおまじないにね」
「おまじないって」
「何?」
「これ」
 美奈子は五人の前にジュースを出してきた。ごく普通の果物のジュースであった。
「ジュースじゃない」
「これが何でおまじないなの?」
「私が作った特製のジュースなのよ」
「特製の」
「そうよ、栄養もあるし皆と一緒に飲んで」
「あっ、わかったわ」
 勘のいい華奈子が最初にわかった。
「皆で飲んで力を合わせられるようにってわけね」
「そうよ」
 美奈子は華奈子の言葉ににこりと笑ってみせた。
「それでどうかしら」
「いいわね、それ」
「バンドは皆でやるものだし」
 楽器組もそれに頷く。
「それじゃあ」
「皆で同じものを飲みましょう」
「ええ」
 六人は頷き合う。そしてそれぞれコップを手に取ってジュースを口に含んで飲んでいく。
 飲み終わると。それぞれの手を重ね合わせていく。
 まずはリーダーである梨花が。続いて美樹、春奈、そして赤音。それから二人が。
 美奈子が置いて最後に華奈子が置く。六人の心が今完全に一つになった。
「ここからが正念場よ」 
 華奈子が何時になく真剣な顔で言う。
「あたし達の本当のはじまり」
「わかってるわ。切り札は二つ」
 美奈子がそれに応えて述べた。
「その二つで勝負よ、いいわね」
「あれね」
「そうよ」
 四人の言葉に応える。
「あれならいけるわ。だから」
「自信を持って」
「今から」
「私達のはじまりを」
「はじめましょう」
「それじゃあ皆」
 最後に華奈子が音頭を取る。
「行くわよ!」
「よし!」
 手に力を込める。それを終え六人は初陣に向かうのであった。


第十二話   完


                 2006・9・16


 
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