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獅子舞と鎧

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第一章

                 獅子舞と鎧
 樋口亜里沙は大きな黒目がちのはっきりとした目と濃い栗色の細い髪質の長い髪の毛を持っている。あどけないがそれでいて大人びた顔立ちで頭の左右に赤い小さなボールが二つある髪飾りを付けている。
 母親は元は八条学園中等部の教諭であり今は亜里沙の小学校のPTA会長である、だが亜里沙にとってはそんなものはどうでもよく今日も地元の生野区鶴橋のゲームセンターを巡っている。
 あるゲームをクリアしてだ、亜里沙いは一緒にいる友人達に笑って言った。
「これでまた一つや」
「ゲームクリアやな」
「無事にな」
「まあこうしたゲームもや」 
 シューティングゲームであった、昔のタイトーのゲームだ。
「うちにかかればざっとこんなもんや」
「亜里沙ちゃんゲーマーやさかいな」
「それこそどんなゲームでもクリア出来るな」
「このゲームもむずいらしいけど」
「クリアーしたな」
「シューティングも格闘も何でもいけるで」
 亜里沙はゲームの席から立ち上がって言った。
「家庭ゲームでもRPGでもシュレーションでもアドベンチャーでもな」
「ゲームやったら何でもやな」
「亜里沙ちゃんの手にかかれば即刻クリアー」
「そうなるねんな」
「この前昔のゲームでドルアーガの塔やったけど」
 八十年代の伝説のゲームだ、アイテムを手に入れる謎が実にわかりにくかった。
「裏もクリアーしたで」
「そういえば前ネットでそのドルアーガのチェックしてたけど」
「それでプレイしてかいな」
「裏もクリアーしたんかいな」
「もうかいな」
「アイテムの出し方さえわかればや」
 このドルアーガもというのだ。
「もう何でもないわ」
「亜里沙ちゃんの場合はか」
「簡単かいな」
「ドラゴンバスターもスカイキッドもやったけど」
 実はレトロゲーム好きである。
「何でもなかったわ」
「それで今もやな」
「ダライアスクリアーしたんやな」
「そうやねんな」
「そうや、そうしたわ」
 実際にというのだ。
「今こうしてな、けどな」
「けど?」
「けどってどないしたんや?」
「うちどんなゲームでもクリアー出来るさかい」
 何処か自慢している言葉だった、自分でもわかっていたがはじめてプレイしたゲームをクリアーして
上機嫌なのでこう言った。
「もっと歯応えのあるゲームやりたいわ」
「むずいゲームかいな」
「もっとむずいゲームか」
「それやりたいねんな」
「何かないんかいな」
 こう言うのだった。
「他に」
「ほな他のお店行こか?」
「お金あったらやけど」
「そうするか」
「まあ五十円はあるわ」 
 一プレイ分である。
「時間もまだあるし」
「ほな他のお店行こか」
「そんでむずいゲームさがそか」
「そうしよか」
「ああ、そうしよ」
 友人達に応えてだ、亜里沙は今までいた店を出た。そのうえで彼女達と一緒に別の店に行った。その店はレトロゲームが他の店よりも多い店だった。亜里沙達の馴染みの店の一つであり鶴橋の商店街の端の方にある。
 赤いスカートと白いブラウスを探してだ、亜里沙は五十円玉を出して言った。 
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