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Three Roses

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第十九話 聖堂にてその十三

「王よ、どうされましたか」
「お顔の色が優れませんが」
「何かありましたか」
「何かないとは言えない」
 それを言えば嘘になるからだ。
「しかしだ」
「近頃ですね」
「どうにも」
「身体がな」
 王自身の言葉だ。
「思わしくない」
「どうもやつれられています」
「無理はされないで下さい」
「若し無理をされれば」
「万が一があれば」
「わかっている」 
 まさにというのだ。
「だからだ」
「無理はされず」
「今日はこれで、ですね」
「休まれますね」
「そうされますね」
「そうしたい」 
 そのやつれ血色の悪い顔で答えた。
「今日はな」
「はい、では」
「今日はこれでお休み下さい」
「それではです」
「またですね」
「明日だ」
 王はこう言ってだ、そしてだった。
 玉座から立ちその場を後にした、廷臣達はその王を見送ってからだった。彼等の間で不安な顔で話をした。
「王もか」
「あの方もか」
「前王そして兄王に続き」
「そうなるのか」
「どうもだ」
 廷臣の一人が言った。
「エヴァンス家の男性の方はな」
「そうだな、早世だな」
「お産まれになって亡くなられる方が多く」
「長生きされる方はおられない」
「王を含めての近頃の三代だけではない」
「エヴァンス朝の王は皆だ」
「どの方も早世だ」
 このことを話すのだった。
「夭折された方が多い」
「そして王もか」
「現王も」
「そうなられるのか」
「あのお顔を観る限り」
「近頃お身体が優れないのは事実」
「兄王と同じだ」
 マリー、マイラの父であり今の王の兄であったこの王と、というのだ。
「あの方とな」
「そういえば確かに」
「あの方もああしたお顔になられてだ」
「すぐにだったな」
「崩御された」
「だからだな」
「あの方もか」
「そうなられるのか」
 彼等は真剣に危惧を覚えていた、それでだった。
 王のこれからのことも不安を感じだしていた、それは王宮の中に次第に色濃いものとなっていって
いった。


第十九話   完


                         2016・8・3 
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