| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

Three Roses

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第十九話 聖堂にてその七

「皇帝は国を守る壁、己の為の宮殿や巨大な陵墓も築かせていて彼等も法で縛っていた」
「それに反発して、ですか」
「皇帝の死後民達が背いた」
「そうだったのですね」
「そうなり国は滅びだ」
 そのうえでというのだ。
「新たな王朝が興りその国は最初の皇帝を否定してだ」
「では法により政は」
「貴族を抑え兵を皇帝に集めても」
「それでもですか」
「その皇帝の政は否定された」
「そうだったのですね」
「その通りだ、政自体は受け継がれ今もあの国を治める基になっているが」
 しかしというのだ。
「その苛烈で冷酷なやり方は否定されている」
「そうなのですね」
「あの国でもですか」
「そうなっていますか」
「非情に徹して政を進めても」
「雪の帝国はわからないがな」
 太子はこの国についてはこう述べた。
「あの国は大陸や東方よりも遥かに厳しい中にある」
「国が、ですね」
「その過酷な中にあるからですね」
「非情な者でないと治められない」
「そうした国であるかも知れないからですね」
「そうだ」
 まさにというのだ。
「あの国はわからないがな」
「ですが太子は」
「お妃様も」
「よいか悪いかは別にしてだ」
 こう前置きしての言葉だった。
「非情には徹しきれない」
「どうしてもですね」
「そこまでは出来ず」
「別の政のやり方を考え選ばれる」
「そうなのですね」
「氷は人を滅多に寄せ付けない」
 非情をだ、皇帝はこう言って否定したのだった。
「火とどちらがいい」
「やはり火です」
「氷よりもです」
「火の方がよいです」
「どうしても」
「そうだな、私も妃も同じだ」
 彼等にしてもというのだ。
「妃は氷ではないし氷にもなれない」
「ではこの国の主になられても」
「それでもですか」
「歯止めも利く」
「そうでもあるのですね」
「私もそうする」
 いざという時はというのだ。
「その時はな、妃を止めるが」
「最初からですね」
「あの方はそこまで非情な方ではない」
「そのことを踏まえて」
「そして動かれますか」
「今後もな、しかし思うに」
 太子はマリーも見た、そしてだった。
 思うところがあったがだ、その考えを消して言った。
「いや、何でもない」
「?といいますと」
「今のは」
「何でもない」
 問うてきた側近達にもこう返した。
「では我々はだ」
「はい、ここでですね」
「このままですね」
「お二方を見守りますか」
「お妃様を」
「そうしよう」
 こう話してだ、そのうえでだった。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧