真田十勇士
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巻ノ六十三 天下統一その十
「数においては優勢であったが」
「凌ぎきられ」
「そして、ですな」
「戦が終わりました」
「そうなりました」
「北条家もじゃ」
まさにと言うのだった。
「見事な方がおられた」
「ですな、それも姫君に」
「このことは忘れられませぬ」
「我等も」
「拙者もだ、敗れても誇りを見せる方もおられた」
北条家の中にというのだ。
「このことは覚えておこうぞ」
「ですな、では」
「兵を収め」
「そのうえで」
「退くとしよう」
こう十勇士達に言い実際にだった、幸村は兵達をまとめ自ら後詰となり下がった。こうして忍城での戦も終わった。
石田はすぐに忍城にこれ以上攻めることはしないと使者を送り約束し陣を解いた、北条側もその彼の軍勢に何もしなかった、だが。
石田はそれでもだ、苦い顔でこう言った。
「攻め落とせなかったことは無念じゃ」
「そう言うな」
その彼に大谷が言う。
「これは致し方のないこと」
「そう言ってくれるか」
「敵があまりにも強かった」
甲斐姫、そして忍城の軍勢がというのだ。
「それではな」
「攻め落とせなかったのも道理か」
「そうじゃ」
まさにというのだ。
「だから気にすることはない、それよりもじゃ」
「兵を率いてか」
「無事に大坂に戻るとしよう」
「ではな」
「うむ、兵達をまとめ」
そしてというのだ。
「小田原の関白様の下に戻ろうぞ」
「ではな」
「うむ、兵達には労いの言葉を贈る」
石田は彼等については確かな声で述べた。
「そして褒美も出そう」
「これまでの健闘を讃えてじゃな」
「実際によくやってくれた」
「それでじゃな」
「今宵は馳走と酒を出す」
この二つをというのだ。
「どちらも好きなだけ口にしよう」
「それではな」
「まずは下がる、では夜にじゃ」
「その時にじゃな」
「兵達に褒美を出そう」
「御主も飲むか」
「わしもか」
石田は大谷の今の問いには少し自嘲する様に笑ってこう返した。
「しくじったがな」
「だから戦の勝敗は常じゃ」
「問題は恥じぬ戦であったかどうかか」
「わしは御主は恥じぬ戦をしたと思っておる」
大谷は石田に確かな声で告げた。
「だからな」
「今宵はか」
「御主がそうしたいならせよ」
「酒を飲むこともか」
「そうせよ」
まさにというのだ。
「よいな」
「わかった、ではな」
「御主は恥を知っておる」
それもわかっているというのだ、石田は。
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