ドリトル先生の名監督
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第十一幕その二
「この大学の教授に声をかけて頂いて」
「それでなのですか」
「今はこちらにいます」
「日本にですね」
「はい、ただ僕はお相撲はしないです」
親方ににこりと笑ってお話します。
「スポーツ自体を」
「そうなのですか」
「監督ですが」
それでもというのです。
「そうした指導はしないのです」
「ではどうしたことをされてますか?」
「医師なので」
「あっ、お医者さんですか」
「食事や稽古のことを医学の見地からです」
「指導されてるんですか」
「怪我がない様に。それに」
親方にさらにお話します。部員の人達の準備体操を見つつ。
「楽しく出来てスポーツマンシップを守って」
「楽しくですか」
「はい、お相撲をするからにはです」
それならとです、先生は親方にお話していきます。
「やはり楽しくないといけないので」
「だからですか」
「そうしたことも指導と言えば偉そうですが」
「されてますか」
「そうしています」
「そしてスポーツマンシップも」
「それもです」
そのこともとです、先生は親方にもお話するのでした。
「指導させてもらっています」
「成程、スポーツをするからには」
「それを守らないとです」
「いけないですか」
「そう思っていますので」
「勝敗は」
「その後です」
澄んだ穏やかな微笑みでの返事でした。
「あくまで」
「勝敗は、ですか」
「その三つの後でと考えています」
「勝てばいいというお考えではないのですね」
「スポーツに勝敗は欠かせないですね」
先生もわかっています、このことは。
ですがそれと共にです、こうも考えているのです。
「しかし怪我をしては下手をすれば一生のことですし」
「楽しくしないと」
「そのスポーツをしたことにもなりません」
「そしてスポーツマンシップも」
「守らないとです」
「お相撲ではない」
「どのスポーツでもそれがないとです」
それこそというのです。
「暴力でしかないので」
「その通りですね、では」
「僕は勝敗以上にです」
「その三つをですね」
「皆に教えてもらっていました」
「わかりました、では」
親方はここまで聞いてです、先生の言葉に頷きました。
そしてです、先生にこう言ったのでした。
「ではこれから」
「はい、お互いにですね」
「その三つを守ってやっていきましょう」
「最後まで、ですが」
親方は先生を見てです、こうも言ったのでした。
「先生の様なことを言われた方ははじめてです」
「そうなのですか」
「はい、その三つが勝敗よりも大事という方は」
本当にというのです。
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