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聖闘士星矢 黄金の若き戦士達

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442部分:第六十一話 対話その七


第六十一話 対話その七

「ですが慈愛が強過ぎます」
「しかも無意味な慈愛が」
「ああなったのは何故か」
 男の声の色からいぶかしむものは全く消えていなかった。むしろ濃くなっていく一方であった。
「それは。何故か」
「わかりません」
「思えばはじまりから違いましたが」
「我等とは」
「女から、母から生まれたのではない」 
 それがアテナである。
「それにあるのか」
「わかりません」
「それに生まれてすぐに人との交わりをはじめましたし」
「それもあるのでしょうか」
「どちらにしろだ」
 男はまた言うのだった。
「それで我等の前に立ちはだかるのならばだ」
「我等と同じ存在であっても」
「それでもですね」
「そうだ。容赦することはない」
 そうだというのであった。
「その時はな。よいな」
「はい、わかっております」
「それは」
 控える者達もこう応えるのだった。
「その時はあくまで」
「アテナを倒します」
「我々の手で」
「御前達の手に負えぬのならば」
 男はその場合について言及した。
「私が出向いて自らアテナの首を取ってみせよう」
「貴方様がですか」
「御自ら」
「御前達ならばできると信じている」
 男はそれは信じると告げた。しかしそれでも言うのであった。
「しかしだ。若し情によりどうしてもというのならば私がだ」
「いえ、それには及びません」
「その通りです」
 控えている者達は虚勢を張るようにして次々に述べるのだった。
「我等とてここにいる身」
「最早アテナとは違いますので」
「ですから」
「わかった。では信じよう」
 男は彼等のそうした言葉を受けて静かに述べるのだった。
「御前達の今の言葉をな」
「そうして頂けると何よりです」
「我等にとっても」
「では。話はこれで終わる」
 男は控えている者達の言葉を聞き終えたうえで述べた。
「これでな」
「はい、それでは」
「我々もこれで」
「いや、待て」
 退こうとする彼等を呼び止めもするのだった。そうした意味で話を完全に終えたとは言えなかった。
「話は終わったがだ」
「はい」
「まだ何か」
「食事にするとしよう」
 それだというのであった。
「食事にな。丁度いい時間ではないか」
「言われてみれば確かに」
「そうした時間です」
 彼等も男の今の言葉に頷いた。するとすぐに彼等が今いる豪奢な部屋に美しく着飾った美女達が静々と出て来た。それぞれ持っている金と銀を合わせたかの如き美しさを持つその盆の上に黄金の林檎を置いている。林檎の他にも様々な馳走を持って来ている。
「では丁度いい。昼食にしよう」
「それでは今ここで」
「我等もですか」
「我が愛すべき戦士達も呼ぶのだ」
 男はこうも告げた。
「あの者達もだ」
「それではあの者達も我等の相伴に預からせ」
「我等の慈愛を与えましょう」
「これが愛というものだ」
 男はまた言うのだった。
「神の愛だ。アテナの言う愛は誤った愛だ」
「全くです」
「何を間違えたのか、あれは」
「過ちは正さなければならぬ」
 男の前にその林檎が出される。まずはそれを手に取るのだった。
「それによりこの場所を去ったというのにそれでもまだ」
「わからぬとは」
「愚かなことです」
「知の女神であっても」
 アテナのその司るものに一つについてまた言及した。
「わからぬらしいな」
「はい、それにより過ちを犯したことすら」
「わかってはいません」
「ならばだ。容赦することはない」
 話は戻っていた。
「それだけだ。いいな」
「では我等は今は」
「愛する戦士達も呼びそのうえで」
「神の食事を食するとしよう」
 その黄金の林檎を手にしての言葉である。彼等は今その特別なものを味わっていた。それは地上にも海界にも冥界にも決して存在し得ないものであった。


第六十一話   完


                 2009・10・15
 
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