ハイスクールD×D ~赤と紅と緋~
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第1章
旧校舎のディアボロス
第7話 駒の特性
朝、俺はいつも通り、千秋と二人で登校していた。
「・・・・・・あー、昨夜はマズったなぁ・・・・・・」
魔法陣でジャンプできなかった、契約は取れなかった、堕天使と遭遇しちまうと、昨夜は色々とやらかしてしまった。
堕天使のことを部長に報告したら──。
『困ったことをしてくれたわ。あなたが死んでおらず、あろうことか悪魔として生き返ってしまったことを堕天使側に知られてしまうなんて。まぁ、堕天使と接触したのは事故だから仕方ないわね』
少し怒り気味でそう言われてしまった。
「部長はイッセー兄のことが本当に心配だから、あんなふうにキツくなっちゃったんだよ」
それはなんとなくわかるんだけど。
部長を含めたグレモリー一族は身内や眷属への情愛が深いって、明日夏も言ってたからな。
それでもなぁ・・・・・・はぁ、部長、まだ怒ってたらどうすっかなぁ・・・・・・?
「はわう!」
「ん?」
「?」
突然、後方から声が聞こえると同時にボスンと路面に何かが転がるような音がする。
振り向くと、そこにはシスターが転がっていた。
手を大きく広げ、顔面から路面に突っ伏した、なんともマヌケな転び方をしていた。しかも、パンツ丸出しだよ!
ついつい、シスターのパンツをガン見してしまう!
「・・・・・・イッセー兄」
千秋にジト目で呼ばれ、俺は慌ててシスターに駆け寄って手を差し出した。
「だ、大丈夫っスか?」
「あうぅ。なんで転んでしまうんでしょうか・・・・・・ああ、すみません。ありがとうございますぅぅ」
シスターが俺の手を掴むと、手を引いて起き上がらせる。
ふわっ。
それと同時に、シスターのヴェールが風に飛ばされ、シスターの素顔が露になる。
──か、かわいい。
俺は一瞬心を奪われていた。
金髪の美少女。グリーン色の双眸はあまりにもに綺麗で引き込まれそうだった。
「あ、あの・・・・・・」
「ああ、ごめん!」
俺がシスターに見惚れて、いつまでも手を握っていたからか、シスターが戸惑いの声をあげる。それを聞いた俺は慌てて手を離す。
「これ」
「あっ、ありがとうございます」
千秋(なぜか、少し不機嫌そうだった)が風に飛ばされたヴェールをシスターに手渡す。
にしても、かわいい! まさに俺の理想の女子・バージョン金髪美少女!
「あのぉ・・・・・・」
シスターがなんか、もじもじしながら何かを言い淀んでいた。
やがて、言い淀んでいた言葉を口にする。
「・・・・・・道に・・・・・・道に迷って、困っているんです」
―○●○―
俺と千秋は道に迷ったと言うシスターに道案内をしてあげていた。
「旅行?」
「いえ、違うんです。この町の教会に赴任することになりまして」
人事異動みたいなもんか? 教会も大変だねぇ。
「言葉が通じる親切な方々に会えてよかったぁ。これも主のお導きですね」
道行く人に道を訊こうにも、日本語がしゃべれず、言葉が通じなかったみたいだ。
俺がシスターと会話できるのは、悪魔の持つ『言語』の力によるものだ。
俺が話す言葉を聞く人は聞き慣れた言語として変換されて聞こえるみたいだ。逆に俺が聞くすべての言語の言葉は日本語に変換されて聞こえる。
ちなみに、千秋はちゃんとシスターの話す言語で会話している。
話すだけなら、明日夏と千秋は英語や中国語などのメジャーな言語を話すことができるみたいだ。
それにしても、シスターの胸元で光っているロザリオを見ていると最大級の拒否反応を覚えてしまう。
悪魔は聖なるもの──例えば十字架なんかには触れることはできない。
チラッと見ただけでこの反応だからなぁ。
「うわぁぁぁぁん!」
道中にある公園の前を横切ろうとしたら、公園から子供の泣き声が聞こえてきた。
見ると、膝にケガをした子供がいた。
転んじゃったのか?
すると、シスターが子供のそばまで駆け寄る。
「男の子ならこのくらいのケガで泣いてはダメですよ」
シスターは子供の頭をなでながら言うと、子供のケガした膝に手を当てる。
次の瞬間、シスターの両手の中指に指輪みたいなのが現れ、淡い緑色の光を発した!
そして、光に照らされた子供の膝から傷が消えていく。
「っ!」
その光景を見た瞬間に左腕が疼き出した!
千秋が心配そうに小声で話しかけてくる。
(・・・・・・イッセー兄、大丈夫?)
(・・・・・・ああ。ちょっと疼いただけだ。それよりも千秋、あれって・・・・・・)
(うん。神器で間違いないよ)
てことは、この疼きは俺の神器が彼女の神器に共鳴してるってことか?
「はい、傷はなくなりましたよ。もう大丈夫」
シスターは子供の頭をひとなですると、俺たちのほうへ顔を向ける。
「すみません。つい」
彼女は舌を出して、小さく笑う。
「ありがとう! お姉ちゃん!」
子供は笑顔でシスターにお礼を言うと、元気よく走っていった。
「『ありがとう! お姉ちゃん!』だってさ」
俺が通訳すると、彼女は嬉しそうに微笑んだ。
それから、俺たちは再び歩き出す。
「驚いたでしょう?」
「いやぁ、ははは。キミ、すごい力持ってるんだねぇ?」
「神様からいただいた素晴らしい力です・・・・・・そう、素晴らしい・・・・・・」
彼女は微笑みながら言うけど、その笑みはどこか寂しげだった。
何かあるのかもしれないけど、深く追求しちゃダメだよな。
「あっ、あそこですね?」
しばらく歩いていると、目的地である教会が見えてきた。
「ああ。この町の教会っていったら、あそこだけだから」
「よかったぁ! 本当に助かりました!」
シスターがお礼を言ってくるけど、俺はそれどころじゃなかった。
ゾクッ!
教会が見えてきたあたりから、ずっと悪寒が体中を走っていた! いやな汗もかなりかいてる!
悪寒の原因は当然、悪魔である俺が教会に近づいたからだろうな。神様とか天使に関係する教会なんて、敵地もいいところだからな。
部長にも神社や教会には近づかないようにって強く言われたしな。
「是非お礼がしたいので、ご一緒に来ていただけませんか?」
「い、いや、ちょっと用事があるんで!」
「・・・・・・学校もあるし」
「・・・・・・そうですか。分かりました。また今度、お礼をさせてください。あ、私、アーシア・アルジェントと申します。アーシアと呼んでください」
そういえば、まだ自己紹介してなかったな。
「俺、兵藤一誠。イッセーでいいよ」
「私は士騎千秋。私も名前でいいよ」
「イッセーさん、千秋さんですね。日本に来て、すぐにお二人のような親切でやさしい方々と出会えて、私は幸せです!」
結構大袈裟だなぁ、この子。
「是非ともお時間があるときに教会までおいでください! 約束ですよ!」
「えっ、ああ、うん。わかった。じゃあ、また」
「はい! またお会いしましょう!」
俺と千秋はそこでアーシアと別れ、学校に向かうのだった。
アーシアは俺たちの姿が見えなくなるまで笑顔で手を振っていた。
本当にいい子なんだなぁ。
―○●○―
「二度と教会に近づいてはダメよ」
夜の部室にて、イッセーは部長に厳しく叱られていた。理由は悪魔であるイッセーが教会に近づいたからだ。そのイッセーが教会に近づいた理由は、道に迷っていたシスターを送り届けるためらしい。
「教会は私たち悪魔にとって敵地。踏み込めば、それだけで神側と悪魔側で問題になるの。いつ光の槍が飛んでくるのかわからなかったのよ?」
「マ、マジですか?」
それを知って、イッセーは身震いをする。
「千秋もどうして、イッセーを教会に近づけるようなマネをしたのよ!」
「すみません。でも、もし他にも教会関係者が近くにいるかもしれないと思ったら、あそこでイッセー兄を一人にするのは危険だと思ったので・・・・・・杞憂でしたけど・・・・・・」
なるほど。なんで千秋がイッセーの身を危険に晒すかもしれない教会に近づくのをよしとしたのか気になったが、そういうことか。
まぁ、確かに、仮にそのシスターを迎えに来た教会関係者が近くにいたら、イッセーを一人にした瞬間に悪魔祓いをされてたかもしれないからな。
「まったく。いいこと、イッセー。教会の者と一緒にいることは死と隣り合わせと同義。とくに教会に属する悪魔祓いには神器の使い手だっているんだから。イッセー。悪魔祓いを受けた悪魔は完全に消滅するの。無、何もなく、何も感じず、何もできない。それがどれだけのことか、あなたにはわかる?」
「・・・・・・い、いえ・・・・・・」
「ゴメンなさい。熱くなりすぎたわ。とにかく、今後は気をつけてちょうだい」
「はい」
それにしても、イッセーがシスターを案内した教会ってのは、あそこにあるやつのことだよな。このへんの教会っていったら、あそこだけだからな。
だが、あの教会は確か、廃棄されたやつのはず。──そういえば、イッセーを襲った堕天使。もし、あの教会を堕天使が根城にしているのだとすると、そのシスターは教会を追放された者。
そう考えれば、あの教会にシスターが赴任するっていうのも辻褄が合う。
だが、腑に落ちないことがある。なんで堕天使は部長の管理するこの町に居座る?
堕天使がこの町にいるのは、イッセー以外に別の目的がありそうだな。
「あらあら。お説教は終わりましたか?」
いつの間にか、副部長がイッセーの背後にいた。
「朱乃。どうしたの?」
「さきほど、大公より連絡が」
「大公から?」
「この町でまたはぐれ悪魔が見つかったそうですわ」
―○●○―
明日夏が討伐したのと別のはぐれ悪魔がこの町で見つかり、それを討伐するよう、上級の悪魔から部長に届けられた。
現在、俺を含めたオカルト研究部のメンバーは、町はずれの廃屋の近くまで来ていた。この廃屋にはぐれ悪魔がいるらしい。
ちなみに、同行メンバーには明日夏と千秋もいる。
千秋が俺の身を案じて同行を部長に頼み、部長がそれを了承してくれたからだ。
朱乃さんがはぐれ悪魔について教えてくれる。
「この先の廃屋で誘き寄せた人間を食べていると報告がありまして」
「た、食べ・・・・・・ッ!?」
「それを討伐するのが、今夜のお仕事ですわ」
聞くと、明日夏が倒したはぐれ悪魔も同じことをやろうとしていたけど、運悪く、最初の標的に明日夏を選んでしまったがために、明日夏によって討伐されたみたいだ。
「主を持たず、悪魔の力を無制限に使うことがいかに醜悪な結果をもたらすか」
「んん? どういう意味だ、木場?」
「ようは醜いバケモノになるってことだ。俺が討伐した奴もそういえる存在だった」
バケモノ、か・・・・・・確かに、やってることはバケモノの所業かもな。
「イッセー」
「あっ、はい、部長」
「あなた、チェスはわかる?」
「チェスって、ボードゲームのあれですか?」
「主の私が『王』で、『女王』、『騎士』、『戦車』、『僧侶』、『兵士』、爵位を持った悪魔は、この駒の特性を自分の下僕に与えているの」
駒の特性?
「私たちはこれを『悪魔の駒』と呼んでいるわ」
「なんでわざわざ、そんなことを?」
「これから見せてあげるわ。とにかく今夜は、悪魔の戦いというものをよく見ておきなさい」
「は、はい」
部長の話を聞いているうちに、廃屋に着いた。
「・・・・・・血の臭い」
中に入ると、小猫ちゃんが袖で鼻を覆いながら呟いた。
「・・・・・・来たな」
今度は明日夏が呟くと、室内に低い声音が響いた。
「不味そうな匂いがするわぁ。でも、美味しそうな匂いもするわぁ。甘いのかしらぁ? 苦いのかしらぁ?」
「おっぱい!」
思わず叫んでしまった。だって見えたんだもん。
暗がりからゆっくり姿を現したのは──上半身が裸の女性だった!
かなりの美人だ。そして何より、おっぱいがまるみえ! しかも、かなり大きい!
その見事な大きさの生乳をついついガン見してしまう!
──でも、なんで浮いてるんだ?
なぜか、女性が浮いており、下半身のほうが暗闇に隠れてよく見えなかった。
「はぐれ悪魔バイサー。主のもとを逃げ、その欲求を満たすために暴れ回る不逞の輩。その罪、万死に値するわ。グレモリー公爵の名において、あなたを吹き飛ばしてあげる!」
部長が啖呵を切るが、はぐれ悪魔バイサーは余裕の表情だった。
「こざかしい小娘だこと。その紅い髪のように、あなたの身を鮮血で染めてあげましょうかぁ!」
バイサーは自分の胸を揉みしだきながら言う。
「雑魚ほど洒落の効いたセリフを吐くものね」
バイサーの余裕に対して、部長は冷静に鼻で笑うだけだった。
一方、俺は未だにバイサーの胸をガン見してました。
「こ、これがはぐれ悪魔・・・・・・ただの見せたがりのお姉さんにしかぁ──」
「・・・・・・イッセー。鼻の下を伸ばすのは奴の全体を見てからにしたらどうだ?」
明日夏がそんな言ってくるが、どういうことだ?
そして、バイサーの下半身をよく見てみると、暗がりからようやく隠れていた下半身が現れた。けど──。
「なぁっ!?」
俺はバイサーの下半身を見て驚愕する。
なんせ、その下半身は巨大な腕と足の四足歩行のバケモノとしか言いようがないものだった。蛇の尾があり、独立して動いていた。
「さっき木場が言ってただろ? 『醜悪な結果をもたらす』って。あれがその結果だ」
あ、あんないいおっぱいなのに、もったいない!
「あれ? あれ・・・・・・魔法陣じゃね!?」
バイサーが揉みしだいている胸を凝視していると、魔方陣が浮かんでいた!
そして、魔法陣から魔力が撃ち出された!
「うわっ!?」
バイサーの攻撃に対して皆がとっくに回避行動を取るなか、俺はボーッと突っ立ってしまっていたが、明日夏のおかげで事なきを得た。
ジュゥゥゥ。
バイサーの魔力が当たった場所が音をたてて溶けていた!
「ヒェェッ! 確かにバケモノだわ!」
「油断しちゃダメよ。祐斗!」
「はい!」
部長の命を受けて、木場が飛びだした。
速い! なんて速さだ! 速すぎて見えないくらいだ!
部長が『悪魔の駒』の説明を再開してくれる。
「祐斗の役割は『騎士』。特性はスピード。そして、その最大の武器は剣」
部長が説明しているうちに、木場がバイサーの懐に現れたと思った瞬間、バイサーの巨大な腕が斬り落とされていた!
「ウギャアアアアアアアアアアアッッ!?」
腕を斬られたバイサーの悲鳴がこだまする。
そんな悲鳴をあげるバイサーに、小柄な人影が近づいていく。小猫ちゃんだ!
それを見たバイサーは顔を醜く変形させ、胴体が縦に裂けて、牙が生えた大きな口が現れた!
「危ない! 小猫ちゃん!」
「死ねえええええええッ!」
バイサーはそのまま倒れ込むように小猫ちゃんに襲いかかり、なんと、小猫ちゃんはそのまま巨大な口に飲み込まれてしまった!
「大丈夫」
「え?」
部長に大丈夫と言われ、バイサーのほうを見る。
「フッフフフフフ、アッハハハハハ──っ!?」
バイサーは勝ち誇ったかのように笑い声をあげていたが、その顔が驚愕に染まる。
バイサーの巨大な口がこじ開けられたからだ。
そこには、服はボロボロだけどまったくの無傷の小猫ちゃんがいた。
「小猫は『戦車』よ。その特性はシンプル。バカげた力と防御力。あの程度じゃ、ビクともしないわ」
「・・・・・・ぶっ飛べ!」
小猫ちゃんはそのまま、体を捻るように口から出ると、強烈な右フックで牙を砕きながらバイサーを吹っ飛ばした!
・・・・・・小猫ちゃんには、逆らわないようにしよう。小突かれただけでも死んじゃいそうだ。
「朱乃」
「はい、部長。あらあら、どうしようかしらぁ? うふふ」
部長に命じられた朱乃さんはいつものニコニコフェイスでバイサーに近寄っていく。
なぜだろう。いまはその笑顔がこわい。
すると、部長の後方で、さっき木場が斬り落としたバイサーの両腕の片方が、ぴくりと動いた! そして、跳ねるように飛んで部長へと襲いかかる!
「部長!」
反射的に俺は神器を出して、部長に襲いかかろうとしていたバイサーの腕を殴り飛ばしていた。
「あ、ありがとう・・・・・・」
尻もちをついた部長から呆けたように礼を言われ、思わず少し照れてしまう。
「あぁ、いえ。体が勝手にっていうかぁ──」
「イッセー!」
「ッ!?」
そこへ、バイサーの腕は再び動き出して、今度は俺のほうに襲いかかってきた!
ドスッ!
俺が身構えた瞬間、バイサーの腕は矢みたいなものによって空中から撃ち抜かれた!
「イッセー兄、大丈夫!」
俺の横に千秋が空中から降りてきた。
その手には弓みたいなものが握られている。それで空中からあの腕を撃ち抜いたのか。
バイサーの腕は矢で打ちつけられた状態で未だに動こうとしていた。
そんな腕に千秋は近寄り、至近距離で矢を射る!
バイサーの腕はそれで今度こそ動かなくなった。
「て、そうだ! 腕はもう一本──」
慌てて、もう片方の腕のほうを見ると──。
「こっちなら、心配いらねぇよ」
バイサーの腕は明日夏に踏みつけられていて、もがいていた。
その明日夏の手には、刀のようなものとその刀の鞘らしきものが握られていた。
ザシュッ!
明日夏はもがく腕に刀を突き刺した!
それにより、こちらの腕も動かなくなった。
それを確認した明日夏は、刀を腕から抜き、刀身についた血を振り払ってから鞘に収めた。
明日夏も千秋も、こんな動くバケモノの腕を見ても、まったく動じずにあっさりと対処してのけた。
これが俺の知らなかった賞金稼ぎとしての二人の姿か。
「朱乃」
いつの間にか立ち上がっていた部長が朱乃さんへと命を下した。
「あらあら、おイタをするイケナイ子は、お仕置きですわね」
そう言う朱乃さんの手から、雷が迸っていた!
「彼女は『女王』。他の子の全ての力を兼ね備えた、無敵の副部長よ」
「ぐぅぅぅぅっ・・・・・・」
部長が説明しているなか、バイサーは弱りながらも、朱乃さんを睨みつける。
朱乃さんはそれを見て、不敵な笑みを浮かべた。
「あらあら、まだ元気そうね? なら、これはどうでしょう?」
朱乃さんが天に向かって、手を翳す。
カッ!
刹那、屋内が強く照らされ、バイサーに雷が落ちた!
「があああああああああああっっ!?」
バイサーの凄まじい叫び声が屋内に響く中、部長は平然と説明を続ける。
「魔力を使った攻撃が得意なの。その上、彼女は究極のSよ」
S!? 究極のSですか!?
「あらあら、まだ元気そう? どこまで耐えられるかしらぁ?」
「ぎゃぁぁぁあああああああああああっっ!?」
「うふふふふふふふ!」
わ、笑ってる。雷で苦しんでるバイサーを見て、心底楽しんじゃってるよ、あのヒト!
明日夏と千秋もドン引きしてるし!
「朱乃。それくらいにしておきなさい」
部長の言葉を聞いて、ようやく、朱乃さんが雷による攻撃をやめた。
「もうおしまいなんて。ちょっと残念ですわね。うふふ」
うわぁ。朱乃さん、全然物足りなさそうな顔をしているよ。部長が止めなかったら、まだまだ続いてたんだろうなぁ。
部長がもはや虫の息のバイサーに歩み寄る。
「最後に言い残すことはあるかしら?」
「・・・・・・・・・・・・殺せ・・・・・・」
「そう。なら──消し飛びなさい」
ドンッ!
部長の手のひらからドス黒い魔力の塊が撃ち出され、バイサーの巨体以上の大きさの塊がバイサーを覆う!
「チェックメイト」
魔力が宙へと消えた瞬間、バイサーの姿はそこにはなかった。
部長が言った通り、消し飛んだようだ。
「終わったわ。さあ、帰るわよ」
「「「はい、部長」」」
部長の言葉に、部員の皆もにこやかに返事をする。返事をしていないのは、さっきの部長の魔力を見て呆気にとられている俺や明日夏に千秋だけだった。
と、そうだ。
「あ、あの、部長」
『悪魔の駒』のことを聞いて、部長に訊きたいことがあったんだった。
「なあに?」
「それで、俺は? 俺の駒っていうのか、下僕として役割はなんなんですか?」
ただ、正直このときいやな答えを予感していた。
「『兵士』よ」
「『兵士』って・・・・・・あの・・・・・・」
「そう。イッセー。あなたは『兵士』」
『兵士』・・・・・・一番下っ端のあれぇぇぇっ!?
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