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Three Roses

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第十九話 聖堂にてその五

「出来ない、そもそもだ」
「そもそも?」
「そもそもといいますと」
「そなた達に出来るか」
 側近達にも問うたのだった。
「それは」
「そうしたことはですか」
「その皇帝の様なことが出来るか」
「我々にしても」
「その立場で」
「そなた達にも領民がいる」
 貴族としてだ、そうした者達を擁しているのは当然だ。それで太子は彼等にそれぞれの立場から問うたのだ。
「その領民達、そなた達の臣や領地にだ」
「あの皇帝の様に出来るか」
「容赦なく殺し圧倒的な恐怖で従わせる」
「そうしたことが」
「微塵の情もかけずな」
 そのうえでというのだ。
「出来るか」
「そう言われますと」
「どうしてもです」
「我々も無理です」
「考えてみますに」
「とても」
「そうだな、そこまで出来るならばだ」
 太子は側近達の言葉を聞いてまた言った。
「まさに怪物だ」
「呵責なき粛清で支配を確立する」
「それは、ですね」
「滅多な者では出来ない」
「そうなのですね」
「遠い東の果てにも帝国がある」
 絹や陶器、茶を生み出す国だ、その豊かさは大陸の全ての国を合わせたよりも遥かに大きいとさえ言われている。
「あの国の古の最初の皇帝はそうだったらしい」
「容赦なくですか」
「粛清を繰り返し恐怖で支配した」
「国と民達を」
「法の下貴族の力を全て削ぎだ」
 そしてというのだ。
「己を絶対者とし逆らう学者達を生き埋めにし書を燃やしたという」
「そうして民を圧倒的な力で治めた」
「法の力を使い」
「自身が絶対者となったのですか」
「そうしたという」
 その東の最初の皇帝はというのだ。
「雪の国よりも遥かに東にあるな」
「あの国のことは我々も聞いています」
「皇帝の力が強くですね」
「神の教えも法も軍も全て皇帝の下にある」
「まさに絶対者だと」
「神の様な力を持っていると」
「そうだ、かつてこの大陸を一つにしていた帝国の様にだ」
 ロートリンゲン家の帝国とは違う、この帝国は西の帝国とされ雪の国の帝国は東の帝国だとされている。それぞれその帝国の後継者とされている。
「いや、さらにだ」
「皇帝の力が強く」
「絶対者として国を治めている」
「その広大で豊かな国をですね」
「多くの民達を」
「その基盤を完成させたのがだ」
 まさにというのだ。
「その最初の皇帝だ」
「呵責ない圧倒的な力で、ですか」
「国を治めたのですか」
「そうして国の形を創造したのですね」
「法による支配だ」
 その皇帝が推し進めたものはというのだ。 
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