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Three Roses

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第十九話 聖堂にてその一

                  第十九話  聖堂にて
 歴代の王家の柩が収められている聖堂は外だけでなく中も壮厳な趣の中にあった、鋭角の屋根であり大理石は白く整った峻厳さを見せている。
 柱は古代の神殿のそれを思わせるもので青や緑のステンドガラスから光が差し込みそれぞれのガラスの色の光で白い聖堂の中を照らしている。
 床も白くまるで鏡の様に磨かれている。そこに代々の王達の柩が置かれている。
 その中に入りだ、太子は彼の側近達に小声で誰にも聞こえない様に言った。
「いい聖堂だな」
「はい、神を感じます」
「主がおられる場所ですね」
「この国にも神と主がおられる」
「そのことを感じさせてくれます」
 側近達も答える。 
 太子は聖堂の上に舞う天使達の像も見た、そして今度言うことはというと。
「天使もおられてだ」
「ここで眠る王達を護っている」
「そしてこの国も」
「そうですね」
「そうだ、しかしだ」
 ここでこう言ったのだった。
「神と主、天使達だけでなくだ」
「人もですね」
「我々自身も務めなければなりませんね」
「国を守る為には」
「そうしないといけないですね」
「神は自ら動く者を助けられる」
 それ故にというのだ。
「人も動かなくてはならない」
「国を護る為には」
「そして救われる為には」
「必ずですね」
「自ら動かねばなりませんね」
「怠惰な者は救われない」
 太子の今の言葉は厳しい響きがあった、鞭の様な。
「決してな」
「ですね、では」
「我々もまた然りですね」
「自ら動く」
「そうせねばなりませんね」
「必ずな」
 まさにと言うのだった。
「誰であろうとも」
「我々もまた」
「然りですね」
「私もだ、そしてだ」
 聖堂の中で礼拝に向かう姉妹も見て言うのだった。既に廷臣や彼等は畏まってそれぞれの場所で見ている。マイラとマリーはその彼等に見つつ二人の王の柩の前に向かっていた、
「妃もマリー王女もだ」
「お二人も」
「そうですね」
「自らだ」
「動きそして」
「救われるべきですね」
「妃は怠惰ではない」
 マイラを見つつの言葉だ。
「決してな」
「むしろ勤勉ですね」
「常に書を読まれ学ばれていてです」
「国のことを考えています」
「そのうえで日々励んでおられます」
「側近達の話も聞いていてだ」
 さらに言う太子だった。
「人を見極めようともしている、そうしたものを見るとだ」
「勤勉な方ですね」
「自ら動いておられる」
「では救われる」
「神にそうして頂けるのですね」
「私はこうした言葉を聞いたことがある」
 太子は側近達に謹厳な声で述べた。
「正義は遅れることがある」
「それが遅れることは」
「時としてですね」
「そうだ、だが来ないことはない」
 それは決してというのだ。 
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