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ドリトル先生の名監督

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第十幕その七

 ハンバーグをお箸で切ってからそれをおかずにして御飯を食べてです、日笠さんに今度はこんなことを言いました。
「確かに美味しいですね」
「はい、そうなんです」
「ここの食堂もお料理が美味しいんですね」
「ですから時々ですが」
「日笠さんもですか」
「ここで食べています」
 そうしているというのです。
「それも美味しく」
「そうなんですね」
「ハンバーグ以外のお料理もありますので」
「では機会があれば」
「召し上がって下さい」
「そうさせてもらいます」
 こう応えるのでした、そしてこのお昼はです。
 日笠さんは先生と楽しくお昼を食べました、そのうえでご自身の仕事に楽しく戻ったのですが。
 研究室に戻って講義に行く用意をしている先生にです、動物の皆は笑顔で言いました。
「よかったね」
「今日のお昼よかったね」
「楽しかったね」
「いいお昼だったね」
「うん、そうだね」
 実際にとです、先生も答えます。
「今日のお昼も美味しかったよ」
「美味しかった?」
「先生それだけ?」
「ハンバーグ定食が美味しかっただけ?」
「あとフルーツもっていうの?」
「うん、凄くね」
 気付かないまま答える先生でした。
「よかったね」
「またアウトよ」
「またまたね」
「本当にそれは駄目」
「相変わらずね」
「そこでそうして終わるからね」
「先生は駄目なのよ」
 こう皆で言いますが。
 先生はその皆にです、どうしてかなというお顔で言うのでした。
「どうして駄目かな」
「だからね、そこで美味しいってだけでしょ」
「それだけなのが駄目なの」
「一緒に御飯を食べてね」
「日笠さんとね」
「それで終わりなのがね」
「しかもティーセットも作ってもらうでしょ」
 このことも言う皆でした。
「それで明日も一緒でしょ」
「けれどそれで終わりってね」
「もう失格」
「いつも通りね」
「何が失格で何がいつも通りなのか」
 本当にわかっていない先生です。
「僕にはね」
「全く、だから先生は縁がないんじゃなくてね」
「気付かないのよね」
「それも全然」
「困ったことに」
「ううん、本当にわからないよ」
 どうして皆が呆れているかです、先生には。
「けれどね」
「けれど?」
「けれどっていうと?」
「これから講義だから」
 それでというのです。
「行って来るね」
「ええ、じゃあね」
「行って来てね」
「それで頑張ってね」
「ちゃんと」
「そうしてくるね、じゃあね」
 こうしてです、先生は何も気付かないまま講義に行くのでした。お仕事はちゃんとする先生でした。そして晩御飯の時は。
 トミーが作ってくれたカレーを見てです、そのトミーに尋ねました。
「今日のカレーはあれだね」
「はい、この神戸のしかも」
「長田区のカレーだね」
「八条町のある」
 まさにそこのというのです。
「カレーです」
「ぼっけカレーだね」
 見ればお肉はすじ肉でじっくりと煮られています。 
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