HUNTER×HUNTER 六つの食作法
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017話
「おいこっちだぜ」
「………」
幻影旅団からキルアとゴンを逃がす為に一人、旅団に連れて行かれたシャネルは車に乗せられ廃墟街一角の大きいビルへと連行されていた。四方を旅団のメンバーに囲まれ逃げ出せる隙もない上にウボォーギンには肩を組まれてしまっている、100%逃げ出す事が出来ない。奥へと連れて行かれる、そこにいたのは残りの旅団。全員が凄まじい使い手だと直ぐに把握できる程に……。
「そいつ如何したね」
「おう中々強そうだからよ、力比べでもしてやろうかと思ってよ」
「んっそいつ確か一昨日シズクとやった奴だな」
瓦礫の上に腰掛けている男がシャネルを見つめながらそう呟いた。それを聞いたウボォーギンはへぇっと声を漏らした。
「おいシズク」
「何。あっ一緒に机粉砕した人だ」
「……如何いう覚え方ァ……?」
「へへへっこれは更に面白くなりそうじゃねえか……おい早速やるぜ」
掛かった獲物が想像以上のものなのが嬉しいのか嬉々として瓦礫を運んでくるとそこへ腕を置く。
「おら早くしろよ」
「……ちっ解ったよ」
右腕の袖をまくり腕を置きがっちりとウボォーの手を組み合わせる。周囲に他のメンバーが囲いつつ逃げられないようにしている、もう片腕で瓦礫をがっちりと掴む、腹いせに相手の手を握りつぶす勢いで。そうしたらウボォーも同じように返してくる。不思議な連帯感を感じつつ、言葉を口にする。
「「レディ……ゴッ!!」」
同時にスタートの宣言をし右腕に力を込め相手の腕を倒しに掛かる、が
「ぐぐぐぐうううう!!!(このパワーシズクって子以上か…!!)」
「むううううううう!!!(良いパワーしてやがるぜ……!!)」
相手の力の凄さを理解していく程に腕へと込められていく力は増え続けていく。台替わりにして入る瓦礫を掴む手の力も上がっていき既に双方の手は瓦礫に埋まっている、右肘も徐々に瓦礫を砕きつつ潜りつつある。旅団一同はウボォーギンの力と同等クラスの腕力に感心しつつも警戒している。
「てめぇ名前は……!?」
「シャネルだ……ウボォーさんよぉ!!!」
「そうか、シャネルか……覚えたぜぇえ!!!」
名前を確認すると更に力が強まり一気に押し込まれていく、先程まで使っていなかったが念を使い始めたらしい。それに対抗しシャネルも念を使って腕を押し返し始めるがそれでも数歩劣っている、ウボォーギンの系統は強化系。幾ら強化系に寄っている放出系とはいえ生粋の強化系と比べれば劣ってしまう。
「良い念してるじゃねえのか、てめぇも強化系か!?」
「残念無念俺は放出系だよ!!」
「マジか!!」
「嘘言って如何済んだよ!!!」
更に念を放出して力を高めていくシャネル、力を強化していくがオーラを使えば使うほどにカロリーも消費されていく。正直な所今日は余り食事を出来ていない、精々4万キロカロリー程しか摂取で来ていない。あまり長い時間オーラの高出力は維持しきれない、だからといってオーラを弱めれば自分の負けを認めるような物、そんな事など出来ない……!!
「「全開、だぁああああ!!!」」
遂にオーラと腕力を全開で解き放った二人、建物自体が小さくだが揺れている。強化系と放出系のぶつかり合い、一気に押し込もうとするウボォーだがそれを必死に押し返し開始の位置にまで戻し抵抗するシャネル。互いの叫び声が木霊しつつも念は強くなり続けている、それが永年に続くかと思えた時それは終った。
「「おおおおらぁああああ!!!!」」
余りのオーラと腕力で台にしていた瓦礫その物が破壊され、砕け散ると言うシズクと全く同じ結果が訪れたのだ。だがそれでも二人は腕を組み続けている、互いに立ち上がりつつ今度は真正面から腕を突き合わせ押し合いに寄る勝負に移行している。
「あいつ、マジで放出系か?」
「さあね。でも嘘を言う意味は薄いと思うし本当なんじゃない」
「ウボォーと互角か……」
押し合いが続く、だが遂に痺れが来たのか互いがバックステップを踏みつつ後退し拳を振り抜いてぶつけ始めた。肉どころか骨にまで響く振動にウボォーギンは笑いつつ思った、こいつを本気で殺したいと。
「面白い……面白かったぜおい、シャネルさんよぉ」
「へっ俺はそこまでだな、いやちょっとだけな」
「良いぜ、もう帰って」
力比べと言う本来の目的を果たしたからかウボォーギンは満足そうに言った、帰って良いと。軽く押さえている右腕を嬉しそうに擦りながら。
「おい良いのかよ帰しちまって」
「良いんじゃないの、元々ウボォーが力比べしたいって言うから連れてきたようなもんだし」
「おいシャネルよ、またやらねえか?」
「ふざけんな、御免蒙る」
「つれねエな」
どこかシャネルを気に入ったのかウボォーギンはそのままシャネルを見送る事にした、正直あそこまで出来るとは予想外だったらしく気に入ってしまったらしい。また、戦いと思ってしまう。そして思わずこんな事を言った。
「明日の0時、街外れの荒野で待ってるぜ。また、やろうぜ」
「……俺が、来るとでも?」
「来るさ、てめぇは俺と同類だ」
ウボォーギンが感じ取った何か、シャネルの隠された本性に近い何か。この男も互角に戦える相手がほしいと心の何処かで思っている。それが間違いだと思わない、恐らくシャネルは自分の全てを出し尽くすほどの戦いをまだ経験していない、そんな戦いをしたいと望んでいる。そう直感出来る。最後に待ってるぜと言うとシャネルは何も答えずに去っていく。
「へへへっ久々に本気が出す時が来たぜ……!!!」
「くそが……腹減ったし腕はいてぇし……何が俺と同類だ、あの野郎……!!」
歩きながら酷くイラつき言葉を漏らしながら先程の言葉が何度も何度も脳内でリピートしている。
―――来るさ、てめぇは俺と同類だ―――
同類、自分があの幻影旅団と同じだと言うのだろうか。絶対に違う、自分はあんな奴らと一緒などではない。だがそれでも自分は全力を出せて嬉しいと思っていた、クラピカの修行でも出せなかった全力の腕力と全力のオーラ、それを発揮出来て嬉しいと言うか。
「……わかんねぇな」
剃を使い一気に遠ざかっていく旅団のアジトを見送りつつ、一旦立ち止まり溜息を吐きつつ携帯を取り出し連絡帳からクラピカの番号を押した、コールが一回すると即座に通話が繋がった。ずっと携帯を握り締めていたのだろうか、クラピカは。
『シャ、シャネル!!!大丈夫なのか!!?本当に本当に本当にお前なんだな!!!???』
「だぁああ声デカいっての!!?俺は大丈夫だ、心配掛けたな」
シャネルの声を聞くとクラピカは心底ほっとしたという溜息と声を漏らしているのが聞こえてきていた。かなりの心配を掛けてしまったようだ。
『何かされなかったか!?』
「腕相撲した位だな」
『な、なんだとぉ!?それでは手を合わせたというのか!?大急ぎで戻って来るんだ!!!早急に消毒と滅菌処理をしなくては!!!!』
「いや……それは大袈裟なんじゃ……」
『何を言っているこのぐらい当然だバカァ!!!!』
携帯から聞こえてくる爆弾のような声、思わず耳が一時的に聞こえなく程の爆音にシャネルは携帯を落としそうになる。
『そこから悪性の菌が繁殖したら如何する!?否既に毒が感染している可能性だって有りうる!!!ああなら今すぐにでも私がそっちに行って迎えに行かなければ!!!』
『おいクラピカマジで落ち着け!?冷静になれ!?』
『私は至って冷静だ!!!レオリオ道具借りて行くぞ答えは聞いてない!!!』
『せめて答え聞けよ!!ってせめて消毒用のアルコールしかねえってだから待てぇ!!!おいゴン、キルア取り押さえるぞ!!』
『う、うん!!!』
『離せお前たち!!シャネルが、シャネルが危険なんだぁあああああ!!!!!』
「いや心配してくれるのは嬉しいけど……それは、ないわぁ………」
聞こえてくる声に思わず顔を青くしつつ引いてしまうシャネル、これから戻って顔を合わせた時どんな反応をしたら良いのやら……。
『いってぇなおい静まれって!!』
『ああもう首に一撃入れて良いか!?』
『せめて最終手段にしろ!!』
『クラピカお願いだから大人しくしてよぉ!?』
『うぉおおおシャネルゥゥウウウウ!!!!!』
「………俺の弟子って、こんなに怖い奴だったっけ……?」
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