FGOで学園恋愛ゲーム
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二十四話:デート?
「ついに…ついに! 私の時代が来たわ!!」
一人部屋の中で、興奮した声を上げるジャンヌ・オルタ。
彼女の目の前にはパソコンが置かれており、そこにはブログランキングが表示されていた。
「食べログランキングでついに一位になったわよ!!」
嬉しさのあまりに、誰もいないにもかかわらず叫んでしまう。
当初は辛口のために、批判的な意見も見られたが、今では個性として認められた。
「ふふふ……もっと、もっと、崇めなさい。あー、人生楽しいわ」
お祝いに沸くコメント欄を見ながら、彼女はニヤニヤと笑う。
常連のブリュンヒルデや、名前を隠しているジルの他にも今回は多くのコメントがあった。
どれも、彼女を称える内容がほとんどであったが、あるコメントを見つけ、彼女は思わず吹き出すことになる。
【いつも連れ歩いている黒髪の男性って、もしかして彼氏さんですか?】
「な、なに言ってんよ、こいつ!?」
衝動的に画面を叩き割りそうになるが、何とか抑え込む。
黒髪の男性とは勿論、ぐだ男のことである。
「急に叫び声が聞こえてきましたけど、大丈夫ですか?」
「何でもないわよ! 放っておいて!」
「はあ……あなたがそう言うのならいいんですが」
叫び声を聞きつけて、心配したジャンヌに返答をしながら、返事を打ち込む。
「そんなわけないでしょ! 誰があんな変人と! 大体あいつは毒見役みたいなもので、偶々連れていってあげてるだけなんだから、勘違いしないでよね!」
怒涛の勢いで打ち終え、送信ボタンを押したところで深呼吸をする。
何を慌てているのだろうか、自分にとっては何でもない男のはずだ。
意識したことなど欠片もない。そこまで考えて、彼女は彼の言葉を思い出す。
―――そういう素直じゃないところも、可愛いよ。
「ないないない! 全然私の好みじゃないし! 大体、そういう対象じゃないでしょ!」
考えすぎて熱を帯びる頭を冷やすために、クーラーで冷えたベッドに頭から飛び込む。
「そりゃ、確かにあいつと居ると退屈はしないけど……」
枕を抱きしめながら、ぐだ男との思い出を振り返る。
彼と会ってからは退屈はしていない。
何だかんだと言って、それなりに近しい仲にはなっているのだろう。
「でも、だからといって異性とは思えないわよ」
ただの友達だ。異性関係に発展するような仲などもってのほか。
いくら、鍛え上げられた体をしているからといって、それで落ちるほど自分は安くない。
「そもそも……こんな私を大切に思うわけないでしょ」
ポロリと弱音が零れ落ちる。
自己肯定感が低い彼女は、時折このようなネガティブな思考になる。
誰からも比べられなくとも、彼女自身が人気者の姉と自分を比べてきた悪い癖だ。
「ああ、もう! イライラする。……そうよ、ハッキリさせればいいじゃない。私にも、あいつにも、そんな感情はないって証明すればいいだけよ」
何かを思いついたのか、スマホを取り出して電話をかけるジャンヌ・オルタ。
普段は気にも留めないのに、今はなぜかスマホを操作する指が震えていた。
「ぐだ男、ちょっと付き合いなさい」
『ああ! 今のは卑怯!』
「はぁ? よそ見してたあんたが悪いんでしょ。これでマッチポイントね」
お互いに息を荒げ、汗を流しながら向かい合う。
二人は今、ゲームセンターのエアホッケーで激戦を演じていた。
現在、なりふり構わぬ不意打ちにより、ジャンヌ・オルタの一点リードであった。
『……あ! 後ろにスパPがいる!』
「そんな嘘に騙されるわけないでしょ!」
ぐだ男も負けじと不意を突こうとするが、如何せん単純すぎてばれてしまう。
『どうやら、真の力を開放するときが来たようだな……目覚めろ! 俺のダークサイド!』
「ちょっ! 二刀流は卑怯でしょ!!」
追い込まれたぐだ男は、遂にスマッシャー(ラケット)を両手に持つ禁じ手に打って出る。
『勝てば官軍、負ければ賊軍!!』
「くっ、こいつ完全に開き直ったわ…!」
『ここからが本当のデュエルだ!!』
かつて究極生物は言った。どんな手を使ってでも勝てばよかろうなのだと。
かつて抑止の守護者は言った。誇りなど犬に食わせてしまえばいいのだと。
そう、勝負の世界において最も重要なことは勝つことなのだ。
故に、ぐだ男はいかなる手段も選ばない。しかし、卑怯者に罰が当たるのもまた運命。
『二刀流って逆に戦いづらい……』
「あんた馬鹿でしょ?」
過ぎたるものは及ばざるがごとし。
孔子も言っている通りに、無駄な物が増えても動かしづらいだけである。
『まだだ…! 片方をゴール前でのディフェンスに回せば……あ』
「はい、私の勝ちね。……なんか素直に喜べないわね」
試行錯誤を繰り返している間に、ジャンヌ・オルタに勝負を決められてしまう。
崩れ落ちるぐだ男を冷めた目で見降ろしながら、彼女はため息をつく。
せっかくの勝利も後味の悪いものになってしまった。
「ほら、さっさと次行くわよ。今度は気持ちよく叩きのめしてあげるわ」
『お手柔らかに』
「たく……こんな奴を意識するとかホントありえないわね」
『なんか言った?』
「あんたが底抜けのバカだって言ったのよ」
『流石に底ぐらいはあるやい』
お互いに軽口を叩き合いながら、何か面白そうなものはないかと歩き出す。
何気なしに当たりを見回したところで、ある景品がジャンヌ・オルタの目に留まる。
『クレーンゲーム? 何か欲しいものがあった?』
「いや……あれ、見なさいよ」
指さされた方をじっくりと見つめてみる。
可愛らしいウサギのぬいぐるみ、ライオンのぬいぐるみ。
そして、紐で拘束され、ガムテープで口を塞がれたオリオン。
『ただの、クマのぬいぐるみジャナイノ?』
「棒読みになってるわよ」
『ふう……また浮気したのか』
必死にこちらを見つめて、タスケテのサインを送ってくるオリオン。
二人はどうしたものかと、顔を見合わせ、ぐだ男が動き出す。
『間違って子どもが取らないように回収してくる』
「勝手にしなさい」
ゲームにコインを入れ、クレーンを動かし始める。
そこまで得意というわけではないが、オリオンの方が必死になってきたので一度で成功する。
景品口から、ぼてっと落ちてきたオリオンを手に取りガムテープを剥ぎ取る。
「ぶはぁー! 死ぬかと思った!! ありがとうよ、坊主」
『で、今回はどんな浮気をしたの?』
「しーてーまーせーん!! いや、女の子に声はかけたけどさ」
「こいつ、助けない方が良かったんじゃないの?」
どれだけ罰を受けようと、懲りない態度のオリオン。
そんな彼にゴミを見るような視線を向けるジャンヌ・オルタ。
色男もクマになってしまえば形無しである。
「まあ、あいつのせいで、死にかけるのはいつものことだからいいけどよ」
『素直にアルテミスにプロポーズすればいいのに……』
「バッ! そんなのじゃないからね、ホント!!」
普段は、誰にでもナンパをするオリオンであるが、アルテミスに対しては奥手である。
本命相手には、本気で相手をしたいという属性の男である。
『というか、なんでそんなに焦ってたの。拘束されて監禁されてただけでしょ?』
「え? それをだけって言っちゃう? 常識的に考えておかしいよね?」
『いいから理由を話してよ。でないと元に戻すよ?』
ツッコミを入れてくるオリオンを無視して、事情を聴きだす。
「いやぁー、俺も初めは店員の女の子にでも、助けてもらおうと思ってたんだけどな」
「ぐだ男、こいつ燃やしたほうがいいんじゃないの?」
「まった! まった! ちゃんと話すから! 中でボーっとしてたら、母娘が来てな。俺の方を見て、娘の方がこう言ったんだ『お母さん、あれ解体したい』ってな」
ぐだ男の脳裏に、一人の解体少女の姿が浮かび上がる。
「流石にやばいって思って必死に逃げ切って、さっきようやく坊主に救出されたんだ」
『そっか……ところでお母さんの方はどう思った?』
「おっぱいがエロくて最高でした」
『ギルティ』
反省の色が全く見られないオリオンを、再び縛り上げる。
「あの、これほどいてくれない?」
『ジャンヌ・オルタ、このナマモノどうする?』
「モグラたたきのモグラ代わりにしたらどうかしら」
「やめて! そんな残酷なゲームを子ども達にやらせないでぇ!!」
『大人になるって悲しいことなの……』
その後、モグラたたきには、大当たりのクマが入っているという都市伝説が、まことしやかに囁かれることを、まだ誰も知らないのだった。
「ふふふふ、結局、私が全戦全勝ね」
『クイズゲームでは俺の勝ちでしょ』
「あれは問題が悪かっただけよ。ハロウィンのカボチャが、元はカブとかなんで知ってんのよ」
『予習は大切だよ。でも、あそこからクレオパトラに飛ぶのは予想外だった』
ベンチに座り、近くで買ったクレープを食べながら、バッティングセンターでの出来事について話す二人。
「それにしても、あんたってバッティング下手なのね。私より飛ばなかったじゃない」
『おっと…心は硝子だぞ?』
「安心しなさい。割れても融かせば、また使えるわ」
『俺はこんなもののために…! 毎日トレーニングをしてきたわけじゃない!!』
ジャンヌ・オルタに、バッティングで負けたことをいじられる。
元々、運動神経の良い彼女に負けるのはそこまでおかしいことではないが、やはり男の威厳は傷つく。
「ねえ、どんな気持ち? 頑張ってきたものが否定されるってどんな気持ち? ねえ、ねえ?」
『つ、次に勝てばそれで大丈夫だから』
「何度でも叩き潰してあげるわ」
満足気に笑いながらジャンヌ・オルタはクレープを口にする。
いつもより甘く感じるのは、これが勝利の味というものだからだろうか。
『そう言えば、どうして今日は急に誘ってくれたの?』
「……別に、なんとなく暇だったから誘っただけよ」
本当の理由を言えるはずもなく、そっぽを向いて答える。
こんな相手に魅力を感じるはずがない、異性として見るわけもないと、自分の中で結論を出す。
『そっか。でも、なんとなくでも俺は一緒に出かけられて嬉しいよ』
「フン……」
しかし、心のどこかで本当にそれでいいのかと、疑問が湧き上がる。
本当に嬉しそうに笑う、彼の顔を見ていると何故か調子が狂ってしまう。
心がささくれ立ち、雑にクレープにかぶりつく。
クリームがはみ出してしまうが無視をする。
『……そう言えば、プールで競争して負けたらアイスおごりって言ってたよね』
「はぁ? あれはノーカンって言ったでしょ」
『うん。だから、これで我慢する』
そう言って、ぐだ男は彼女の顔に指を伸ばし、頬についていたクリームを拭いとる。
あっけにとられ固まる彼女をよそに、彼はそのままクリームを舐める。
『ごちそうさま』
意地悪そうに笑いながら、味わうように唇を舐めるぐだ男。
その妙に色気のある姿に、彼女は顔を真っ赤にし、呼吸困難のようにパクパクと口を開く。
『……て、驚いた? テレビで見たことをやってみたんだけど』
「…ねっ。死ねッ! 地獄の業火に焼かれて死んでしまえ!!」
『ご、ごめんって! 痛っ!? ちょっ! いつもよりシャレにならない痛みが!!』
一瞬、ドギマギとしてしまった自分が許せず、加減なしで叩きまくるジャンヌ・オルタ。
ぐだ男の方も、いつものじゃれつきとは違う痛みに気づいて必死に謝る。
相手の心を傷つけてしまったのなら、誠心誠意、真心を込めて謝らなければならない。
『落ち着いて、ジャンヌ・オルタ』
「やめなさい…! 手を掴むんじゃないわよ! どうしようが私の勝手でしょ!!」
一先ず叩いてくる腕を掴み攻撃を止めさせる。
そして、相手の目をまっすぐに見つめて話しかける。
『そんなわけない。他の誰でもない俺が困る』
まだ、反抗しようとする彼女を優しく論す。
彼女が暴れれば、自分にダメージがいくので困るのは当然だろう。
『俺が悪かったよ、ごめん』
「フン……どうせ、あんたのことだから理由なんてわかってないんでしょ」
『う…っ。でも、本当に悪かったと思ってる。君の気持ちを考えてなかった。男として失格だ』
とりあえず、許可も取らずに女性の肌に触れたのが、ダメだったのだろうと考えて謝る。
「そんなこと言ったって、あんたはどうせ他の女にも同じようなことするんでしょ」
『ジャンヌ・オルタだけだよ。他にはしない』
理解していないので、どうせ同じことをするだろうと、ジャンヌ・オルタが皮肉気に告げる。
だが、ぐだ男はもうこんなことはしないから、心外だと言い返す。
「信用できないわよ……あんたのことなんか」
『信じてくれとは言わない。だから、これからの俺を見ていてほしい』
若干、天然タラシなところのある、ぐだ男に疑いの視線を向ける。
本人も少しだけ自覚があるのか、罰が悪そうな顔をするが、一応の返答をする。
「はぁ……仕方ないわね。今回だけよ」
『愛想をつかされないように頑張るよ』
「せいぜい頑張りなさい」
何とか許しを得て、ホッと胸を撫で下ろすぐだ男。
二人はそのまま、元の雰囲気に戻り立ち去っていく。
もし、この場にいた人物が二人だけであれば、このまま何事もなく終わっていたであろう。
しかし、この場にはジャンヌ・オルタを心配してついてきていた者がいた。
「あの子が心配で隠れて見ていましたが……ああいったやり取りは、世間一般では恋愛ですよね? あの子がやっていた『葉桜ロマンティック』というゲームにも似たような展開があったので間違いありません。あの子はぐだ男君と付き合っているんですね!」
物陰から、こっそりと覗いていた姉のジャンヌが顔を出す。
恋愛感情がわからない彼女は伝聞と、気になってやってみたジャンヌ・オルタの乙女ゲームから考察し勘違いをする。
「あの子のことを、理解してくれる人ができたんですね……。少し寂しいですか、姉として祝福しないといけませんね」
さらに、持ち前の人の良さから二人を応援する方向に向かう。
そのことが2学期に入ったときに二人を襲う事件となるのだが、二人はまだ知らない。
後書き
乙女ゲームってこんな感じだと思うんだ(暴論)
次回からは壁ドンとか顎クイを書きたい。ジャンヌ・オルタはときめく姿が映えると思うんだ。
後、ジャンヌが顔を赤くしながら、乙女ゲーしてるの想像したら萌えたから、ジャンヌ√のアフターで恋愛勉強でゲームするポンコツジャンヌを機会があったら書きたい。
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