聖闘士星矢 黄金の若き戦士達
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396部分:第五十四話 氷の世界と炎の世界その六
第五十四話 氷の世界と炎の世界その六
「このままだと」
「だが」
また言うレダだった。
「勝つのはやはり私だ」
「それは私の言葉だ」
この時も負けてはいないカミュだった。すぐにこう言い返してみせる。
「言っておくがな」
「ふふふ、さらに面白くなってきたものだ」
表情を変えないカミュに対してレダは比較的よく変えてきていた。今度はまた楽しむような笑みを浮かべてみせての言葉であった。
「アクエリアス、貴様との戦いがこれ程まで面白いとはな」
「そしてその楽しみの中で勝利を収めるというのだな」
「その通りだ。それこそが狂闘士だ」
言い切ってみせた言葉であった。
「戦いを楽しみそうして勝つのがな」
「やはり我等とは全く考えが違うな」
「戦いの中で破壊と殺戮を楽しみ」
それが彼等の楽しみなのであった。そういったものこそがだ。
「アクエリアス、そして貴様等聖闘士達全てをその破壊し尽くされた世界の中で葬ってやろう」
「それはできないだろうがな」
「そう言うのはわかっていた」
既にカミュがどう言うのかもわかってきていた。もっともそれは彼だけでなくカミュにしてもそうだった。二人はもうお互いのことがわかっているのであった。
「それもな」
「では。私はここで貴様を」
「倒す」
両者の言葉が完全に重なった。
「遠慮せずにな」
「この私の命にかえてもだ」
二人は己の小宇宙をあるだけそれぞれの炎と氷に含ませてきた。するとどちらも途方もないまでに荒れ狂うようになってしまったのだった。
「このレダの炎、これならば凌ぎきれまい」
「カミュの氷、これならばどうだ」
その炎と氷はそれでもせめぎ合っていた。両者の顔もそれぞれの衣も黒に青に禍々しく清らかに照らし出しながら。そのうえでせめぎ合っていた。
そしてその中で互いに一歩も引かない。まさに攻防であった。
だがここで。僅かにだがカミュの氷が揺らいだのだった。
「むっ!?」
そしてだった。その揺れを見逃すレダであった。そのほんの微かな、動いたと見間違えても不思議ではない揺れを見た彼はここで動いたのであった。彼自身が。
「よし、もらったぞアクエリアスよ」
そこに勝利を見て仕掛けるのだった。
「この炎が勝つ、ベリアルの炎がな!」
「くっ!」
「さあ死ぬのだ!」
レダの炎がさらに勢いを増してきた。カミュのその綻びに乗じたのである。
「もらった!」
「おのれ、まだだ!」
だがカミュも踏ん張ろうとする。小宇宙をさらに込めてそれで防ごうとする。彼等の闘いは今レダに傾こうとしているかのようであった。
第五十四話 完
2009・9・16
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