Three Roses
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第十八話 墓参りその二
「お二人が会われたのですね」
「はい」
その通りだとだ、セーラは夫に答えた。
「そうなりました」
「それは何よりです」
やはり何処か他人行儀な声だった。
「奥方様も嬉しいですね」
「共にお墓参りもされるとのことで」
「そのこともですね」
「嬉しく思っています」
セーラは丁寧に語っていく。
「非常に」
「そうですね、しかし」
「しかしとは」
「一つ思うことは」
それはというと、夫である太子は妻に言うのだった。
「奥方様のお顔を見ますと」
「実はまだ安心していません」
「やはりそうですか」
「まだです」
ここでだ、セーラは太子に暗い顔で答えた。
「お二人の間には溝が深いでしょうから」
「だからですか」
「まだです」
やはりこう言うのだった。
「安心できないのです」
「ではどうされますか」
太子はセーラの目を見て彼女に問うた。
「この度は」
「私が、ですか」
「はい、どうされますか」
こう妻に問うのだった。
「この度は」
「そう言われましても」
「思い浮かぶことはありませんか」
「はい」
どうにもと言うのだった。
「私には」
「そうですか、しかし」
「我が国として、ですね」
「何か出来ることがあれば」
温和な表情だ、だが。
その目を光らせてだ、太子はセーラに言うのだった。
「私は貴女と共にです」
「動いて頂けますか」
「そうします」
こう約束するのだった。
「やがてこの国を神より預かる者として」
「そうなのですか」
「お任せ下さい」
仕事としての言葉だった。
「是非共」
「ではその時は」
セーラは夫に応えた、夫は確かに義務やそうしたものとしてしか考えていなかった。だがそれでもセーラにはだった。
彼女の手を持ってだ、微笑んで言ったのだった。
「そして今宵も」
「はい、共にですね」
「いましょう」
こう言うのだった。
「是非」
「はい、それでは」
「そしてです」
「お子をですね」
「もうけましょう、それもです」
太子はセーラにさらに言った。
「何人も」
「王家の子は何人いてもいい」
「ですから、今宵もです」
共にいようというのだ、太子は今度はセーラに愛情を見せていた。ただ責務や義務だけでないことにだ。セーラは内心安堵もしていた。
マリアもその話は聞いた、彼女は朝に侍女の一人から聞いた。丁度起きたところだ。
そしてだ、こう言ったのだった。
「いいことね」
「お二方が会われたことは」
「それにお墓参りもなのね」
「共に行かれるとのことです」
「いいことよ、ただ」
「ただ、とは」
「マリー姉様はいいとして」
その目を光らせての言葉だった。
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