非日常なスクールライフ〜ようこそ魔術部へ〜
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第二章 異世界戦記
第35話『異世界』
前書き
楽しみですね楽しみですね楽しみですね・・・って、ほぼ俺が楽しんどるだけやないか。
さて。今回から書き方を変えます。安定すればこの先も続けます。
では、書いていきましょう!
暗闇の部屋で目を瞑っていたはずだというのに、突然の外界の発光を感じる。
それは、恐らく異世界に着いたという証拠でもあり、瞳を開けたいという好奇心を煽るものだった。
晴登は、瞳孔が急な明るさに反応し切っていなかったが・・・目を開いてみる。
*
「…マジかよ」
開口一番、驚愕の声を洩らした晴登。
目の前に広がった光景は、どう考えても自分の部屋ではない。それどころか空が見え、風が頬を撫でるのを感じる。
「知らない…場所だよな」
寝転んでいた身体を起こして呟きながら、辺りを見回す。
まずは自分の居場所。大きいとも小さいとも言えない木の下である。木陰の涼しさが心地よい。
そして周り。
住宅街、マンション、学校・・・そんな物は一切ない。家はチラホラと確認できるが、どれも現代で見慣れたものとは一風変わっている。まるで田舎のど真ん中にでも来た気分だった。
「のどかな景色だな」
と言いつつも、晴登は自分の思う田舎のイメージともまた違う雰囲気を感じていた。
田舎といえば、やっぱり広大さや雄大さが有ると思う。田が見渡す限りに広がり、近くに山が在るといった感じだろう。
でも目の前の景色に広さはなかった。晴登の持つマンガの知識でいえば「冒険物語の序盤の町」といった雰囲気だ。
アスファルトの道路すら見当たらず、あるのは往来があったためか草がすり減った、あまり整備もされていなそうな道だけで、家も全て木造やら何やらで造られているようだった。
「どうしたもんか…」
晴登は頭の中で部長の説明を再生する。
『異世界に居られるのは、一度の転移で3日間。それを過ぎない内は現実世界に帰っては来れない。逆に、3日間経ってしまえば強制的に引き戻しだ。そこんとこ気をつけてな』
最後に部長は『まるで修学旅行だな!』と言っていた。うん、気分はそうだ。
だが、向こう見ずでこっちに来てしまったのは少し後悔している。
──3日間、ここで過ごせるのか。
部長は『もし異世界で死んだら、現実でもお陀仏だぜ』とも言っていた。
つまり、この異世界で餓死でもしたら、晴登は現実で故人になってしまう。なんて鬼畜な修学旅行だろうか。
「この村に誰も居ない…とかだったらゲームオーバーだけど…」
とりあえず、晴登は道を歩くことにした。もしかしたら誰かに会えるかもしれない。
周りの家々を、道を歩きながら見渡す。
洗濯物が干されていたりする家もあるので、人が住んでいないということはまずなさそうだ。畑も目に入るが、手つかずという様子もない。
では、どうするか。家に押し掛けて泊まらせて貰うか?
いや、それは警察を呼ばれかねない。・・・そもそも警察って、この世界にあるのかも疑問だ。
様々な疑問が頭に次々に浮かぶ。
お陰で、目の前に迫っていた人物に気づかなかった。
ドン
「あ、すいません」
「いえいえ、こちらこそ」
肩がぶつかり、即座に晴登は謝罪する。相手も謝罪を返してきた。
そして2人はそれぞれ逆の方向へと歩を進める。
背丈は同じくらいの子だった。もしかしたら同い年かも。
晴登は今の人物に、そんな解析をした。
やっぱ人が居たんだな、この村・・・
──って、何で俺は今スルーした?
「ちょ、ちょっと待って下さい!」
後ろを振り返って叫びながら、晴登は今しがた邂逅した人物の背中を追って走る。
異世界で出会った初めての人だ。まして歳も近そうである。そんなチャンスを逃す訳にはいかない。
「?」
呼びかけが届き、その人は振り返った。
晴登はその人物に追い付くと、肩で息をしながら前を見る。
そこで、晴登はようやく相手の顔をハッキリ見た。
「な…!」
今のは感嘆の声。それは、目の前の人物の容姿を見たからである。
輝くような銀色の髪に、満天の青空を映したような蒼い瞳。可憐さの権化のような中性的で整った童顔。そして、雪の様に白く綺麗な肌。
現実世界では絶対に見られないであろう容姿を今こうして目前にして、晴登はようやく「異世界に来た感」を得る。
よし、コミュニケーションを取ろう。
そう思って言葉を放とうとした矢先、晴登は重大なことに気づく。
『この異世界で日本語は通じるのか』
この疑問の答えは、部長の説明には含まれていなかった。でも簡単に考えてみると、こんな地で日本語が使われる訳がない。晴登が少しだけ喋れる英語だって、この世界では何の役にも立たない筈 はずだ。
最悪である。コミュニケーションが取れなければ、結局生活も何もできない。つまり、この異世界を生き抜くことが困難になるのだ。
晴登は再度、自らの無鉄砲さを悔やんだ。部長にもう少し詳しく聞き出すべきだったと。
しかし、その後悔は杞憂に終わる。
「どうしたの?」
不意なその発言は、疑問を解決するのには充分だった。
尤も、その言葉を聞いた晴登は、疑問なんぞすぐに忘れてしまったが。
言葉が通じる。
そう直感的にわかっただけでも、晴登は喜びを得た。
「え、いや、その…」
だが事態の好転は、逆に晴登を苦しめた。
『コミュ障』
忘れかけていたその単語が頭をよぎる。
初対面の人との対話。それだけで、彼の中に眠っていたそれは頭角を現した。
「ボクに何か用かい?」
穏やかな、中性的な声でその人は訊いてきた。
声色で判断できるのは、声変わりをしていない歳だということ。そして、優しくて透き通る声・・・あれ、
柊君に似てる。
晴登は思った。
『女子っぽい男子』という所が主な理由だ。中性的な顔とか1人称が“ボク”な辺り、かなり似ている。
さすがに同一人物ではないだろうが、それでも特徴がある程度同じだった。獣の耳まではなかったけど…。
知り合いに似てると思った瞬間、少しばかり親近感が湧いた。
「用って言えば、まぁその…あるんですけど…」
しかし、その親近感を覆す程の『言葉を濁す』というコミュ障特有の技が、今しがた発揮する。
何を言おうか。
そういえば、そんなことも考えていなかった。
つくづく無計画だなと、自分に呆れる。
考えてみるも、思い浮かぶ項目が多すぎて何から話せばいいか分からない。
ここはどこ? あなたは誰? なぜここに?
絞ろうとしても中々絞れない。頭がフル回転し、質問を探り出そうとする。
・・・そうだ。これだけは訊かなきゃ。
晴登は頭の中で見つけたその言葉を推敲し、直後決心して言った。
「えっと…この辺の家で、俺を泊めてくれるような人は居ますか?」
*
「ホントに良いんですか? 泊めてもらっても」
「困った時は助け合わないとね。尤も、あんな言われ方されると断りにくいよ」
「そんなつもりじゃなかったんです…」
晴登はとある家に来ていた。その家は先程知り合った彼の家である。
裕福とは言えないが、貧乏とも言い切れない。造りはしっかりしていて、イメージは『ログハウス』だが、そこまでいくほど頑丈でもない。
一言でまとめると『木造の小さな一軒家』である。
「まぁいいよ。それにしても珍しいね、この村に来る人がいるなんて」
「え、ここって人口少ないんですか?」
「王都が近くに在るんだけど、この村には特に何もないから。そんなことも知らないのにここへ?」
「あ、はい…」
先程より幾分話せるようになったが、まだ敬語が抜けない。
それは相手も気づいたようで、ニッコリ笑うと一言、
「そんなに固くならなくてもいいよ。見たところ歳も近そうだし。…あっと、そういえば自己紹介がまだだったかな。ボクは“ユヅキ”。よろしくね」
早々と自己紹介を終えた、ユヅキと名乗る少年。苗字とかがないのが、とてもファンタジーっぽい。
しかしそうも簡単にやられると、かえって自己紹介にプレッシャーがかかるというものだ。
晴登はしどろもどろになりながら自己紹介を始める。
「えっと…俺は三浦 晴登、歳は12。その、よろしく…お願いします」
「え、ボクも12歳だよ? なんだ同い年か~。改めてよろしく、ハルト!」
右手を差し出しながらそう言うユヅキ。晴登はその右手に右手で応える。
握手なんて今時しないな、と頭で考えながら、晴登とユヅキは笑みを浮かべ合う。
友達が…できた。
嬉しくてガッツポーズしたい衝動に駆られるが、ギリギリ堪える。
さて、まずは泊まり場を確保した。これから3日間は困らなさそうだ。
では次は・・・食べ物。
異世界の食べ物が口に合うかは別として、食費等をユヅキに負担してもらうのはさすがに申し訳ない。
自分で調達するのがベストだが・・・上手く行くものか。
「3日間泊めれば良いんだよね? ボクってそういうことするの初めてだから、どんな風にすればいいかわからないよ?」
「う~ん…とりあえず、場所だけ提供してくれるだけで、俺はかなり助かるよ」
まぁ食べ物どうこう言っても、何よりの楽しみは異世界を探検。この地に立った以上、それは必然的に行わなければならない、もはや使命なのだ。
敵を倒して、謎を解き明かして、迷宮を突破して・・・ヤバい、胸が躍る。
──でもせっかくだし、もう少しユヅキと話してみるか。
「この村について訊いてもいい?」
「いいけど…ホントに何もないよ? 住人だって数えれる位だし」
「へ、へぇ…そうなんだ」
話題を失敗したか。やっぱ人とのコンタクトって難しい。
晴登は己を失敗を悔やみ、別の話題を振ろうとした。
すると、それより先にユヅキが口を開く。
「そうだ! この村には何もないけど、王都なら色々凄い物が在るよ! 行ってみる?」
「いいけど…簡単に行けるの?」
「大丈夫。ちゃんとした道で行けるから」
「任せて!」と言わんばかりの表情で、ユヅキは晴登を説得する。
王都といえば、ファンタジーの筆頭格。ならば行かなくして何をするというのだ。
「じゃあ、行きたい!」
晴登のその発言はまるで、「遊園地に行きたい」とおねだりする子供の様であった。
*
「予想以上のデカさだな…。てか、どうしたらあの村の近くにこんなデカい都市が存在するの?」
晴登は目の前の光景を見て、ただただ嘆息する。
それもそのはず、この王都とやらはとてつもなく巨大な規模なのだからだ。
1つの山をそのまま王都にしたような…って雰囲気。
見た目は中世ヨーロッパ。イタリアとかに有りそうな街並みだ。海外旅行するならこういう所が良い、と少なからず思う。
先程まで居た村からは想像もできないような景色。目に入る家々はどれも石造りであり、決して木造ではない。
加えて環状で、街の中心に近付くほど高度が高いという、よくありそうな設定付きだ。
現に、中心に聳える巨大な城は、今入り口を通ったばかりの晴登達からは少し見上げた位置にあった。あの城からの景色は、きっと絶景だろうと思う。
しかも驚くのはそれだけでない。
ここは王都。即ち、全ての中枢を担う都市なのだ。
人口だって馬鹿にならない。見えるものは、人、人、建物、人、人・・・だ。
ショッピングモールだとか、スタジアムだとか…そんな物では比にならないほど、人々でごった返している。
だが、そんな状況を気にせずに・・・
「じゃあ早速行こ! 連れて行きたい場所があるんだ!」
ユヅキは意気揚々に言うと、晴登の手を引っ張り走り始めた。
人と人の間をすり抜け、たまに路地裏を活用。王都には慣れているのだと、彼の行動から察せる。
ちなみに、この王都はホントにあの村との距離は遠くなかった。簡単な話、乗り物が必要でない距離だ。
道中、鬱蒼とした森に入った時は少しヒヤヒヤしたが、森を抜けるととてつもなくデカい関所が見え、そこから容易に王都に入った。
警備が緩くないかと、その時は一瞬考えたが、入れたなら万事オッケーである。
・・・と、そろそろ目的地が近付いてきたのか、ユヅキの走りが遅くなった。
されるがままに手をずっと引っ張られてたから、かなり身体がキツい。そういえぱ少し前まで怪我人だったのだった。
「まるで迷路だな…。ユヅキは結構行き慣れてるの?」
横に高々と聳える家々の壁を見上げながら、晴登はユヅキに問う。
だがユヅキは、その問いに反応すら見せなかった。
「あれ?」と思い、晴登は視点を横の壁からユヅキへ移す。
そこでようやく、ユヅキが遅くなった理由など諸々含む“事態”に気付いた。
「え、ちょっと…これって…」
ユヅキが見据える路地裏の先・・・そこには『チンピラ』という言葉がよく似合いそうな3人組が、こちらの通り道を塞ぐように立っていた。
後書き
最近、更新スピードが異様に早いな~と自分で感じております。理由はきっとテンションが高いからでしょう(笑)
やっぱ異世界って良いね。ロマンだね。
そして銀髪碧眼もロマンだね。俺の趣味全開です。
さて。今回はその銀髪碧眼の、まさに「異世界!」な新キャラを出しました。
柊君と色々似てるというのが第一印象としています。でもケモ耳までパクると、なんやかんやの関係やらが出そうなんで、それは省きます(←面倒くさがり)。
でもって、今回のラストはお決まりのピンチパターン。実はこの先の展開が曖昧だったり…(泣)
いやでも頑張るよ! このストーリーは何としても完成させてやる!!
という事でまた次回! では!
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