ラブライブ! コネクション!!
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Track 3 STOMP:DASH!!
活動日誌13 それは・ぼくたちのキセキ! 1 『ファーストライブ』
教室に戻ってきた私達は、HRが終わると足早に教室を出ることにした。
もちろん、ライブの時間が迫っているからなのも、理由の1つだけれど――それ以上に、教室の雰囲気に耐え切れなかったからなのだ。
自分に言い聞かせていたとは言え――やはり、周りの生徒の希望に満ち溢れた雰囲気を目の当たりにしたくはなかった。だって、自分達に向けられた希望じゃないのを知っているから。
あくまでも、彼女達の希望は部活への想い。言い換えれば、私達のライブには来ないってことなのだから。
「あっ、雪穂――ちょい待ち!」
「えっ?」
そんな風に感じて足早に教室を出ようとしていた私達の耳に、クラスメートの声が聞こえてくる。
私が思わず振り返ると、そこにはクラスメートのミキ、カオリ、メグミの姿があった。3人は私達に近づくと――
「ライブの手伝い、何かある? 何かあるなら、手伝おうか?」
そんな提案を代表してミキがしてきたのだった。
あまりにも突然の提案に、驚いて声が出なかった私達に、彼女は笑いながら――
「ほら? 私達も雪穂達を応援するって言っていたじゃん? 他の子達は部活勧誘に行く手前、手伝えないんだけどさ? 生憎、私達3人は雪穂達と同じで、もう入部済みだから……今日は時間が空いているから、3人で良ければ手伝いたいんだけど?」
そんなことを告げる。そう――彼女達もまた、私達と同じく既に入部を果たしていた。
入部をしたとは言え、勧誘される側の立場の彼女達に説明会を任せるはずもなく、今日は暇なのだと言う。
「――ありがとう! とっても嬉しいよ!」
「よろしくぅ」
「お願いします」
私達は凄く嬉しくなり、満面の笑みを浮かべて彼女達の厚意に甘えることにしたのだった。
だけど、手伝ってもらうことに笑みを浮かべていた訳じゃない。
私達を応援してくれているって――自分の時間を割いてでも私達の為に手伝おうと言ってくれる、そんな彼女達の気持ちがとても嬉しかったからなんだよ。
そう、今まで私達は3人で頑張ってきたと思っていた。だけど違うんだ。
お姉ちゃん達がいて、クラスメートだっている。
私達の周りにも、みんながいてくれたんだ。
そんな風に思えると、今までとはクラスの雰囲気が違って感じられるようになっていた。
確かに部活への希望に満ち溢れた空気は今でも存在する。でも――
私達に申し訳ないと感じている雰囲気や、それでも応援はしているよ?
そんな私達への期待を抱いていることが伝わってきたのだった。
♪♪♪
私達がミキ達とライブに関して打ち合わせをしていると、教室の扉が開いて3年の先輩が中を覗いていた。
私は彼女のことを良く知っている。だから、私に会いに来たと思っていた。
――まぁ、実際、私に会いに来たんだけどね?
「……あっ、いたいた! 失礼します……こんにちは、雪穂ちゃん」
「こんにちは、ヒデコ先輩」
「今日ライブやるんでしょ? 良かったら手伝う――あれ、ミキ?」
「お疲れ様です。ヒデコ先輩」
「同じクラスだったんだ?」
「そうですよ? 今、彼女達の手伝いをしようって話をしていたんです」
「あっ、そうだったの? いや、ほら……穂乃果達の手伝いをするからさ――雪穂ちゃん達の手伝いもしようと思っていたら、時間が違うって聞いて急いで来たんだけど?」
「あはは……すみません。実はそうなんです」
私を見つけたヒデコ先輩は、私の目の前まで来ると挨拶をした。私が返事を返すと、私達のライブの手伝いを申し出ようとしていたんだけど、隣に立っていたミキに気づいて声を上げるのだった。
そんな先輩にミキも声をかけた――どうやら、2人は中学時代の先輩後輩だったらしい。
ミキが私達の手伝いをすることを伝えると、先輩も私達の手伝いをしようと思って、お姉ちゃんに聞いてみたら、私達は開催時間をズラしているってことを知って、慌てて教室まで来たのだと告げる。
私は苦笑いを浮かべて謝罪をするのだった。
先輩達がお姉ちゃんのライブの手伝いをするのは知っていたけど――まさか私達のライブまで手伝ってくれるとは思っていなかったからね? 時間をずらすことは特に誰にも伝えてはいなかったのだった。
そんな私達の意図を汲んでくれたのか――
「まぁ、間に合ったから良いし……少し、安心したわ? ほら――私達が手伝えるのも今年までなんだし、来年の手伝いを……ね? 花陽ちゃん達にも伝えてはいるんだけど――雪穂ちゃん達のことも心配だったんだよね?」
「……先輩」
特に言及しないで話を続けてくれていた。
そうなんだ。ヒデコ先輩はお姉ちゃん達の同級生――つまり、今年しか手伝うことはできないんだ。
だけど、私達のことまで心配してくれていた先輩の気持ちに触れ、私の心が暖かな気持ちで満たされていたのだった。
だって先輩はお姉ちゃん達の手伝いなんだもん。
元々はお姉ちゃん達だけの頃に始めた手伝いだった。だけど去年1年間、学院でのライブに関しては手伝いを率先して買って出ていたらしい。
だから同じメンバーである花陽さん達の心配はするかも知れないけれど、特に接点のなかった私達のことまで気を使う必要なんてないんだから。
「だけど、ミキ達が手伝いをしてくれるんだったら私としても嬉しい限りね? ……と言うより、ミキ達は今日だけの手伝いなのかしら?」
「えっ? そんなことはないですよ? 私としては時間が許す限り、手伝いをしていくつもりですから」
「……そう? うん、そうしてあげてね? ところで3人の中で音響できる子っているの?」
「「「…………」」」
先輩は少し安堵の表情を浮かべながらミキ達に声をかける。
すると私達にとって、嬉しい答えを彼女が答えてくれる。隣にいた2人も笑顔で頷いていた。
私は言葉にならないほどに嬉しさが込み上げていた。当然、亜里沙と涼風もそうなんだと思う。
まぁ、面と向かってお礼を告げるのは恥ずかしいから――3人で彼女達に笑顔を向けるのだった。
そんな私達を眺めながら微笑みを浮かべていた先輩は、ミキ達に向き直ると音響をできる子がいるのかを訊ねていた。その問いにミキ達は困った表情をしながら、誰も名乗りをあげられないでいる。
そんな3人を見ながら先輩は――
「……そっか? なら、ミキが担当ね? 私が教えてあげるから」
「――本当ですか! 実は私達、手伝うとは言っても……音響に関しては良く知らないんで、どうしようか悩んでいたんで助かります」
ミキに音響を教えてくれることを約束していたのだった。
その言葉にミキは、そんなことを言って苦笑いを浮かべていた。私はその言葉に繋げるように――
「……そんな話をしていたんで、先輩にお願いに行こうとは思っていたんですよ?」
彼女と同じような表情で、先輩に伝えたのだった。
ほら? お姉ちゃん達の手伝いをするんだろうし、帰ることはないだろうって思っていたからね。
あっ、でも別に頼むって話じゃなくて、あくまでも教えてもらう為にだよ?
要は、最初から先輩に会うつもりでいたのだった。
そんな感じで先輩に色々と教わる為、そして手伝いをする為に、先輩とミキ達3人は私達に笑顔で手を振り教室を出て行った。
私達も4人を笑顔で手を振り見送っていた。
彼女達が教室の扉を閉めた後、私達3人は顔を見合わせて微笑みを交わしていた。
だって、すごく嬉しかったから。
応援してくれる人がいるって、自分では気づかないくらいに凄い力になるんだな? って感じていたんだと思う。
今までは、お姉ちゃん達を応援しているだけだったから。自分が応援してもらって初めて気づいた気持ちなんだと思う。
そっか? お姉ちゃん達は今まで、こんな気持ちで頑張ってきたんだね? こんな気持ちに応える為に頑張っているんだね?
花陽さん達が私達にライブを薦めてくれたのも、こう言う気持ちに気づいてほしかったからなんだろう。
そう、ライブのステージに立つことだけがライブを開催することの意味じゃない。
こう言う、みんなの想いに触れて、その想いを受け止める。繋がりを感じることがライブを開催する本当の目的なのだろうね。
私達はHRが終わった直後の、足早に教室を出ようと思っていた気持ちとは正反対に――クラスに溢れる応援の雰囲気に包まれながら、ゆっくりと確実に、みんなの想いをかみ締めながら教室を出るのだった。
♪♪♪
「あっ、お疲れ様ー」
「「「お疲れ様です、ことりさん」」」
「お疲れ様」
「「「お疲れ様です、花陽さん」」」
部室を訪れた私達を、笑顔でことりさんが出迎えてくれていた。珍しく今日は花陽さんも来ているみたい。
花陽さんも続いて出迎えてくれていた。
あっ、普段はアルパカの世話をしていて、みんなよりも遅れてくるって意味だからね?
私達はそんな2人に挨拶を交わして中に入った。
だけど珍しい組み合わせかも? 天使と天――恥ずかしいから、やめとこ。
どうやら、お姉ちゃんと海未さんは生徒会として部活勧誘のサポートがある。そして、凛さんと真姫さんはライブに向けての事前チェックがあるから来ていないらしい。
本来なら、ことりさんと花陽さんも行くはずなんだろうけど?
私達のサポートと、きっと緊張しているだろうからって、緊張を和らげる為に部室に来てくれたんだって。
そう言うことなら珍しい組み合わせでもないのかな? だって天使と天――恥ずかしいから言わない! なんてね。
私達がテーブルに鞄を置くと――
「あっ、3人ともコッチに来てくれる?」
続き部屋の扉の前でことりさんが声をかけてきた。私達は慌てて彼女の方へ歩いていった。
ことりさんは続き部屋の中へと歩いていく。それに倣い私達も中へ入ると、そこには3着のステージ衣装が私達を出迎えてくれたのだった。
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