『チロの物語』
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『母親』
僕は気付いた。
お母さん猫は、
他の猫が来ると
敏感になってた。
子猫に
近寄ろうとする
猫には怒ってた。
今迄一緒に此処で
暮らしてる猫達。
それでも...
やっぱり親は
子供が大切なんだ。
僕は大切に
想われてたのかな?
お母さんが
居ないのはなんで?
捨てられたの?
それとも
僕におっぱい
くれる為にゴハン
食べなきゃだから
ゴハン探してて
死んじゃったのかな?
僕は赤ちゃん猫達が
羨ましくなった。
そして、ちょっと
悲しくなった...。
お母さん猫が来た。
『元気ないねぇ』
僕は今の気持ちを
素直に話した。
お母さん猫が言う。
『アタシは母親になって
初めてわかった。
アタシも母親を知らん。
でも、きっと
大切に想われてた。
子供を大切って
想うのは当然のこと』
なんだか沈んだ心を
掬われた気がした。
『お母さんって
優しいんだねっ♪
僕もお母さんに
逢いたかったなぁ』
『チロ...お願い。
アタシが死んだら
あの子達を強く
なるように
育てて欲しい...』
『え...』
死ぬなんて
あまりに唐突で
何も言えなかった。
僕の返事を待たず
お母さん猫は
我が子の元へ帰った。
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